富士通の場合
引き続き、富士通(株)ソフトウェア事業本部 Linux統括部 統括部長代理の工内隆氏が登壇し、10月23日に発表したエンタープライズLinuxへの取り組みを中心に、ロードマップや顧客事例などを紹介した。
富士通(株)ソフトウェア事業本部 Linux統括部 統括部長代理の工内隆氏 |
まず、エンタープライズLinuxへの取り組みに関連して、記者発表で米Red Hatと協力すると発表したことに触れ、「Red Hat Linuxがメインになるが、UnitedLinuxも今後採用する可能性がある」と語り、「基本的にはUnitedLinuxの出荷を歓迎する」と語った。一方で、「あれもある、これもある、という状態は、市場をフォーカスする上で問題」であるとし、異なるディストリビューションで同じバイナリが動くようになってほしいと希望を語った。
エンタープライズLinuxの今後については、必ず必要になる要素として、高い信頼性や長期的なサポート、対応アプリケーションが豊富にあることに加え、カーネルについても、パフォーマンス向上やトラブル時の原因究明機能、e-Japan対応のためにIPv6サポートなどが必要になるとした。具体的な取り組みとして、同社も協力している米OSDLの取り組みを紹介。ネットワークキャリア向けの要求機能やロードマップをまとめた“Carrier Grade Linux”(CGL)や、エンタープライズシステム向けの要求機能やロードマップをまとめた“Data Center Linux”(DCL)を取り上げ、CGLは2003年、DCLは2004年までに実装されることを目指しているとした。
OSDLが策定している、“CGL”“DCL”がエンタープライズLinuxに実装されるという |
導入事例については、現在のところ「お勧めする適用ソリューション」として、
- インターネットショッピングシステムや社内情報システムなどのインターネット系サーバシステム
- 受発注システムや営業店システム
を挙げ、現在すでに稼働している、(株)バリュースクエアのショッピングシステムや、(株)阪神百貨店の受発注システム、太平洋セメント(株)の受発注システムなどを紹介した。
最後に、同社の製品ラインナップやサポート体制を説明した。IAサーバ『PRIMERGY』シリーズ全モデルでLinuxが稼働することや、ミドルウェア製品群の活用例について紹介。サポートについては、「ハイエンドUNIXサーバと同等のサポート体制を確立する」とし、Webサイトを通じたセキュリティ情報の提供、セキュリティパッチの導入支援や動作確認、システム開発などのサポートを提供するとした。
富士通のLinuxサポート体制。「ハイエンドUNIXサーバと同等のサポート体制」を確立するという |
日立エンジニアリングの場合
日立エンジニアリング(株) 電子情報システム本部 情報ソリューションシステム部主任技師である川村智氏は、SI企業の観点から、実際の導入事例や導入に際しての問題点などを紹介した。
日立エンジニアリング(株) 電子情報システム本部 情報ソリューションシステム部主任技師の川村智氏 |
川村氏はまず、エンタープライズシステムに求められる要件として、広域ネットワークによるビジネス連携や無停止稼働、TCOの削減といったことがあり、ネットワークに強く信頼性の高いLinuxのエンタープライズ対応に強い期待感があると語った。その上で、エンタープライズLinuxには、低価格なハードウェアを使用できることによるコスト削減や、負荷分散や機能分散が容易であること、各種RDBを利用できるといった特徴を挙げた。
導入事例については、業種別に4つの事例を紹介。いずれのシステムもクラスタリングによる負荷分散やフェイルオーバーを行なうことで、パフォーマンスの向上や信頼性が向上した一方、運用、管理などを含めたコストの削減が可能になったという。
これまでシステム構築に際して問題になった点については、
- ネットワークカードとRAIDカードの相性問題
- クラスタシステムで不正なフェイルオーバーが発生した問題
- バックアップ装置とSCSIカードの相性問題
- RAIDファームウェアとファイバチャネルBIOS、マザーボードBIOSの相性問題
といった例を紹介。Linuxの場合、安価なハードウェアが使える一方で相性問題が多く発生するとした。解決のためには「個別にハード、ソフトを準備するのではなく、構築ノウハウのあるSIベンダーから購入することをお勧めします」(川村氏)とのことだった。