引き続き、日本アイ・ビー・エム(株)、日本ヒューレット・パッカード(株)、富士通(株)、日立エンジニアリング(株)から、各社のLinuxへの取り組みや具体的な顧客の事例などが紹介された。
日本IBMの場合
まず、日本アイ・ビー・エム(株)理事 Linux事業部長の根塚眞太郎氏が同社のLinuxへの取り組みや今後について説明した。
日本アイ・ビー・エム(株)理事 Linux事業部長の根塚眞太郎氏 |
根塚氏はまず、現在のLinuxを取り巻く状況として、日本政府や自治体、ドイツ政府の取り組みを紹介。ドイツ政府については特に、国の安全保障を含んだセキュリティを重視していることを説明した。また、IBM全体のLinuxへの取り組みについては、すでに1997年から開始しており、全世界で4700以上の顧客とLinuxビジネスを展開しているとした。
IBM全体のLinuxへの取り組みを紹介。技術中心からビジネス中心に移り変わってきているという |
これまでの取り組みとして、米IBMが2001年に10億ドルをLinux分野に投資し、2001年末までに回収に成功したこと、これまでに12万台のサーバをLinuxでリプレースしたこと、同社メインフレームの総MIPS数の11%がLinuxで使用されていることなどを紹介した。また、主要なハードウェア、ソフトウェアのLinux対応が進められていること、“Linuxサポートセンター”などでの動作検証サービスなどを紹介。特にサポートサービスについては、日本では特に需要があるとし、「IBMとターボリナックスが一緒にサポートを提供することができる。ターボリナックスは心強いパートナーだ」と語った。
Linuxシステムを導入するにあたっての課題については、
- アプリケーション、ミドルウェアの対応
- トラブル時の保守体制
- 基幹システムの動作実績
の3点を挙げ、Linuxに対応したアプリケーション例やIBMのLinuxサポート体制、顧客の導入事例などを紹介した。導入事例については、米E*TRADE Groupや住友電気工業(株)、ニューヨーク証券取引所の業務システムにおけるLinuxシステムを紹介した。
Linuxを導入する際に課題となるのは3点あるが、この3点についても懸念を解消できる材料がそろってきているそうだ |
今後の動向については、コスト削減のためにUNIXからLinuxへの置換がさらに進むであろうということ、さらに、米IBMが推進する、必要な時に必要なコンピューティングリソースを提供するという“e-Business on Demand”が成長するとした。
日本hpの場合
引き続き、日本ヒューレット・パッカード(株)のマーケティングソリューション統轄本部 クロスインダストリーソリューション本部 ビジネス推進二部 Linuxマーケティング部長である宇佐見茂男氏が、同社のLinuxへの取り組みを紹介した。
日本ヒューレット・パッカード(株)マーケティングソリューション統轄本部 クロスインダストリーソリューション本部 ビジネス推進二部 Linuxマーケティング部長の宇佐見茂男氏 |
宇佐見氏は、米Hewlett Packard CEOであるCarly Fiorina氏のスピーチから、「我々への質問は、Linuxは世界を征服するのかではなく、世界のどの分野をLinuxが征服するのかである」という言葉を引用した上で、現在日本でもファイルサーバやWebサーバといった分野においてはLinuxが多くの割合を占めていること、米国市場は「日本よりも2年先を進んで」(宇佐見氏)おり、ERPやSCM、CRMといったエンタープライズ分野での活用が進んでいることを紹介した。
実線で囲まれた分野ではLinuxの採用が進んでおり、今後は点線で囲まれた、アプリケーションサーバやERP、データベースなどの分野に拡大するという。 |
同社の『UnitedLinux』への対応については、現在すでにハードウェア管理ツール『Insight Manager』がサポートされていることなどを紹介し、「UnitedLinuxに期待している」と語った。
また、Linuxを導入するにあたっての不安材料として、
- LinuxをCUIで管理できる技術者の不足
- Linuxの動作検証が行なわれるのかなど、信頼して使ってよいのか不安
- Linuxのカスタマイズやサポートが行なわれるのか
といった点を挙げ、『LifeKeeper』などGUIの管理インターフェイスが提供されていることや、(株)SRAとの協業により、動作検証やカスタマイズが可能であると説明した。
Hewlett PackardがLinuxに関して取り組むとしている各分野。ハード/ソフトウェア、サポートの提供だけでなく、UNIXからの移行パスも提供されるようだ |
顧客事例については、(株)第一勧銀情報システムの例を取り上げ、LinuxベースのデータベースシステムによりTCO削減が可能になることで、サービス料金を安くするなど顧客への利益還元が可能になったと紹介した。
宇佐見氏はまた、来年5月21日から23日まで行なわれる“LinuxWorld Expo/Tokyo 2003”のアドバイザリーボードでもあるといい、同イベントについても触れ、「来年は毛色を変えて、TCO削減を目指す企業のお客様に役立つものにしたい」と語った。