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JALだけではできないヘルスケア、訪日需要、機内WiFi……アイデア実現の模索

連載
大手に訊くスタートアップ支援の狙い

 大手企業によるスタートアップ企業への支援が加速している。直接的な投資や協業だけでなく、ピッチイベントの開催、イベントへの協賛、インキュベーションプログラム、アクセラレータープログラムの実施など。大手企業は何を狙い、スタートアップ企業へと近づくのか。

日本航空(JAL) 第3回(全4回)

 日本航空(JAL)が2014年6月に発表した“JALチャレンジ宣言“。この活動の一環として、「起業家の翼になりたい」と、スタートアップ企業のサポートを行なっている。同社はどのようなジャンルでスタートアップ企業のアイデアを活かすのか、前回に引き続き、プロジェクトを担当している佐々木雄司氏に話を伺った。

プロジェクトを担当する日本航空コーポレートブランド推進部シチズンシップグループ 佐々木雄司氏

 運送事業は公的な許認可が必要な業種でもあり、特に航空運送事業は高い水準の安全性が求められるため、プロフェッショナルな企業が大きな地位を占めているため、新規参入が難しい。とはいえ、それでも「航空運送事業の周辺事業には無限の可能性があるのでは」と佐々木氏は期待する。

 たとえば、ヘルスケアや五感に触れる部分などである。

 日本航空は、「聴力の低下などにより、“聴こえ”に不便を感じるお客さまへの航空券のご予約やお問い合わせについてはすでに対応」(佐々木氏)しており、2015年11月に開催された医療、ヘルスケア系イベント“Health 2.0 Asia”にも協力、ベンチャーピッチ“Afternoon Pitch Competition”のコーナーを支援した。

Health 2.0 Asiaのピッチには、3Dプリンターでつくれる筋電義手の『handiii』を制作するexiii、自分に必要な栄養が採れる健康サプリドリンクを自動生成する家庭用飲料サーバー『healthServer』を開発するドリコスなどが出場。優勝したのはサイマックス、トイレに装着してヘルスチェックできるデバイスを開発している

 また訪日外国人によるインバウンド需要も佐々木氏が注目している分野。現在、空港内でのグラウンドスタッフ同士のコミュニケーションは音声のみトランシーバーを利用している。こういったコミュニケーションも、音声だけでなくデータを利用したり、自動で通訳できる機能がないか模索している。

成田空港では、日本語を多言語に翻訳できるメガホン型翻訳機がすでに試験配備されている(成田国際空港株式会社が2015年12月~2016年3月に実施する実証実験サービス)

 機内サービスなども、新規参入しやすい分野。最近では航空機内における電子機器の使用が緩和され、飛行中にWiFiなど無線機能を使った機器も利用できるようになった。そのため“オンデマンドのサービスなど機内で楽しめる新しいサービス”というのもありだという。

 機内でのいろいろなサービスの開発は、そのテストを実施することが難しいが、日本航空の支援を受ければ実地テストを実施する機会も得られる。

 日本航空ではこういった新規事業やサービスを“アイデアベース”で募集しているという。だが実は、アイデア以上に欲しているものが日本航空にはあるという。次回は、その詳細をレポートする。

――第3回は2015年12月21日に掲載予定です。

佐々木雄司氏(1987年11月25日生まれ)、2010年4月に日本航空株式会社に入社。JALスカイ・成田事業所での航空業務、総務部CSRグループを経て、現在コーポレートブランド推進部シチズンシップグループに所属。スタートアップ支援事業や折り紙教室などの事務局なども担当する

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