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ビル・ゲイツ世代ベンチャーの挑戦

「高齢者はネットの恩恵を受けてない」SIMカードもささるIoT手押し車で支援

2015年09月08日 19時15分更新

文● ガチ鈴木/大江戸スタートアップ

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 『ロボットアシストウォーカー RT.1(アールティーワン)』は、一見すると単なる電動アシスト付き手押し車に見えてしまうかもしれない。上り坂でパワーアシスト、 下り坂で自動減速を行なえるのはもちろんだが、実はその中身にこそ真価がある。6軸センサー、温度センサー、加速度センサー、磁気センサーと複数のセンサーが搭載され、さらにはSIMスロットをもち3Gの通信機能まで備えられている。高齢者がインターネットの恩恵を享受できるバリバリのIoTプロダクトだ。

 開発するのは大阪のベンチャー企業RT.ワークス、河野誠代表取締役は1955年生まれで、アスキー創業者の西和彦氏と同級生。かつてはソニーのコンピューター技術者としてマイクロソフトを立ち上げたばかりのビル・ゲイツ氏、古川享氏、ソフトバンクの孫正義社長らとも仕事をしていたという、日本のパーソナルコンピューターの黎明期を生きてきた人物だ。

RT.ワークス河野誠代表取締役

 その後、船井電機に移り、新規事業を担当。経済産業省の介護ロボットの開発支援プロジェクトで合格、2年半かかり製品化にまで漕ぎつけた。実際の事業化を考えたとき、大企業の船井電機の強みである大量生産、大量販売のメリットが生かせないと考え、製品、販売ルート、パートナーシップなどを検討した結果、船井電機から独立して、2014年7月1日にベンチャー企業RT.ワークスを立ち上げた。

 「高齢者が活躍するためには、ネットの恩恵を享受する必要がある」と、そのための手段をスマート技術で提供したいという、河野氏に話を聞いた。

『ロボットアシストウォーカー RT.1』は2015年7月14日に発売、直販価格は22万8000円(税別)

――通信機能に各種センサーと、電動アシストにこれだけの技術が詰め込まれていることに驚きました

 会社のポリシーに“アンコールスマート”を掲げています。リタイヤなどで一度幕を閉じた方がもう一回素晴らしいことをしてほしいと。ただ高齢者にアンコールしてもらうためには、ネットの恩恵を享受してもらわないと、今の世界では活躍できない。たとえば20代の方がネットの恩恵を100受けているとすると、30代は80、50台は30、60代だと10になり、70代は1だと思っています。その手段としてスマートな技術を提供したいと考えています。

 『RT.1』は本体にSIMを装着できる3Gデバイスを組み込んでいて、単体でネットワークにつながります。GPSも搭載していて、どこにいるかがわかります。家族や介護の方がもつPCブラウザーなどでどこにいるのか、置いて帰ってきてしまっても場所がわかるようにしています。セットアップする方がユーザー追加の招待状を作成できます。YAHOO!、Googleアカウントからもアカウントを作成でき、本人やご家族、看護師の方もみられるようにつくっています。

 また6軸センサー、温度センサー、加速度センサー、グリップのセンサー、移動をみる磁気センサーが入っていて、人が何をしたいか、今いる環境がどういうものか両側面を解析することで短い時間で動きを予測できます。その予測に合わせて、人と同時に動く“動く手すり”です。

 歩行のアシスト力、ブレーキ力、速度すべて、その人に合わせてチューニングできます。足元が不安な人はブレーキを強く、速度も制限する設定が可能。平地でブレーキがかかりすぎると、コールセンターからリモートで速度アップをできるようになっています。ネットワーク経由で端末に変更の確認が届き、利用者がオーケーボタンを押すと自動で変更される。足が慣れてくると、だんだんとブレーキ力、アシスト力を変えていくといった利用もできます。

利用者が操作することは少ないが、SIMスロットが確かに!

――これだけ多くのセンサー、歩行アシストに利用する以外の使い道は何がありますでしょうか?

 1年間使えば、センサーで取得した歩行データは膨大で、ビッグデータ処理が可能になります。平均の歩行速度、頻度、距離、歩幅がデータとして残っているので統計的に、1年、1ヵ月、1日で比較。そうすると健康状態まで見えてきます。脳梗塞を起こす可能性が高いまで、危険が察知できるほど、歩行は情報をもってきてくれます。去年は3日おきに歩いていて、歩幅はこれほどだったのに、今年になって3割減になって、まったく歩かなくなった。そうするとコールセンターから連絡がいくようなこともできます。

 ゆくゆくは同年代と比較するような行動履歴から分析することもできると思います。データから自動的に検索を走らせることで、よりいいアドバイスをすることはすごく簡単にできます。たとえばスマホゲームは瞬間的に多くのデータを分析して反映している。それを高齢者にやると同じくらい価値を与えられると考えています。

シンプルでわかりやすい操作パネル。

――まさにIoTの正しい方向性を感じました。今後、やっていきたいことはなんでしょうか?

 個人情報の保護などセキュリティーはしっかり確保した体制を取っています。各個人のプロファイルをもっているため、それを生かした新しい楽しみと出会いを提供していきたい。私は55歳でサッカー、59歳でキックボクシングを始めて、60歳で釣りを始めました。釣りはネットで釣れたという日の翌日に行くと、初心者でもよく釣れます。ネットがあると簡単にそういうことがわかります。地域のコミュニティーや農協さんなどとも連携して、情報とセンサー、IoTデバイスを組み合わせて何が起こるか実証実験をやりたいと考えています。

――ありがとうございました!

■関連サイト
RT.ワークス

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