メジャー以外の仕事をする方法がなかった
―― ついにレコード会社を始められるそうですけど。
佐久間 そうなんですよ、恐ろしいことにね。35年も音楽の仕事をしてきて、まさか自分でレコード会社をやることになるとは思わなかったけど。
―― このタイミングでやるのはなぜですか?
佐久間 僕は今までメジャーの仕事しかできなかったんだよね。プロデューサーとして音楽に関わると、必然的にそうなってしまう。自分でレコード会社でもやらない限り、メジャー以外の仕事をする方法がなかったわけ。
―― じゃあ、メジャー以外の仕事がしたかったんですか?
佐久間 GLAYにしても、今はメジャーから独立してやっているわけでしょ?※
―― 大物から先に抜けていく状況もありますよね。矢沢永吉も独立しちゃってるし。※
※ GLAYは2010年にインディーズレーベル「loversoul music & associates」を設立している(流通はフォーライフ・レコード)。矢沢永吉はEMIミュージックを契約終了し、2009年以降はやはり自身のインディーズレーベル「GARURU RECORDS(ガルル・レコード)」から作品をリリース中。
佐久間 それで、僕に出来ることを考えた結果がこれなの。どのみち、今のやり方ではメジャーに未来はないし、今できることをやった方が楽しいでしょう? 先のことなんて誰にも分からないんだし、その前に踏み出さないと。
―― レーベルの所属アーティストはどうやって集めたんですか?
佐久間 今年の春に4つのバンドで、関西をツアーしたのね。本当に偶然の組み合わせなんだけど、すごく印象に残るツアーだった。
―― その4つのバンドというのが、アンサスペクテッド・モノグラム、ハッチ、コジョ、タイフーン・ミニスターズですね※。
佐久間 どれも素晴らしいバンドなんだけど、ふと考えると、この人達はアマチュアなんだよね。どんなにキャリアがあろうが、いい音楽をやっていようが、それぞれがバラバラで、まだインディーズにもなっていないような。だったら、集まって一緒に動き出せば、何かできるんじゃないか。それが、このレコード会社を作った動機なんだよね。
―― 大プロデューサーの佐久間正英にとって、未知数のアマチュアを抱えて動き出すのはリスクじゃないですか?
佐久間 今まで考えもしなかったことだけどね。でも開き直って考えてみれば、別に大したことじゃないなと。そう思って、今度は日本の音楽産業のシステムとか、音楽のあり方のようなことを真面目に考えてみると、色々と紐解けていくことがあったのね。
―― たとえばそれは?
佐久間 アーティストの権利がほとんど守られていない。色んなことが合理的でない。仕組みそのものが古過ぎるのね。自分で始めれば、そこにどんなシステムを持ち込んでも、他人から文句を言われる筋合いはないわけだから。
サーキュラー・トーン・レコーズ 所属アーティスト
unsuspected monogram 若菜拓馬(Vo、G)、佐久間正英(G)、砂山淳一(Ba)、星山哲也(Dr)、佐久間音哉(Sy)による、テクニカルロックバンド。Ustreamで公開録音した全11曲のアルバム「the mass」が10月30日にダウンロード販売を開始する。公式サイト
hachi ハツエ(Vo、Ba)、ユーゾー(G)、シーサー(Dr)、女性2人がリズムセクションを受け持つロックトリオ。ストレートなビートとメロディに乗せた、甘酸っぱい歌が魅力。ギターのユーゾー氏はサウスポーで、6弦が下の逆張りセッテイングを当たり前のように弾きこなす。公式サイト
Cojok Kco(Vo、G)、阿瀬さとし(G、Computer)によるユニット。「Aco-tronica(アコトロニカ)」を標榜するスタイルは、圧倒的な表現力を持つボイスパフォーマンスと、コントロールされたノイズとオーケストレーションに支えられている。公式サイト
Typhoon Ministers 白石真理(Vo、P)、平野雅子(Dr、Vo)の女性二人によるユニット。ピアノとドラムだけという変則的な構成ながら、音楽的仕掛け満載のキュートなポップミュージックを聴かせてくれる。公式サイト

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