原盤権はアーティストに
佐久間 そしてもうひとつ大事なことは、原盤権なんだよ。今まではお金を出した人が原盤権を持つわけじゃん?
―― ええ。録音した音源の権利は、レコーディング費用を持った人のものになりますね、自動的に。
佐久間 昔の時代背景を考えると、正しいことでもあった。レコード会社が企画して、ミュージシャンを集めて、アレンジャーを頼んで、曲を作ってと、そういう音楽の作り方をしていたから、権利を持てたと思うんだけど。今はアーティストやバンドが音楽を作っているわけ。レコード会社が企画して作っているわけではないからね。だから実際に音源を作った人たちが、原盤権を持つのが当たり前だな、と。
―― 今はレコーディング費用も安いですからね。
佐久間 もちろん、お金を出してくれる人がいてもいいんだよね。そしてレコーディングに100万円かかったとしても、100万円返せばおしまいのはずなんだ。それが何故か原盤権を渡していたんだよね。
―― じゃあ、サーキュラー・トーン所属アーティストは、それぞれが自分の原盤権を持っているんですか?
佐久間 もちろんそうだよ。
―― ということは、原盤権を原資にしたメジャーレーベルの商売と、サーキュラートーンのやり方はまったく違うわけですけど。
佐久間 うん。それで経営が成り立つかっていう話でしょ? だって50%貰えるんだよ、会社側は。それに会社が利益を出さなくてもいいんだよね。音楽を作り続けられて、その利益を皆に分配できれば。
―― つまり佐久間さん自身もアーティストとして勝負するから、そこで利益を上げればいい、ということですか?
佐久間 そうね、この方法のいいところはね、まず自分にギャランティしなくていいんだよね。
―― ああ、すっかり忘れていました。それは安上がりだ!
佐久間 サーキュラー・トーンが貰う利益の50%のうち、20%はプロデューサー印税だと思っているわけ。それでプロデューサーを(屋敷)豪太くんに頼もうが、土屋(昌巳)くんに頼もうが、印税を20%出せますよ、と言える。だから実際の会社の儲けは30%なんだけどね。僕が関わらない制作も、臨機応変にやらなければならないと思っているから。
―― それで、もし儲かっちゃったらどうします?
佐久間 ものすごーく嫌な会社になってたりしてね。太った偉そうなおじさんしかいないような。そうしたら、また辞めて最初からやり直すからいいよ。
■The d.e.p新作をダウンロード購入しよう!
The d.e.pの新作「RAINBOW / Moon Smile」は下記サイトから配信する。いずれも価格は200円。e-onkyoはハイレゾWAVデータ、OTOTOYはWAV+DSDデータを配信する。ぜひともチェックしよう!
iTunes/nau/OTOTOY/listen.jp/mora.jp/morawin.jp/moratouch/
musico.jp/anymusic.jp/hearjapan/music.e-onkyo.com
著者紹介――四本淑三
1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。

この連載の記事
-
第164回
トピックス
より真空管らしい音になるーーNutubeの特性と開発者の制御に迫る -
第163回
トピックス
超小型ヘッドアンプ「MV50」のCLEANは21世紀の再発明だった -
第162回
トピックス
欲しい音を出すため――極小ヘッドアンプ「MV50」音色設定に見る秘密 -
第161回
トピックス
最大出力50Wのヘッドアンプ「MV50」は自宅やバンドで使えるのか? -
第160回
トピックス
新型真空管「Nutube」搭載ヘッドアンプのサウンドはなにが違う? -
第159回
トピックス
開発で大喧嘩、新型真空管「Nutube」搭載超小型ヘッドアンプ「MV50」のこだわりを聞く -
第158回
トピックス
唯一無二の音、日本人製作家の最高ギターを販売店はどう見る? -
第157回
トピックス
「レッド・スペシャルにないものを」日本人製作家が作った最高のギター -
第156回
トピックス
QUEENブライアン・メイのギターを日本人製作家が作るまで -
第155回
トピックス
QUEENブライアン・メイのギターは常識破りの連続だった -
第154回
トピックス
てあしくちびるは日本の音楽シーンを打破する先端的ポップだ - この連載の一覧へ