今の状況に合った音楽の売り方があるはず
―― いや、ほんとに安いですよね。僕も若いころに音楽業界に関わって、あまりにミュージシャンにいくお金が少ないことにびっくりしたんですが。それで逆に音楽を買わなくなった経験もあったくらいで。
小寺 レーベルから支払われるアーティスト印税のパーセンテージですよね。いろんな契約形態があるので一概には言えないですけど、アーティストに入るのは1枚あたり1~2%くらいですよね。3000円のCDが1万枚売れても、たった30万円。あ、でも僕のレーベルでリリースしたミュージシャンと8%で契約したことはありますけど。
―― えーっ。それはものすごく高い。
小寺 と思うでしょ? でも「たかが8%」なんです。でもアーティスト印税が低く設定されていることには理由もあって、それを否定するわけではないんですよ。今までは「売れている一部のミュージシャンの利益を分配して、他のミュージシャンを食わせる」って構造になってたじゃないですか。
―― ピラミッド型のね。まあ、だから新人や売れないアーティストも抱えることができたんだけど。
小寺 そうなんですよ。メジャーと契約することで、一律に「援助金」が事務所に支払われてたわけですよね。CDの売上とは関係なく、年間いくらで。それで事務所はミュージシャンに給料が払えた。アーティスト印税が低くてもどうにか食っていけたんです。
―― 今まで印税率が問題視されなかった理由ってそこなんですよね。
小寺 でも、今はそういう構造さえも崩壊してしまっている。CDの売上がぱったり止まってしまったことで、援助金も出せなくなった。そしてもうそういう構造が成り立たなくなっているのに、まだ同じアーティスト印税のままなのがおかしいんですよ。だからこそ、今の状況に合った音楽の売り方があるはずだと思ったんですよね。
―― 音楽業界にいた立場では、CDが売れなくなった理由は何だと思いますか?
小寺 CDを買う習慣がなくなり、CDを買うという概念さえない若い人もいる。こうなるとCDというメディアが売れなくなるのは当然だと思います。なのに、リスナーの顔を思い浮かべて、音楽の楽しさを伝える「努力」をしてこなかった。そんな業界が元気を失うのって、当たり前だと思いますよ。
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