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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第23回

作家を応援する場をネットに レーベル「nau」が出来た理由

2010年05月15日 12時00分更新

文● 四本淑三

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気軽に「CD出してみない?」とは言えなかった

―― ところで、今までレーベルで仕事をされてきたわけですが、CDではなくデータ配信なのはなぜですか?

小寺 最初に話したように、アーティスト印税が低いわけです。だからミュージシャンに「CDを出そう」とは言いずらい状況になっていたんですね。CDを出してもミュージシャンにお金を払えない。搾取じゃないですけど、何か悪いことをしているような気になる。その上、自分も大して儲からない。CDっていうメディアを通してやると、今まで僕がやってきた仕事はできないなと思ったんです。

―― 小寺さんのやりたい仕事って何ですか?

小寺 アーティストとの、本当の意味での対等な仕事ですね。15年前からずっとマネージャーをやっていて、プロモーションもやっている。自分でレーベルも持ちました。自分の中でも最低限のことはできるようになった。そしてデータだったら、さらにレーベルの先のディストリビューションまで含めることができるし。

開会式では「鏡開き」も

―― nauだったら80%も払えるし。

小寺 自分で原盤を持っているアーティストならそうですね。JASRACの管理曲であれば、そこから著作権使用料を引いた額ということになるんですけど。でも、僕は別にデータ配信がやりたいわけじゃないんです。

―― あらら。というのは?

小寺 まつきの反響を見ていて、なんだデータで良かったんだ、という発見ですね。「一億年レコード」は去年の10月くらいから準備をして始めたんですが、あんなに注目されたことは意外でした。

―― それは予想外に売れたということですか?

小寺 いえ。買った人たちが「音楽を買うこと」に喜びを感じていたことです。それを見ていて、あっ、データでいいんだと思いました。今ならデータのほうが、より手渡しに近い形でリスナーにつながれる。そっちの方が楽しいよな、と。

―― それさえできるならメディアは何でもいいという。

小寺 そうですね。CDよりデータのほうがいいとは思ってないんですが、今はデータだったら面白いことが簡単にできる。それでやっとミュージシャンと対等に仕事できるし、気軽に「nauでやってみない?」と言えるだろうと。

(次のページに続く)

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