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企業システムを席巻する BI最新事情 第3回

ウイングアーク・フォーラム2009レポート

生々しく語られた「クラウド時代、SI業界はどう変わる?」

2009年10月22日 07時00分更新

文● 吉川大郎/TECH.ASCII.jp

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10分以内のダウンタイムは許してネ!?
クラウドの課題は何か?

 モデレータ藤村氏は、クラウドの課題についても言及した。企業利用において、クラウドの問題とは何か?

 前川氏は、データの所有権や障害時の対応が心配だと言う。前川氏らがSaaS/クラウドの気になる点についてアンケートを採ったところ、1年前に比べてバックアップや遠隔保管についての関心が高まっているのが分かった。

 逆に、現在は必ず「バックアップはどうなっているのか?」と聞かれる。このあたりは、SLAの締結が重要となってくるだろう。

 前川氏もまた、万が一データなどが消滅した場合は、金銭的な保証になるものの、そのデータはお金に換えられないものなのだから、ユーザー自身が自分のみを守らないといけないと警鐘を鳴らす。

 岩本氏も、「そこは難しい問題」としたうえで、利用する人は割り切るしかない。その割り切りで決まるのだ、と主張した。

 前川氏も、岩本氏の“割り切り論”には同意。実際米国の安価なサービスのSLA契約を読むと、稼働率はそれなりの数字がかいてあるものの、その稼働率計算には、「10分以内の停止は含まない」と書かれていたりもするという。

 こうした話題を受けて、藤村氏はクラウドの“国際問題”にも踏み込んだ。最近、ガバメントベースのクラウド利用が出現してきたが、国外にデータを置いてもいいのか? という問題もある。トップベンダーもこうした指摘を受けて日本にデータセンターを置くという方向にも進んできている。

 岩本氏も、海外のサーバーにデータを置くという点についてはその危険性を指摘した。たとえば、我々が個人情報を預ける際には契約をするわけだが、それは日本国内で有効なのであって、米国で管理された場合は想像しない使われ方をする可能性がある。

 前川氏もこの話題を受けて、カナダ政府が米国のサービスを使わないことになった事例を紹介。米国には、米国愛国者法が存在するので、何か事件が起こった場合は、コンピュータの中身を見られてしまう可能性はあるとのことだ。

 こうした国際問題だけではなく、SaaS/クラウドには「データ移行問題」もつきまとう。「データを預けていて、あるときにもっといいプレイヤーが出てきた際、どのような問題が起こるのか?」藤村氏が2人に問う。

 「PaaSのインターフェイスがばらばらなので、アプリケーションの作り直しも起こるし、データの構造も問題になってくる。スイッチングコストはものすごくかかる」と、岩本氏は指摘する。また、ものによってはPaaSで作ったプログラムが、ベンダーの者になってしまう危険性もはらんでいる。社内にあるべきものは社内にあるべきだという。

 岩本氏の指摘を受け、前川氏は図を表示して説明を始めた。

クラウドの種類と想定されるユーザー

図 クラウドの種類と想定されるユーザー

 一般的に「クラウド」と呼ばれているのは図の右側。大手のITベンダーが狙っているのはプライベートクラウドである。たとえば米国ペンタゴンのRACE(Rapid Access Computing Environment)は、国防総省がイントラネットの中に作ったプライベートクラウドで、HPに開発費を払っている。これは確かに安全な例だろう。ただし、RACEは仮想化技術を使った単なるサーバー統合に過ぎないという意見もあるという。

 「自分たちがオンプレミスで社内で運用しているサーバーをデータセンターに置き、スケールできるメリットを共有しようというのがプライベートクラウドの一定の定義だと思う。プライベートクラウドのベンダー設置型もアリだ。大企業はパブリッククラウドを使うのは心配だと思っている。大企業は(掲出図の)左から入っていくが、市場的には右側に移っていく」。

 モデレータの藤村氏がこのようにまとめ、岩本氏が「まだ不安だという段階だと思う。ただ、慣れてくれば規模の経済の恩恵を被ることになるのは自然な流れだろう」と付け加えた。

次ページ、「SI業界はこう変わる!?「なまなましく語ってください」(藤村氏)」に続く

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