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企業システムを席巻する BI最新事情 第3回

ウイングアーク・フォーラム2009レポート

生々しく語られた「クラウド時代、SI業界はどう変わる?」

2009年10月22日 07時00分更新

文● 吉川大郎/TECH.ASCII.jp

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SI業界はこう変わる!?
「なまなましく語ってください」(藤村氏)

 いずれにしても、SIと呼ばれる業界は、やり方を変えていかないとならないだろう。

 「チャンスだと考えようによっては思う人もいる」というのは前川氏。おもしろいサービスを考えれば、すぐに世界中でサービスができるからだ。岩本氏も、いいコンテンツをもっていながらお客様にリーチする手段がない企業が、PaaSの部分まで提供されることで、自分たちのビジネスをしていくこともできるようになる、との考えだ。

 SIも違うサービスを模索する段階だ。では、SI業界はどのように変わるのか? 藤村氏は「なまなましく」というリクエストを付けつつ、この変化に対する所感を2人に求めた。

 まず岩本氏が言及したのが、人材だ。直近で求められているのは、クラウド、仮想化に特化した人材。現在は引っ張りだこだという。また、SI企業に対しては、自社のビジネスがどこにフォーカスしているのかを含めて、新しいチャレンジが必要だと説いた。不景気というのは、新しいことをするチャンスであり、クラウド支援をするサービスなども、大いにアリというわけだ。

 前川氏は、ベンダーに拠る囲い込みを経て、Windowsに統一された“パソコン”というものが出てきたときと似ているという。米国にはオープンクラウドコンソーシアムといった団体も出てきた。そうなると、クラウド自体はコモディティとなる。勝負はその上のアプリケーションやサービスとなってくるが、そこにはたくさんのビジネスチャンスがあるという。

 ここで発想の転換を求めたのは岩本氏だ。SaaS/クラウドは、利用者視点で考えた場合、安価である点が大きな魅力なわけだが、“安い”というだけではいずれは落ちる。そこで考えたいのが、電話が固定から携帯に移行した際に起こった変化だ。従来の電話代とは比べものにならない通信費が支払われ、マーケットが大きくなってきた。

 こうした僥倖が、クラウドで起こる可能性がある。「できるだけ早くSaaS/クラウドを経験させておく必要がある」と前川氏は述べた。

 では、クラウドビジネスをどのようにドライブさせていくか? 今この時期だから、クラウドには何を求めるのだろう?

 ミッションクリティカルにはまだまだだ、と岩本氏は言う。しかしながら岩本氏はまた、すべてを外に出しても何とかなる時代も、遠くないと述べた。

信頼度

コンピュータソフトウェア協会による、ベンダーの信頼度とSaaS

 前川氏は、企業規模によって変わってくるのではないかと指摘した。前川氏は、2007年のSaaSブームの頃に採られたアンケートを表示して語る。アンケート結果を見ると、社外にデータを置くという行為に対して、7割が不安を覚えていたが、実は2割の人々は逆に「安心」と感じていたという。信頼できるベンダーであれば、データを預けてもいいと考えている人も、6割ほど存在した。まずは信頼できるベンダーという評価を勝ち取れるかどうかが、今後はとても重要になってくるというわけだ。

セッション最後のテーマは、「提言」

 「本当に重要だと思うのは、仮想化というテクノロジーであり、考え方。これに早く慣れないといけない。仮想化すれば、(環境の)移動というメリットもかなりある。ただ、仮想化に付いてこられないユーザーが多い。慣れて使いこなせるかが今後の最大のポイントでは?」と藤村氏は水を向ける。

前川氏 「日本のユーザーが信頼できるベンダーは、米国の企業ではなくて、日本の企業。大手はがんばっていただきたい。そして、個人ユースでは、クラウドを使ってほしい」

岩本氏 「なぜSaaSやクラウドを使うのかを深く突っ込んで考えてほしい」

 企業のクラウド利用は、本番への入り口にさしかかっているわけで、そうしたタイミングでは解釈の違いや誰も気がついていない真理が次々と明らかになってくる。今回のセッションは、クラウド時代の新常識が、垣間見えた一幕となっていた。

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