「PLATEAU AWARD 2022」初代グランプリは実在の街をスノードームで楽しむ『snow city』
「PLATEAU AWARD 2022」最終審査会・表彰式レポート
PLATEAUのポテンシャルを引き出すバラエティに富んだ作品群
ここからは残る11作品を紹介していこう。惜しくも受賞を逃がしているが、いずれもクオリティーが高く、今後も期待できるものばかりだ。
◎すPLATEAU~ん(すPLATEAU~ん)
こちらも2022年8月のPLATEAU Hack Challenge 2022 in ヒーローズ・リーグで生まれた作品。コンセプトは「インタラクティブな体験を通して都市の魅力を再発見する」。スマホをかざして見えている映像を元にPLATEAUのデータを重ねて、インタラクティブな表現ができるというもの。ハッカソン後のバージョンアップとして、位置情報付きの動画の録画再生機能に対応している。
すPLATEAU~ん(プレゼンテーション資料)
https://speakerdeck.com/toshiseisaku/no-dot-1-suplateau-n
質疑応答では、川田氏の「提案としてどこを推していきたいか」という質問に対して、「推したいのは、仕組み。スマホからの緯度・経度・高さ・方向情報はJavaScriptを利用して取得しており、UnityやUnreal Engineが使えない方でも応用利用が可能」だと答えた。
◎都市の分布を見る(齊藤 佑太郎)
齊藤氏は、Geoff Boeing氏の道路の方角や長さを街ごとに集計する研究「Urban spatial order」の東京23区版として、PLATEAUを使ってビルの向きや大きさを集計している(「PLATEAUから街の構造を見る」https://www.estie.jp/blog/entry/2022/08/10/110801)。
今回の作品は、区ごとに集計したグラフのエントロピー(乱雑度)を計算し、色分けして見ることができるようにしたアプリだ。
都市の分布を見る(プレゼンテーション資料)
https://speakerdeck.com/toshiseisaku/no-dot-2-du-shi-nofen-bu-wojian-ru
松田氏からの「Geoff Boeing氏の集計方法と比較したときの見え方の違いはあったか?」という質問には、「Boeingさんは道路を集計している。道路と建物は一致するだろうと考えていたが、道路に対して直角ではないビルが多数あったのは面白い発見だった」と回答。今回は建物の辺の長さから集計していたが、今後は高さについても集計してみたいそうだ。
◎点群×PLATEAU(imgee株式会社)
PLATEAUの魅力を十二分に生かした映像作品。Touch Designerに東京の3D都市モデルデータをすべて入れ込み、朝日航洋株式会社が提供する高精度3次元データサービス「good-3D」の点群データをマッチングさせ、8Kで映像を制作した。
点群×PLATEAU(プレゼンテーション資料)
https://speakerdeck.com/toshiseisaku/no-dot-3-dian-qun-xplateau
質疑応答では内山氏が「OBJからCloudCompareを通じてPLATEAUの3D都市モデルを点群に戻せることはご存じか?」と聞くと、「実際にPLATEAUデータを点群に変換してみたが、生の点群データとは質が異なる。点群データの面白さは、構造物としてはフラットでも実際の壁はフラットではないので、質感を感じられるところで、詳細部は点群データを使うほうが良い表現ができた」と話した。
◎Plateau Blender Importer(國岡 洵季)
CityGMLデータをBlenderに読み込むためのツール。PLATEAU Hack Challenge 2022 in ヒーローズ・リーグで生まれた「サイレント・シブヤ」チームで使用されたものがもとになっている。開発のきっかけはOBJデータの扱いにくさで、「緯度経度を原点に指定できること」「モデルのデータ量を軽くすること」に主眼を置いた。
ハッカソン後、データ量の大きい地形データ・道路データを範囲制限できるようにし、またファイルごとにコレクションを作成するなど改良している。ユースケースとして、動画や2Dイラストの背景、ARコンテンツへの活用が考えられる。
Plateau Blender Importer(プレゼンテーション資料)
https://speakerdeck.com/toshiseisaku/no-dot-5-plateau-blender-importer
質疑応答では、実際にImporterを使用してコンテンツを作成してみた感想を聞かれ、「スライドで示したものしか試作していないが、AI作画と組み合わせたらいろいろできると考えている」と答えた。審査員のちょまど氏は「クリエイティビティを加速させる素晴らしい作品」と評価した。
◎PLATEAU CityGML LOD1をOpenStreetMapにインポートしてみた!(YouthMappersAGU)
もっとPLATEAUを使いやすくということで、OpenStreetMapにいったん読み込み、OpenStreetMapのAPIを経由して読み出すことで扱いやすくしようというものだ。作業マニュアルも日英バージョンで作成している。
PLATEAU CityGML LOD1をOpenStreetMapにインポートしてみた!(プレゼンテーション資料)
https://speakerdeck.com/toshiseisaku/no-dot-6-plateau-citygml-lod1-wo-openstreetmap-niinpotositemita
OpenStreetMapからCity GMLへの変換はまだ試していないとのことで、審査員の小林氏は「OSMは都市設備含め細かく再現されているところもあるので、OSMからCityGMLへ変換するという逆に流れもできるとよい」と話した。
◎SUNABA MAP MR(株式会社スタジオ・デジタルプラス)
PLATEAUの3D都市モデルを使って砂場遊びをするMRコンテンツ。建築物(bldg)および地形(dem)を取り込みゲームエンジンで仮想空間を作り、現実空間である砂場にプロジェクターで画像を投影する。さらに、赤外線センサーを使って砂の高さを取得し、投影に反映することで双方向な体験も実現。「砂を掘ったところは海になる、盛ったところは山になるといった遊びができる」という。
今後、都市空間のカメラで取得した情報を仮想空間へ反映させたり、高さの逆マッピング、ハイトマップに対応する予定だという。
SUNABA MAP MR(プレゼンテーション資料)
https://speakerdeck.com/toshiseisaku/no-dot-7-sunaba-map-mr
質疑応答では、小林氏の「なぜ砂を選んだか。また、今後やっていきたいアイデアがあれば教えてほしい」という質問に対し、「砂場遊びがなくなっているという課題と、砂場であれば自由に地形を作成し、山の起伏、水の流れを体感できる。まだ実装されていないが、作成した地形をスキャンして3Dモデルにし、それをプリントする、といったリアルと仮想空間を行き来する体験を子どもたちに提供したい」と答えた。
◎PLAYTEAU(仮)(株式会社CHAOSRU)
エントリー時の作品名「TOKYO 昭和97年」を「PLAYTEAU(仮)」と改め、現実社会とリンクしたデジタルツインのオープンワールドを舞台にしたゲーム作品。特徴としては、爽快感のあるキャラクターの動き、例えば「会社の終わらない会議」という社会の闇を斬るというような、現実世界とリンクした内容を扱うところだ。社会課題だけではなく、美術作品や都市計画なども扱う。キャラクターのタッチ、動き・エフェクト、画面デザインなど非常に統一感のある作品になっている。
PLAYTEAU(仮)(プレゼンテーション資料)
https://speakerdeck.com/toshiseisaku/no-dot-11-tokyo-zhao-he-97nian
小林氏は「3D都市モデルにこんな使い方があったのかと感動した。現実世界の闇と戦うには、現実の舞台が必要で、3D都市モデルを活用することでリアリティが増している」と評価。川田氏は「現実と連携しているので、薬を待っている時間に医療事務の人の計算を手伝うと薬が早く出てくるなど、現実とつながったインターフェースになると面白い」と語った。
◎Own東京(小関 健太郎)
『Own東京』は、1人、あるいは数人で使えるマイクロデジタルツインだ。デジタルツインは企業が作って公開するという形がほとんどで、一般のユーザーが使えるようなツールがない。そこで、オープンデータであるPLATEAUを使って小さなデジタルツインが作れないかというところがモチベーションになっている。
実際、小関氏はWebサービスとして公開し、誰でもアクセスしてデジタルツインを構築できるようにしている。
Own東京(プレゼンテーション資料)
https://speakerdeck.com/toshiseisaku/no-dot-12-owndong-jing
内山氏からの「動作が軽く裏側の仕組みも工夫されていて素晴らしい。利用シーンはどのように考えているか」という質問には、「私自身はデータそのものに関心がある。防災など活用シーンはあると思うが、そこは他の方を巻き込んで考えていきたい」と答えた。
◎(おそらく)世界初の位置情報と連携した3Dキャプチャー作品コンテスト みんキャプ(みんキャプ運営委員会)
みんなで3Dキャプチャを楽しもうというエクスペリエンスに主眼を置いたエントリー。「みんなで作る3Dモデル=みんキャプ」という動きを通じて街に関心を持つカルチャーを作っていこうという活動だ。
また、みんキャプは、3Dモデルプラットフォーム「toMap」にスマホなどで取得した3Dデータをアップロードし位置情報を設定すると、PLATEAU VIEWの互換ビューワーで公開され、ほかのユーザーとシェアできる仕組みを構築している。
第1回(2021年)、第2回(2022年)、第3回(2023年)と作品コンテストを重ね、コミュニティも着実に形成されている。
(おそらく)世界初の位置情報と連携した3Dキャプチャー作品コンテスト みんキャプ(プレゼンテーション資料)
https://speakerdeck.com/toshiseisaku/no-dot-13-osoraku-shi-jie-chu-nowei-zhi-qing-bao-tolian-xi-sita3dkiyaputiyazuo-pin-kontesuto-minkiyapu
川田氏は「3Dキャプチャという孤独な作業を共有し合うプラットフォーム、コミュニティが広がっているのが素晴らしい」とその取組みと評価した。
◎PLATEAUで日本全国の自動運転シミュレーションを可能にする(株式会社ティアフォー)
自動運転シミュレーションにおける地図作成の課題(作成のコスト、データのバリエーション、反射強度シミュレーション)をPLATEAUで解決してしまおうというもの。
数百~数千万円かかる高精度な地図データの作成も、既存のPLATEAUのLOD3データを使うことで無償となり、開発期間も数か月のところを数日に抑えられる。またPLATEAUの属性情報を使えば建物のマテリアルを自動で設定可能だ。今後は、定量的な評価、検証を進めていきたいとした。なお、これらはすべてオープンソースであるため、誰でも開発に参加できる。
PLATEAUで日本全国の自動運転シミュレーションを可能にする(プレゼンテーション資料)
https://speakerdeck.com/toshiseisaku/no-dot-14-plateauderi-ben-quan-guo-nozi-dong-yun-zhuan-simiyuresiyonwoke-neng-nisuru
質疑応答では、内山氏の「シミュレーションだけではなくて実際のオペレーションでも使えるか?」との質問に対して、「まだ確認できていないが、実機で走ったロケーションとPLATEAUのロケーションを重ねることで可否を定量的に検証していきたい」と答えた。
◎キッズ向けさいがいMAP(東北工業大学 小野 桂介)
2022年11月に仙台で開催されたPLATEAU Hack Challenge 2022 in enspaceのグランプリを受賞した作品だ。PLATEAUに『マインクラフト』を組み合わせ、小学生に届く防災教育コンテンツを作ろうというもの。浸水している状態の街、家の状況を人気ゲームであるマインクラフト上で直感的に理解ができる。
浸水危険度の理解の向上、地域イベントや授業を通して普及促進活動を進めていく予定だ。今後、防災教育の実践、地域の防災活動の核となる人材の育成を目指すという。すでに仙台の防災関連イベントに出展し、テレビ取材を受けるなど手応えを感じているとのこと。
キッズ向けさいがいMAP(プレゼンテーション資料)
https://speakerdeck.com/toshiseisaku/no-dot-16-kituzuxiang-kesaigaimap
質疑応答では、データの変換について審査員から質問があり、「PLATEAUの3D都市モデルからマインクラフトのブロックへの変換は、FME Desktopを使用してCityGMLを読み込み、マインクラフト用のデータに変換している。浸水データは、PLATEAU内の浸水想定区域データ(Surface)を点群に戻し、その点群の位置にマインクラフトの水ブロックを置いている」と答えた。