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PLATEAUのピッチイベントにスタートアップ9社が集結!"サステナブルな3D都市データの整備を支援するAI"「Deep3」がグランプリ

「PLATEAU STARTUP Pitch」レポート

特集
Project PLATEAU by MLIT

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この記事は、国土交通省が進める「まちづくりのデジタルトランスフォーメーション」についてのウェブサイト「Project PLATEAU by MLIT」に掲載されている記事の転載です。

 PLATEAUの3D都市モデルを活用したビジネスアイデアを競う「PLATEAU STARTUP Pitch」が1月20日、CIC Tokyoにて開催された。スタートアップ9社が登壇しアイデアを競うとともに、会場では登壇企業やPLATEAUのプロジェクトパートナーによるサービス、プロダクトのデモ展示を行った。

3D都市モデルは社会実装のフェーズへ

 2020年度から国土交通省が推進する3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU(プラトー)」、3年目にあたる2022年度において、その活動は社会実装を意識した動きになっている。

 ハンズオン・ライトニングトークや、全国各地でのハッカソンイベントの開催を通じて、東京だけではなく、全国各地のエンジニアコミュニティとの連携を図っている。このPLATEAU×コミュニティの一連の活動の集大成として、PLATEAUを活用した作品コンテスト「PLATEAU AWARD 2022」も行われた。

 こうした開発イベントでは、いかに使いたくなるサービスか、社会に必要とされるプロダクトなのかといった点が問われる。その一方で、実際のサービスにいかにつなげるかというフィジビリティについても、ハッカソンの各審査員からの講評ではこれまでも言及されてきた。

 PLATEAU活用におけるノウハウが提供する側・利用する側ともに着実に蓄積され、次はいよいよ社会実装のフェーズになってきている。今回、満を持して行われたスタートアップ企業を対象にしたビジネスピッチイベントには9社が登壇。果たして、起業家たちは3D都市モデルを使ってどうビジネスをしようと考えるのだろうか。

会場は東京・虎ノ門のCIC Tokyo。イベントはオンライン参加も可能なハイブリッド形式で行われた。当日はオンサイトにて登壇企業やPLATEAUのプロジェクトパートナーによるサービスやプロダクトのデモ展示も開催された

 今回は各社7分のピッチを行い、次の5点を中心に審査された。

①3D都市モデルの活用
②プロダクトアイデア
③課題解決力
④ビジネスとしての可能性・期待度
⑤ピッチ自体の魅力・プレゼン力

 審査委員は、国土交通省都市局都市政策課課長補佐 内山裕弥氏、株式会社ANOBAKA代表取締役社長/パートナー 長野泰和氏、凸版印刷株式会社情報コミュニケーション事業本部未来イノベーションセンター事業創発本部・部長 名塚一郎氏、Symmetry Dimensions Inc.事業開発部シニアディレクター 清水直哉氏の4名。

 なお、協賛企業の株式会社PR TIMES、SOLIZE株式会社、電通 glue sprint for CVCの3社による賞の授与および賞品提供も行われた。

3Dデータから最大の成果を引き出す「Deep3」

 グランプリを受賞したのはAIを使って3Dデータの活用を容易にしようと提案するローカスブルー株式会社。同社代表取締役の宮谷聡氏は、3D都市モデルの整備における課題を次のように提示する。

1. 作成時に膨大な手作業が必要となること
2. 都市の成長とともに定期的な更新が必要であること

詳細な3D都市モデルのデータ作成には膨大な手作業が必要

 点群データの取得では、航空レーダーや車両レーダーなどレーザースキャナを搭載した作業となるが、例えば東京都のデータを取るだけでも準備期間を含めて半年から1年はかかるという。点群データから3D都市モデルの標準フォーマットであるCityGMLに変換するには、手作業でのクリーニングやモデリングが必要であり、さらに属性情報も付与することになる。

 データ更新時にもこの作業が必要になる。いま、日本各地で高度経済成長時代に作られた街の更新が急ピッチに進んでおり、都市の再開発や成長に合わせて、都市データの定期的な更新は欠かせない。

 この「取得した点群データから3D都市モデルとして整備する過程のコスト」をAIを使って削減しようというのがローカスブルーの提案だ。彼らが開発しているのは3Dデータ解析エンジンAPI「Deep3」。3Dデータを深層学習で学習させたAIモデルを使って、電線、植物、建物、地面を自動で仕分けるというもの。画像や動画の自動分類は深層学習の得意分野だが、それを3Dデータでやろうという話だ。

独自技術で建物と地面であることを自動判別

10種類以上の"モノ"を分類できる

樹木の下に隠れている建物が抽出できている(左:断面図で見た様子、右:上から見た様子)

 専用のソフトウェアを用いて判別する従来の方法では、このような樹木の下に隠れている建物の抽出は難しい。誤った分類を手作業で修正するなどしてきたわけだが、例えば、静岡県が推進するVIRTUAL SHIZUOKAのデータは3テラバイト超あり、その量のデータを手作業で修正していくコストだけでも膨大になるが、Deep3の高い認識性能により、発生していた修正作業を抑え、7割の作業改善が見られたということだ。

左(従来手法)で誤分類された箇所もDeep3ではしっかりと判別できている

 このDeep3、自動運転、送電線点検、街路樹点検など、さまざまな分野から注目されているという。想定する利活用のモデルは下図のとおり。APIの提供は2023年4月の予定だ。

Deep3の利活用モデル

 点群データに加え、今後、画像データや都市区画データを使って分類精度を向上し、分類できる物体の種類を増やすことを目指す。最終的には点群データからのモデリングの自動化を実現したいという。

ローカスブルー株式会社 宮谷聡氏

 審査員の名塚氏からは、3D都市モデルの普及においてその更新性は大きな課題となるとして、空撮データ以外の衛星データ、歩行者目線のテクスチャ情報などへのDeep3の対応状況について質問があった。これに対して、試みとして取り組んでいると宮谷氏。

 また、内山氏からは、Deep3のビジネス領域と、高い分類精度が出せる理由について質問があった。最初の質問に対しては、別製品の「ScanX」では建設業が主力のドメインとなっているが、Deep3は自動運転や電力系など建設業以外の領域への事業展開を模索し、チャレンジしているとのこと。2つ目の質問では、従来のソフトウェアが汎用性を重視しているアルゴリズムであるのに対し、Deep3では何を判別するか、ユーザーの希望に対してチューニングすることで精度を上げることができるのだという。

 グランプリに選出された理由は、3D都市モデルならではの課題の解決にとどまらずデジタルツインソリューション全般にもたらすインパクト、また、その技術力で国内技術の発展にも寄与する点が評価された。宮谷氏は受賞の喜びとともに、今後、3D都市モデル含め3Dデータの活用を促進できるようがんばっていきたいと決意を語った。

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