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「PLATEAU AWARD 2022」初代グランプリは実在の街をスノードームで楽しむ『snow city』

「PLATEAU AWARD 2022」最終審査会・表彰式レポート

特集
Project PLATEAU by MLIT

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5つの部門賞に加えて、マッドデータサイエンティスト賞が追加

 イノベーション賞、エモーション賞、データ活用賞、UI/UXデザイン賞(前述のとおり『snow city』が受賞)、PLATEAU賞という予定されていた各部門賞に加え、当日急きょ追加されたのが「マッドデータサイエンティスト賞」だ。まずは、この賞から紹介しよう。

 マッドデータサイエンティスト賞は『都市環境を対象としたクラウド解析ツール群「PLATEAU Tools」』(株式会社大林組 上田博嗣)が受賞。

ツール群の全体像

PLATEAU Tools(プレゼンテーション資料)
https://speakerdeck.com/toshiseisaku/no-dot-15-du-shi-huan-jing-wodui-xiang-tositakuraudojie-xi-turuqun-plateau-tools

 『PLATEAU Tools』はPLATEAUを使って都市環境評価を自動解析するクラウド解析ツール群だ。都市のデジタルツインには物理情報との融合がカギとなるが、現状、物理情報の解析には専門知識が必要で、そのほとんどが手作業で行われている。それを自然言語から取り出すことができないかという試みだ。

都市の風環境を解析する(PLATEAU-Wind)

 現在、PLATEAUの3D都市モデルから解析用の形状を取得・加工するツール(PLATEAU -Geometry)、都市の風環境解析ツール(PLATEAU-Wind)等の実装、さらにAIによる自動化を進めている。その他、日射状況や眺望などのツールも開発しているということだ。

今後、形状や風、太陽、眺望以外の都市環境評価ツールも整備していく予定

 「人柄も含めてすばらしく、淡々とすごいことを言っているのにグッときた」と川田氏は受賞理由を説明した。

受賞した上田さんは「PLATEAUは知れば知るほどすごいデータ。これからも活用していきたい」とコメント

PLATEAUで空間情報に基づいた立体音響を構築した『PLATONE プラトーン』

 イノベーション賞を受賞したのは『PLATONE プラトーン』(ORSHOLITS Alex)。「VRに聴覚体験を」というコンセプトで、空間情報に基づいた立体音響を構築するシステムだ。

地理参照情報に基づいたリアルタイム空間サウンドを実現するプラットフォーム

PLATONE プラトーン(プレゼンテーション資料)
https://speakerdeck.com/toshiseisaku/no-dot-9-platone-puraton

 PLATEAUの3D都市モデルを使って実際の物理環境を取得し、空間オーディオにマッチさせれば、あたかもその場でリアルに発生・伝搬してきた音のような体験ができる。

物理環境による音の伝搬のイメージ

 PLATEAUのCesium対応3Dタイルセットを利用して音の伝搬をシミュレーションし、Unreal Engineの中でSpatialized Audioを生成する。また、RTK-GNSSと9DoF IMUを用いて、ユーザーの位置と方位をリアルタイムに取得するためのトラッキングデバイスをプロトタイプとして開発。さらに低遅延のネットワークを構築するなど、デバイスからインフラまでさまざまな技術が組み込まれている。一例として「日本橋観光ウォーク」のデモ動画が紹介されたが、音で直感的に伝えるアプローチはアーティストのツールとして、あるいは視覚障害のサポートといったユースケースが考えられる。

Spatialized Audioの生成

ユーザーの位置と方位をリアルタイムに取得するプロトタイプ「GP-01」

 受賞理由として川田氏は、新たなユーザー体験として「日向でしか聞こえないポカポカラジオ」など新しいコンテンツの可能性に言及した。また、『PLATEAU Tools』とコラボしてもおもしろいと語った。

イノベーション賞を受賞したORSHOLITS Alexチーム。「提案されたアイデアをぜひ開発していきたい」と喜びを述べた

現実の世界でロボットを操縦できる『VARAEMON』

 エモーション賞は、『マルチプレイ対応VR/AR連動アプリ「VARAEMON」』(きっポジ@KITPOSITION)。「現実の世界でロボットを操縦したい」というモチベーションから始まった作品だが、VRとARを融合・同期させるというスゴ技が実現されている。

プレイ画面。1枚目がVRの映像、2枚目がそれをスマホVRで現実の映像に重ねてAR表示しているところ。ここではARは録画した過去の映像に重ねているが、これは技術的な理由ではなく気候(雪)のためで、リアルタイムでの合成も可能とのこと

VARAEMON(プレゼンテーション資料)
https://speakerdeck.com/toshiseisaku/no-dot-10-marutipureidui-ying-vrarlian-dong-apuri-varaemon

アプリの構成イメージ

 一次審査時はシステム内部に3D都市モデルを持つ形だったが、その後、リリースされたCesium for Unityを使って座標を同期しリアルタイムに生成する形に変更している。その他、一次審査時の技術的課題をこの数か月で解決へと開発を進めてきた。

一次審査時の技術的課題はほぼ解決

 アプリというよりも、システムとしての提案であり、あくまでゲームは1つのユースケースとしての提示だ。利活用のイメージは、現状ではARを起点にする構成であるため大掛かりなイベントになると考えている。また、教育用途、映像制作などに活用できるとする。

 ちょまど氏は、すばらしい情熱とすばらしい作品だと評価。きっポジ氏は、「ARとVRの融合にはさまざまな可能性がある。アイデアがあればぜひ声をかけてほしい」とコラボを呼びかけた。

審査員のちょまど氏とエモーション賞を受賞したきっポジ氏

CityGMLに属性情報を付加するWebアプリ『情報加算器』

 データ活用賞を受賞したのは、PLATEAUの3D都市モデル(CityGML)に属性情報を付加するWebアプリ『情報加算器』(HollowByte合同会社 米田 将)。

情報加算器
https://info-adder.web.app/

情報加算器(プレゼンテーション資料)
https://speakerdeck.com/toshiseisaku/no-dot-4-qing-bao-jia-suan-qi

 PLATEAUのCiyuGMLデータはそのデータ形式自体は優れた構造を持っているにもかかわらず、用途によってはセマンティクス(属性情報)が不足している場合がある。そこで、他のオープンデータから情報を加えようという発想だ。Webアプリとして提供することで、インストール&プログラミング不要で、誰でも情報を追加できる。PLATEAUに詳細な情報を持つオープンデータを加えることで、よりリッチな都市情報データベースを構築できるとする。

アップロードしたCityGMLファイルに誰でも容易に情報を付加できる

CityGMLファイルをアップロードし、「郵便番号」、「所在」、「最寄り駅」、「周辺の施設」から追加したい項目を選択して処理を実行する

 ちなみに上図に示したものは一次審査の時点で提出していたもので、その後、よりスマートにブラッシュアップしている。あらかじめオープンデータを整理しておき、どの情報を読み込むかノーコードで指定できるようにしたいという。

 データ活用賞の受賞理由として、小林氏はオープンデータ連携のための新しい提案になり得るという点を挙げた。

「PLATEAUのデータがよりリッチなものになれば情報として活用する幅ももっと広がる、オープンデータの活用はこれからもっと広がっていく」と米田氏

新居の風景を見てみたい思いから生まれた『PLATEAU Window』

 PLATEAU賞は『PLATEAU Window』(PLATEAU Window's)。

『PLATEAU Window』

PLATEAU Window(プレゼンテーション資料)
https://speakerdeck.com/toshiseisaku/no-dot-17-plateau-window

 2022年8月に開催されたPLATEAU Hack Challenge 2022 in ヒーローズ・リーグで生まれた作品で、場所と階数、向きを入力すると「窓のある部屋」に移動し、窓から見える風景を体感できるというものだった。それが今回、大幅にバージョンアップされ「時空を越えて、ココロつながる」というコンセプトを中心に、機能が大幅に追加されている。例えば、周囲の飲食店情報やTwitter検索で周辺の情報を表示できる。

年月日を指定して窓から見える周辺の情報を表示するほか、住所の検索、階数設計、窓位置の設計、天候の再現、風景体験、過去の時事閲覧、さらにTwitterや記事内のキーワードとリンクした時空間の移動が可能となっている

Twitter検索の結果が風船で浮き上がる

 TwitterやWikipediaなどから取得した情報を使って「コンパス」から場所を指定する仕掛けもある。また、会場では、持ち込んだViveトラッカーを使ってVR機器なしに窓の景色を見渡せるデモが行われた。

コンパスで空間の移動ができる

 内山氏は、ハッカソンの時点では実装はまだまだという状態から仕上げてきた点、3D都市モデルのセマンティクスを十分に活用しているところを受賞理由として挙げた。また、PLATEAU Window'sチームの二人はPLATEAUハッカソンで出会ってプロジェクトを継続しており、PLATEAUのコミュニティがあったからこそできた作品だと位置づけた。

作ってきて楽しかったというPLATEAU Window'sチーム

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