クセのないクルマだからクセを与えた
では、クセを与えるためにどの場所を変更したのでしょう。「今までのModulo Xシリーズと同じなのですが、エアロとホイールを含めた足回り、そして内装です」と湯沢さん。残念ながら、パワーユニットはオトナの事情により一切手が加えられないのだとか。「手を入れてほしいという声は重々存じております」ということ、私が言うより前に、湯沢さんの耳はオクトパス状態でした。
気になるエアロはどのようなものなのでしょう。エアロはスタイリング面で竹腰さんが作った物を、湯沢さんが徹底的に走り込み、その後、設計である阪本さんに引き渡すというのがおおまかな開発のワークフローなのですが、全員でテストコースで走りながらスタイリングを作りあげていったのだとか。竹腰さんが「今回は都市型スポーツというイメージで作り上げました」というそのエアロを大まかに見てみましょう。
まず目に飛び込むのは、VEZEL e:HEVのエクステリア最大の特徴である「インテグレーテッドグリル」を空力的な配慮から廃し、先代VEZELのような形へと変更してしまったこと。イマドキのSUVはドヤ感のある大型グリルがもてはやされているのに真逆の行為ではありませんか。そこで同色グリルを廃したことに抵抗はないのかと尋ねたところ「ありません!」とキッパリ。同社からは純正アクセサリーとして、よりフロントマスクを強調する存在感のあるフロントグリルを(4万4550円~)販売しており、装着率も高いとのこと。それもまた、彼女をそうさせたのでしょう。
そんなエアロを細かくみると、あちらこちらにフィンが付いていたり、風の流れを意識したフード先端形状にするなど、コダワリがありそう。「私たちは、日常の速度域でも体感できる空力効果を実効空力と呼び、長年開発してきました」と湯沢さん。実効空力とは、走行中の前後リフト値を均等に近づけ、すべてのタイヤに加重を等しくかけることで、外乱に強く、ヨーの発生を抑えるという考え。そのために、実走を繰り返しながら作るという実践的なエアロ開発をしているのだとか。
「今回はより走り込みをして、走っては形を変えて、を繰り返しながら作成しました」という自信作。確かに見た目だけで、インテグレーテッドグリルのフロントマスクに比べ、より空気が綺麗に流れるように見えます。コダワリは見えないところにも。フロントリップスポイラーの下部には、見たことないような空力デバイス「エアロボトムフィン」の姿が。
今回エアロパーツとして取り付けられたのは、フロントだけでなく、リア回りにもあります。テールゲートスポイラーは純正アクセサリー流用ですが、これも純正アクセサリー開発時からModulo Xに採用することを考慮して空力効果を狙った造形。さらにリアバンパーもサイドやディフューザー形状などは新規。しかも下を見ると、これまた空力デバイスがチラリ。こうした実践的エアロというのは、ほかのサードパーティーとは一線を画するもの。さらにHondaの看板を背負っていますから、衝突安全の面とかでもバッチリ問題ナシです。Hondaクオリティーで実践エアロ。ここにファクトリー・コンプリートカーの価値があるのです。
ほかにないか、と横を見てみると、SUVではおなじみのプラスチック製フェンダーガーニッシュがボディと同色塗装されているではありませんか。竹腰さんは「SUVは力強い印象を与えるために別素材のフェンダーガーニッシュを取り付ける傾向があります。今回はオフロードよりは都市などの走行をメインとしているので、同色にしました」と、ここでもキッパリ。竹腰さんから、竹を割ったような潔さを感じたのは不肖だけでしょうか?
デザインはしなやかに駆け抜ける黒豹をイメージ
湯沢さんによると、デザイン面でも走行性能面でも道なき道をしなやかな身のこなしで駆け抜ける黒豹をイメージしてクルマを仕上げているのだとか。しなやかな身のこなしの要といえる足回りを見てみましょう。
「私たちはホイールそのものをサスペンションの一部として考えています。ですので、Modulo Xでは純正アルミホイールと比べて、あえて剛性を落とした専用品を採用することがあります。ホイールのたわみを活かすことで、タイヤの接地面圧を最適化しています」とのこと。これは「S660 Modulo X」や先代「VEZEL Modulo X」「FIT e:HEV Modulo X」から続くModulo Xの特徴のひとつ。以前、S660でホイールだけをModulo Xに採用された純正アクセサリーホイールに交換してみたことがあるのですが、路面の突き上げが柔らかく感じるなど想像以上の効果でした。
今回のVEZEL e:HEVは1350kgを超える車体。はたして剛性を落として平気なのか? というと「今までの知見を得ていますので。また試作回数は減っていますよ」ということで問題なさそう。「それに合わせた専用サスペンションを開発しています」というわけ。ホイールも含めたセッティング、それにともなう乗り味が楽しめるのがファクトリー・コンプリートカーの魅力。しかも、Hondaのテストコースで徹底的に走り込みをしているわけだから、私たちが車高調を買っていじって……とは、レベルが違います!
「SUVでスポーツドライビングができますよ」と笑顔を魅せる湯沢さん。今までSUVで心の底からコーナリングを楽しめたSUVに乗ったことがない不肖は、その言葉を期待して待ち望みたいと思います。やっぱりコーナリングが楽しめてこそのスポーツドライビングですからね。
最後に、「Modulo XはHondaファンへの贈り物」と湯沢さんはおっしゃっていましたが、Hondaファンだけが、Modulo Xを楽しむのは実にもったいない話。Hondaファンでなくても、Modulo Xに触れてみてもらいたいです。「コレ、マジでイイ!」と思わず心の声がダダ漏れること間違いありません。そして「こんなにイイなら、VEZEL e:HEV Modulo Xに期待しちゃおうかな」と思うことでしょう。
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