Windows Server 2008 Foundation
2009年4月1日、米マイクロソフトはWindows Serverファミリの小規模企業向けエントリ版「Windows Server 2008 Foundation」を発表した。15ユーザー以下の小規模企業がターゲットで、OEM版のみ提供される模様である。CAL(クライアントアクセスライセンス)も不要らしい。現時点では「制限はユーザーアカウント数のみ」と発表されているが、製品版でどうなるかはわからない。OEM用なので価格はサーバ価格に上乗せされる。マイクロソフトCEOのスティーブ・バルマー氏は「500ドルで買えるマシンのOSに500ドルを払う気になれないだろう」と語っているので、それなりに安価になるようだ。
「500ドルで買えるマシン」といえばネットブックを思い浮かべるが、さすがにネットブックをサーバとして使いたい人はおらず、おそらく最小構成のサーバを指すのだろう。実際、OSなしで5万円程度のサーバはすでに発売されている。
Windows Server 2008 Foundationの将来は未知数だが、価格だけが理由でLinuxに流れたユーザーを呼び戻す効果はあるはずだ。ただし、Linuxのよさは価格ではない(サポートコストは意外に高く付く)ので、どの程度の効果があるかはわからない。
64ビットCPUへの対応
Windows VistaとWindows Server 2008には32ビット版(x86版)と、64ビット版(x64版)がある。現在発売されているCPUのほとんどは64ビットモードを持つため、x64版が普及する準備はできている。こうしたことから、サーバについては2009~2010年に発売される予定のWindows Server 2008 R2からx86版は提供されず、x64版のみになる。Exchange Server 2007のように、一足先にx64専用になった製品もある。Exchange Server 2007を含むSBSやEBSもx64のみの提供だ。
クライアントは、Windows 7でもx86版が提供される。ただし、主力はx64に徐々にシフトするだろう。すでに一部のPCベンダーはWindows Vistaのx64版をプレインストールして提供している模様である。
x64のメリットはおもに2つある。
利用可能なメモリが多い
x86の仮想メモリ空間は4GBしかない。物理メモリも原則として4GBである(Windows Server 2008 Enterprise以上は64GB)。x64の場合、仮想メモリ空間、物理メモリ空間ともに32GB以上になる(実際のメモリ空間はCPUの型番とチップセットに依存)。おもにサーバで重要なメリットだ。
x64用にコンパイルした場合は高速
同じ命令を実行するのにx86とx64の違いはない。しかし、整数レジスタ長が倍になり個数も倍増していること、SSEレジスタが倍増していることにより、再コンパイルすることで速度が向上する。整数レジスタの拡張は、SSLなどの暗号化処理性能の向上に直結する。マイクロソフトの調査では、SSL性能が50%増加したという。暗号化が高速というのはサーバにもクライアントにも大きなメリットだ。SSEレジスタの増加は、動画再生やビデオエンコードの速度向上につながる。PCベンダーは、テレビやビデオとPCを融合させようとしているため、特にクライアントに恩恵があるだろう。
Windows 7の一般への登場は、2009年10月である。Vistaの登場から間がないが、これはVistaからのマイナーチェンジとなるためだ。マイクロソフトはメジャーバージョンアップの間隔を4年から5年、その中間でマイナーバージョンアップを行なうとしているため、Windows Vistaからのメジャーバージョンアップは2、3年後になる予定だ。
その頃のPCの大半は、CPUやデバイスもx64をサポートしているだろう。そのため、Windowsの主力製品はx64に移行していると思われる。ただし、x86もまだまだ多く使われているため、パッケージにはx86とx64の両方のDVDが含まれると予想される。
筆者紹介:横山哲也(よこやま てつや)
グローバルナレッジネットワーク株式会社 マイクロソフト認定トレーナ/マイクロソフトMVP。1994年からSEおよびプログラマ向けにWindowsサーバの教育を担当。1996年、グローバルナレッジネットワーク設立とともに同社に移籍。2003 年より「マイクロソフトMVP(Directory Services)」
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