将来のWindows Server
過去のWindowsを振り返ってみると、Windowsの派生版に備わっていた機能が主流製品に統合された例は多い。たとえば、Windows NT 4.0, Terminal Server Editionの機能は、Windows 2000 Server以降に統合された。Windows Storage Serverに備わっていたいくつかのツールはWindows Server 2003 R2以降の標準機能になった。クライアントの場合は、Windows XP, Tablet PC Editionの機能がWindows Vista以降の標準機能に組み込まれた。
ただし、単純なサブセットであるWindows Web Server 2008や、サーバ製品スイートであるSBS/EBS、そしてNAS製品の内蔵OSとして提供されるStorage Serverが主流製品と統合されることはないだろう。Home Serverも統合されないと思われる。Home Serverは簡単なことが取り柄なのに、統合すると単純さを失うからだ。
一方、HPC Serverに関しては統合される可能性はある。たとえば、かつてIBMは科学技術計算用コンピュータと事務計算用コンピュータを別々のラインナップとして発売していた。しかし、System 360で両者が統合され「汎用機」という名称を生んだ。一般ビジネス用のWindows Server 2008と、科学技術計算用のHPC Serverが統合されても不思議はない。金融デリバティブ商品のリスク分析など、HPC Serverの分野は拡大している。「汎用Windows Server」が統合するのは自然な流れである。
気になるのは、Itaniumのサポートだ(写真1)。現在、WindowsがサポートするCPUはx86と呼ばれる32ビット版と、x64と呼ばれる64ビット版が中心である。過去にはAlpha、MIPS、PowerPCといったCPUもサポートしてきたが、いずれもハードウェアベンダーの都合によりサポートが打ち切られた。Itaniumはインテルが提供し、HPなどのサーバに採用されているが、どちらかというと特殊用途に近い。新CPUの開発速度も鈍化しており、3年後にはItaniumの今後の方針がはっきりするだろう。ただし、過去にマイクロソフト自身がCPUサポートの中止を決めたことはなく、市場の動き次第となるはずだ。
ネットブック用Windowsの今後
今後3年間で見逃せないのはネットブックの動向である(写真2)。ネットブックは、性能と画面サイズを犠牲にした上で、大幅に安い価格で提供されるポータブルPCだ。典型的なネットブックは3万円から8万円程度である。現在、ネットブック向けにはWindows XP Home Editionがマイクロソフトから安価にライセンスされている。旧バージョンとはいえ、機能限定版ではないフルセットOSであるため、多くのユーザーが飛びついた。
しかし、Windows Vistaに関しては価格的な優遇処置はない。そもそも、Windows Vistaはネットブックで動かすには重すぎる。Windows 7では軽量化が図られるため、ネットブックで十分実用になると思われるが、標準のWindows 7ではハードウェアに比べて値段が高すぎる。しかし、ネットブック市場を黙殺してしまうと、LinuxなどにOS市場を奪われる可能性がある。また最近では、多くのサービスがインターネットで提供されるようになり、Webブラウザさえ動けばOSは何でもよいと考える人も増えてきた。
現時点では、ネットブック専用の「Windows 7 Starter」が提供される予定だ。ただし、Starterはネットブック向けOEM専用として位置付けられ、現在提供されているベータ版には含まれていない。何らかの制限が設けられるはずだが、その制限は「まだ決まっていない」というのが真相のようだ。
現在のStarterは新興市場向けであり、同時に起動できるアプリケーションが3つまでという制約がある(画面3)。いくら性能の低いネットブックでも、アプリケーションの同時起動が3つというのは厳しい。
マイクロソフトは、「ネットブックに自分でOSをインストールすることは妨げない」と主張している。Windows 7 Starterの機能を合理的な制限とするか、標準のWindows 7への安価なアップグレードパスが用意されることを期待する。Windows 7の対応が不適切であれば、ネットブック市場からそっぽ向かれる可能性もあるだろう。
(次ページ、「Windows Server 2008 Foundation」に続く)
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