2022年の末に登場したトヨタの「GRカローラ」ですが、2025年の初めに大きなバージョンアップを果たしました。もともと高い走行性能を有しているわけですが、速さだけではなくドライバーが感じる乗りやすさ、扱いやすさも向上した改良となりました。この大幅改良を受けたGRカローラをチェックしていきます。
モータースポーツで鍛えたAT「GR-DAT」が追加設定
2025年2月の改良での最大のトピックは8段変速のAT「GR-DAT」が新たに設定されたことです。DATは「ダイレクトオートマチックトランスミッション」の略で、スーパー耐久のST-Qクラスを始め、モータースポーツの現場で開発されたサーキットで使えるATです。先にGRヤリスでも採用されていましたが、GRカローラにも設定されたのです。
ほかにも前後サスペンションにリバウンド側で作動するスプリングを内蔵して、コーナリング時の車両姿勢とイン側のリフトを抑えて路面追従性を向上させたり、加速時のリア沈み込みを低減するために車体とサスペンションを繋ぐトレーリングアームの取り付け点を引き上げたりと、コーナリング性能も改善されています。
さらにエンジントルクを中回転域では30Nm、最大で400Nm増加させたり、空力と冷却性能の向上のためにエアロパーツの形状を変更したりと、その内容は多岐にわたります。変更点を上げればキリがありません。
街乗りでも進化を実感できる乗り味
そんな「進化型」GRカローラに試乗したわけですが、今回は新たに設定されたGR-DATの搭載モデルに試乗しました。なお、グレードは上級グレード「RZ」のみの展開となっています。
街乗りから試乗を開始すると、以前よりもしっとりとした乗り味が増しており、乗り心地が良くなった印象です。高級サルーン並み……とはいきませんが、コンフォート性能は改良後のほうが高くなっています。路面追従性を高めたサスペンションの変更が、乗り心地にもいい影響を与えている感触で、高速道路での車線変更や継ぎ目もよりリラックスしてドライブできます。
そして、街乗りで大きく進化したと感じたのが、ステアリングフィールです。ステアリングコラム(※1)とインパネリインフォース締結部(※2)に剛性の高い溝付きワッシャーボルトが採用され、よりステアリングからのインフォメーションと操作感が緻密になったという印象です。
※1 ハンドルの操作を車輪に伝えるステアリングシャフトを支持する部品
※2 ステアリングコラムなどの部品をサポートする補強材
変更があったわけではありませんが、ブレーキタッチも同様の雰囲気。ステアリングとブレーキからの情報量が多く、緻密で、操作フィーリングもきめ細かな印象で、ドライバーとの対話が深い領域でできると、街乗りで感じさせます。
ワインディングではGR-DATと進化したエンジンを実感
ワインディングに入ると、進化したエンジンと新たに設定されたGR-DATが、その本領を発揮します。中回転域、特に3500回転から上の領域ではトルクの太さが存分に感じられ、一定以上の回転数を維持しておけば、前にクルマを進ませてくれるトルクがすぐに伝達されます。
そしてGR-DAT。こちらは、これまでのATを超える速度で変速をしてくれるのですが、特に驚かされたのがシフトダウンです。シフトダウン回転数の許容範囲が広く、これならばサーキット走行でもエンジンの美味しいところを使えるのはもちろん、ウェットコンディション(雨など)でエンジンブレーキを積極的に使いたいシチュエーションにも応えてくれそうです。
なお、今回の改良で4WDシステム「GR-FOUR」にも手が加えられました。それは前後駆動配分の設定です。ノーマルモードで60:40なのは従来と変わりませんが、グラベルモードでは50:50に、トラックモードでは60:40~30:70の間で自動可変するようになりました。
トラックモードは、より積極的に向きを変えられる設定となったわけですが、これを試してみるとターインまではノーズの入りシャープで楽しく、そのあとはしっかりと4輪が地面を掴んで駆動を路面に伝え、素早く立ち上がってくれます。運転していて楽しいと感じさせる駆動設定がトラックモードでした。
サーキットでのタイムなど、シチュエーションによっては50:50固定のグラベルモードが速いこともありそうです。なにより、ワインディングでもクルマと対話がしやすく、安定感バツグンであることに驚かされました。
【まとめ】スーパー耐久の知見が存分に活きているGRカローラ
あらゆるシチュエーションで、リラックスして運転が楽しめる。そして、ワインディングでは運転に夢中になってしまう進化したGRカローラでしたが、それはスーパー耐久という過酷な耐久レースでの知見が投入されているからこそだと思いました。
ST-Qクラスに参戦しているマシンで得たものが、改良・開発にも活かされているそうですが、長くドライバーに負担がかかる耐久レースだからこそ、ドライバーがリラックスして運転に集中できる要素が必要となり、それが市販車にも活かされていると感じられる、改良モデルに仕上がっていました。
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