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「太陽光=屋根や空き地」はもう限界。ペロブスカイトが叶える光合成する都市

特集
未来を変える科学技術を追え!大学発の地味推しテック

 東京都では2025年4月から新築住宅への太陽光パネルの設置が義務化された。温室効果ガスの削減や再生可能エネルギーの普及を目的とした政策だが、「ほんとに効果あるの?」と疑問を抱いている人も少なくないだろう。

 実際、住宅の屋根に太陽光パネルを載せるという方法には限界がある。東京都環境局の資料によれば、住宅用の屋根で現実的に太陽光パネルを設置できる場所は全体の3〜4割程度。さらに都市部では、日照の関係や建築制限などで「載せたくても載せられない」家も多い。

 郊外であれば畑や耕作放棄地を使えばいいじゃん、と思いきや、農地の転用には厳しい規制があるし、環境破壊や景観問題で反対運動が起こることもある。要するに、「太陽光=屋根や空き地」という発想そのものが、すでに限界を迎えつつあるということだ。

 ここで注目したいのが、「ペロブスカイト太陽電池」と呼ばれる次世代型の太陽電池だ。薄くて軽く、柔軟性があり、しかも安価。ガラスや布、樹脂フィルムなどさまざまな素材に対応でき、ビルの窓ガラスや自動車の屋根、さらには衣服やバッグなどからも電気を生み出すことが可能になる。現在、世界各国で開発が進められており、2030年を目処に量産化される計画だ。

 しかし、ペロブスカイト太陽電池には課題がある。発電層の上に透明導電膜を形成する必要があり、従来の方法では成膜時に材料が損傷し、効率や耐久性が低下するという問題だ。ここで役立ちそうなのが、株式会社アドバンスト・スパッタテックの「低ダメージスパッタリング成膜源」だ。この技術は、ペロブスカイト層を保護しながら透明導電膜を形成できる。さらに、製造効率を約2倍に高め、コストも抑えることで、量産化を後押しする技術として期待されている。

株式会社アドバンスト・スパッタテックのカタログ資料より

 義務化で広がる太陽光の導入を「もう屋根が足りない」と嘆くのではなく、「じゃあ屋根以外も全部ソーラーにしちゃえ」という発想の転換が、技術の力で現実味を帯びてきた。植物が葉で光合成をするように、「建物」や「自動車」、果ては「人の服」までもが太陽の光を受けて電気を生み出す。エネルギーと都市生活を根本から変えるテクノロジーが、実はもうすぐそばにあるのだ。

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