食料安全保障は“畑の土”から。水不足と土壌改善に挑む農業技術
「SusHi Tech Tokyo 2026」展示レポート④
SusHi Tech Tokyo 2026の農業・フード領域では、培養肉や機能性食品を開発するスタートアップが多数出展していた。また、収穫や選果など、生産現場の人手不足を補う自動化技術も注目を集めた。
大学発スタートアップ支援「NINEJP」のブース内に出展した山梨大学の「AI技術を搭載したサクランボ自動選果機」。カメラで「色(等級)」と「サイズ」を瞬時に判別し、傷つきやすい果実を自動で仕分けていた
株式会社KULBAYは、高たんぱくアイス「pocotein(ポコテイン)」を会場で販売
一方で、栽培環境の課題に直接アプローチする技術も目立った。近年は、干ばつや豪雨など気候変動の影響で農業生産が不安定になりつつある。世界的な人口増加や地政学リスクを背景に、食料の安定供給が重要性を増すなか、海外来場者の関心を集めていた。本記事では、水や土壌といった農業の基盤を支える技術に注目する。
干ばつ対策から生まれた素材が、日本の農地にも広がる
EF Polymer株式会社は、土壌中の水分を保持する自然由来の高吸水性ポリマー「EFポリマー」を開発している。原点は、創業者の故郷であるインドの干ばつ地域だ。子どもの頃、畑で育てていた野菜が水不足ですべて枯れてしまった経験が開発のきっかけになったという。
創業者は当初、果物の皮を畑にまくといった実験を重ねながら、水を保持できる素材の研究を進めた。その後、沖縄科学技術大学院大学(OIST)のスタートアップ支援プログラムに採択され、沖縄で事業を立ち上げた。
EFポリマーの原料は、オレンジやバナナの皮などの食品残渣だ。土に混ぜると、雨や灌漑水を吸収して自重の約50倍の水を保持し、土壌が乾燥すると蓄えた水を少しずつ放出する。
さらに、吸水と放出を繰り返す過程で土の中に隙間が生まれ、土壌の団粒構造が発達しやすくなる効果もあるという。従来の吸水材には化学合成素材も多いが、EFポリマーは100%オーガニック。微生物によって分解され、約1年間で土に還る点も特徴だ。
干ばつ地域向けに開発された技術だが、現在はインド、米国、フランスなどで販売され、累計販売量は700トンを超えるという。日本ではAmazonや株式会社サカタのタネを通じて展開し、国内農家への導入も進む。近年は短期間に豪雨が集中する一方、雨が降らない期間も長くなるなど降水パターンが極端化している。干ばつ地域向けに生まれた技術が、国内の農業現場でも使われ始めている。
「有機転換5年」を1カ月に縮める土壌づくり
株式会社TOWINGは、未利用バイオマスを炭化した「バイオ炭」を活用した高機能ソイル「宙炭(そらたん)」を展開している。バイオ炭は、植物由来の資源を炭化した素材で、土壌改良材としても注目されている。
TOWINGの宙炭は、バイオ炭に独自の微生物や有機肥料を定着させている点が特徴だ。一般的な土壌改良材のように土の水はけや通気性を改善するだけでなく、植物が吸収しやすい栄養状態をあらかじめ土壌内につくり、生育を促進する仕組みを備えている。
土壌改良材が注目される背景には、農業現場で進む土壌劣化がある。化学肥料への依存が続くことで土壌環境が悪化しやすくなるほか、近年は国際情勢の影響による肥料価格の高騰も課題になっており、有機肥料を活用した栽培への関心が高まっている。
ただ、化学肥料中心の農地を有機栽培へ転換するには、通常5年ほどかかるとされる。一般的な堆肥は、植物が吸収できる状態になるまで時間がかかるためだ。一方、宙炭には有機物を分解し、植物が吸収しやすい硝酸へ変える微生物機能があらかじめ組み込まれているため、有機転換までの期間を「約1カ月」に短縮できるという。
現在は宙炭そのものの販売に加え、宙炭で育てた「宙苗(そらなえ)」の販売も行う。さらに、苗の植え付けや水・肥料管理まで含めたコンサルティングも提案している。
実際の農地では、100%宙炭を使うのではなく、コストとのバランスを見ながら既存の土に混ぜて使うケースが多いとのこと。耕作放棄地の再生では初年度に多めに投入し、その後は微生物補給を目的に追加投入するといった使い方だ。土壌に炭を投入することで炭素固定にもつながるため、将来的にはカーボンクレジット創出の可能性もある。
同社はすでにタイや米国・カリフォルニアに拠点を構え、中南米や欧州への展開も進めているそうだ。
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