ペロブスカイト、グリーンアンモニア、放射冷却。日本で進む注目エネルギー実装
「SuSHi Tech Tokyo 2026」展示レポート②
SuSHi Tech Tokyo 2026のエネルギー領域展示では、核融合や次世代発電といった大規模技術が来場者の関心を集めていた。Starlight Engine株式会社のブースでは、核融合発電所を中心にデータセンターや半導体工場など周辺産業まで含めた「FAST計画」の模型を展示。株式会社EX-Fusionも、レーザー方式の核融合炉模型を公開し、発電方式そのものの多様化を印象づけていた。
一方で会場を見渡すと、発電できる場所を広げるペロブスカイト太陽電池、小型設備でアンモニアを作る分散型プラント、電力を使わずに冷却する放射冷却素材など、より実装に近い技術も増えている。エネルギーの議論は「何で発電するか」だけでなく、「どこで作るか」「どう使うか」へと広がり始めている。
軽くて曲がる「ペロブスカイト太陽電池」、未活用の屋根や道路へ
株式会社エネコートテクノロジーズのブースでは、ペロブスカイト太陽電池を搭載したミニカーが、サーキット模型の上を走っていた。使っている電力は、照明から受けた光で発電したぶんだけ。発電性能を直感的に伝えるデモだ。
ペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコン系太陽光パネルと比べて、軽量かつ柔軟性が高い。曲面や耐荷重に制約のある場所にも設置しやすいのが特徴だ。
実証実験用のモジュールはすでに完成しており、現在は複数の企業と試験運用を進めている段階にあるという。量産開始は2027年以降を見込む。
同社がまず狙うのは、ビルの窓や壁面よりも、これまで太陽光パネルを載せにくかった工場の屋根だ。従来のパネルは重量があるため、設置時には耐荷重計算や大型架台が必要だった。工場の折板屋根や波板屋根は、広い面積がありながら十分に活用されてこなかったという。
軽量なペロブスカイト太陽電池であれば、比較的簡易な治具で設置でき、施工負担も抑えられる。こうした未活用スペースを、自家消費型の発電設備へ転換できる可能性がある。
さらに同社は、道路脇の法面や中央分離帯といった“デッドスペース”への設置も検討している。これまで発電用途として見られてこなかった場所そのものを、発電インフラへ変えていく発想だ。
既存のメガソーラー事業者や建設・不動産業界からも引き合いがあるそうで、従来型パネルを完全に置き換えるというより、「これまで設置できなかった場所を埋める」形で、太陽光発電の総量を増やす動きが始まりつつある。
太陽電池の競争は、発電効率だけでなく、「どこに設置できるか」という設計自由度の争いにも広がっている。
アンモニアを“その場で作る”小型プラント、今夏から稼働
つばめBHB株式会社のブースでは、新潟県柏崎市で進むINPEX株式会社との実証プラント模型が展示されていた。水素と窒素を投入し、アンモニアを合成する設備だ。
同社が開発するのは、小規模・分散型のアンモニア合成技術だ。従来のアンモニア製造は、100年以上前に確立された「ハーバー・ボッシュ法」が主流で、400〜500度の高温、10〜30MPaの高圧環境が必要だった。そのため、数十万〜数百万トン規模の巨大プラントで一括生産し、各地へ輸送するのが一般的だった。
これに対し、同社は東京工業大学(現・東京科学大学)の細野秀雄栄誉教授らが開発した 「エレクトライド触媒」を活用し、より低温・低圧でアンモニアを合成できるのが特徴だ。反応条件が緩和されたことで、従来は大規模プラントが前提だった設備を小型化。最小モデルは40フィートコンテナを3段積みした程度の大きさだという。こうした小型設備をベースに、年間500トン、5000トン、2万トン規模まで、生産量に応じたラインアップを展開している。
新潟では年間500トン規模の実証設備がすでに完成しており、2026年夏ごろの稼働開始を予定している。INPEX株式会社側で化石燃料由来の水素を製造し、その際に発生するCO2を地下貯留することで、カーボンニュートラルなアンモニア製造を目指す。
将来的には、再生可能エネルギー由来の水素を活用し、地域ごとに小型設備でアンモニアを製造・消費する「グリーンアンモニア」の地産地消モデルも視野に入れる。電力をそのまま送るのではなく、アンモニアという形で貯蔵・利用する発想だ。
アンモニアは肥料原料に加え、化学繊維や半導体向け材料、火力発電所の排ガス処理など幅広い産業で使われている。味の素株式会社川崎工場では、食品製造に欠かせないアミノ酸生成プロセス向けの実証も進められてきた。
海外ではブラジル、インド、モロッコ、スペインでもプロジェクトが進行中だ。特に肥料を輸入に依存する地域では、エネルギー安全保障と食料安全保障の両面から注目されている。
電気を使わずに冷やす「放射冷却フィルム」
SPACECOOL株式会社は、宇宙空間へ熱を放出する「放射冷却」の原理を活用し、外部電力を使わずに対象物を冷却する素材を開発している。
ブースでは、同社のフィルムを貼った板と、貼っていない板を白熱電球の下に置き、表面温度の違いを比較するデモを実施。光の熱を反射するだけでなく、物体が持つ熱を赤外線として空間へ逃がすことで温度上昇を抑える仕組みだ。
真夏の屋外では鉄板の表面温度が80度近くまで上昇することもあるが、一般的な遮熱塗料では約50度程度までしか下がらない。一方、同社のフィルムを貼ると、条件次第では表面温度が外気温を下回るケースもあるという。
すでに東京都交通局関連施設の屋上や2025年の世界陸上の選手待機所などで導入されたほか、ロンシール工業株式会社と共同開発した防水シートは商品化済みだ。現在は工場の屋根、屋外設備、精密機器の筐体、倉庫、コンテナハウスなどにも用途が広がっている。
ブースでは、一般消費者向けの応用例として「放射冷却日傘」も展示されていた。テレビ番組で紹介され、一時は品薄になるほど売れたという。大型インフラ向けの素材開発が、身近な暑さ対策にも活用され始めている。
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