【米不足】「捨てられていたアレ」が農家のピンチを救うかも
米の高騰が止まらない昨今だが、その裏で見落とされがちな存在がある。それが「米ぬか」だ。日本国内だけでも年間約100万トン(農林水産省調べ)が生産されている。栄養価が高く、ビタミンB群やミネラル、食物繊維、抗酸化作用のあるフィチン酸などを豊富に含むが、その多くは家畜飼料や肥料として使われるにとどまっている。「この栄養の宝庫が十分に活用されていないのは、もったいない」と感じるのは私だけではないはずだ。
そんな米ぬかに新たな価値を見出したのが、東北大学発のスタートアップ、ファイトケミカルプロダクツ株式会社だ。同社は、東北大学で開発された「イオン交換樹脂法」という革新的な技術を基盤に、米ぬかから機能性成分を効率的に抽出・精製する技術を提供している。
例えば、米ぬかから抽出される「γ-オリザノール」や「フェルラ酸」といった成分は、食品やサプリメント、化粧品の原料、さらには医薬品の原料として注目されている。同社では、これらの成分を高純度で抽出・精製した製品を提供しており、研究用途や製品開発の原料として、富士フイルム和光純薬株式会社のサイトから購入も可能だ。
「イオン交換樹脂法」といえば、高校の化学実験を思い出す人もいるだろう。一般には、工業廃水の処理や半導体産業などで、水中の不純物を分離するために使われている技術だ。これに対して東北大学では、水ではなく油から微量成分を分離・抽出できるという世界初の応用に成功した。具体的には、米ぬかから「こめ油」をしぼる際に残る未利用油を原料に、ビタミンや抗酸化物質などの有効成分を効率よく抽出しているのだ。
捨てられるはずだった米ぬかから「こめ油」をしぼり、さらにその廃棄物を有効活用することで、廃棄コストの削減や新たな収益源の確保につながる。米ぬか由来の高付加価値製品から得られる利益を米農家に還元すれば、米の価格上昇や供給不足の問題も解決に近づくかもしれない。こうした循環型の取り組みは、農業の持続可能性を高めるだけでなく、地域経済の活性化にもつながる。次にお米を食べるとき、その裏にある「米ぬか」という資源の可能性にも、ぜひ思いを巡らせてほしい。