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CO2活用建材とレアメタル回収。実装進む環境技術

「SuSHi Tech Tokyo 2026」展示レポート③

特集
SusHi Tech Tokyo 2026で見えた実装フェーズの技術

「開発」から「導入」へ。量産フェーズに入った新材料

 SuSHi Tech Tokyo 2026の先端材料領域の展示では、金属リサイクル、レアメタル回収、カーボンナノチューブ、多孔質繊維など、さまざまな高機能材料の展示が並んでいた。

 印象的だったのは、素材や技術の革新性だけではなく、実際にどこで使われ、どう量産され、どの程度コストを下げられるのかまで踏み込んだ説明が増えていたことだ。本記事では、「研究開発」から一歩進んだ、“使われるフェーズ”に入りつつある材料技術に注目する。

石灰石の次は「回収したCO2」へ。TBMが狙う次の量産段階

 石灰石を主原料とする新素材「LIMEX」で知られる株式会社TBMは、回収したCO2を活用したカーボンリサイクル素材を展示していた(参照)。

回収したCO2から作成した炭酸カルシウム(左)と、炭酸カルシウムを樹脂と混ぜ合わせたペレット状の新素材(右)

 従来のLIMEXは、天然の石灰石を主原料に、紙やプラスチックの代替素材として名刺や包装材、販促物などに活用されてきた。回収したCO2とカルシウム廃棄物を化学反応させて炭酸カルシウムを生成し、それを樹脂と混ぜ合わせて建材などの素材として活用する。 

CO2含有量17%の内装タイル

CO2含有量33%のフローリング材

 展示ブースには、CO2由来の炭酸カルシウムを使用した建材サンプルが並び、実際に触ることができた。今回の「SusHi Tech Global l STAGE」の床材にも、同社のフローリング材が採用されていた。

SusHi Tech Global STAGEの床材に採用

 なぜ建材なのかを質問したところ、「紙容器などは使用後すぐに焼却されるケースも多いが、建材であれば長期間使用されるため、固定化した炭素を長く保持できる」とのこと。

 株式会社タカショーと共同開発した木調樹脂製ボード「モクプラボードECO」は2025年9月に販売を開始。現在は中国工場に加え、ベトナムでも新工場建設を進めており、量産体制の拡大も進めている。

 新素材の開発だけでなく、「どこで使うと環境価値が最大化されるか」まで含めて設計し、製品化までを一気通貫で手がけているのが従来の素材開発とは異なる視点だ。

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レアメタル回収からPFAS処理へ広がる用途

 株式会社エマルションフローテクノロジーズは、日本原子力研究開発機構発のスタートアップ。独自の「エマルションフロー」技術を活用し、レアメタル回収や有害物質除去を進めている。

 従来のレアメタル抽出では、「ミキサーセトラ」と呼ばれる大型設備が使われてきた。金属を抽出するために、混合と分離を繰り返す必要があり、設備は大きく、時間もコストもかかる。一方、同社の技術は、液体を混ぜながら迅速に分離できるため、装置サイズを従来比で4分の1〜10分の1まで小型化できるという。

 例えば、リチウムイオン電池を粉砕した「ブラックマス」を溶液化し、コバルトやニッケルなど目的の元素ごとに抽出剤を変えることで、必要なレアメタルだけを効率的に回収する仕組みだ。

エマルションフローテクノロジーズは、ブラックマスからニッケル、コバルト、リチウムを個別に分離・回収する技術を紹介

 この技術は、現在急速に需要が高まっているPFAS(有機フッ素化合物)対策にも広がっている。同社は2026年4月、茨城県の本社敷地内で500リットル規模のPFAS除去装置の稼働を開始した。自治体だけでなく、自動車メーカーや廃棄物処理企業などとも実証を進めているという。

 レアメタル回収では栗田工業株式会社、第一稀元素化学工業株式会社と連携。バッテリーリサイクル分野では、出資元でもある本田技研工業株式会社と長期的な実証を続けている。

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 今回の展示では、新素材の性能や技術そのものよりも、既存製品への置き換え、製造工程への組み込み、量産体制の構築、導入企業との実証といった、新素材の実装工程が具体的な形で見え始めていた。素材スタートアップの競争軸は、性能の高さだけでなく、「採用されるところまで設計できるか」へと移りつつあるようだ。

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