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「紙は減ったのにデータ爆増」新たな資源問題と戦う「ホログラフィックメモリー」とは

特集
未来を変える科学技術を追え!大学発の地味推しテック

 最近、郵便ポストの中がスカスカだ。チラシも請求書も電子化されて、紙の手紙を受け取る機会が激減した。環境にも優しいし、部屋も散らからず、ペーパーレス万歳だ。一方でメールやチャットの通知が鳴り止まず、結局、情報量そのものは爆増してる。

 実際、世界中のデータ量はとんでもない勢いで増え続けており、2030年には1YB(ヨッタバイト)に達すると予測されている。「ヨッタバイトって何?」って感じだが、要は想像を絶する量。データは物理的にかさばらないように見えるが、実際はクラウドも電気を使うし、データセンターはどんどん建設されている。今や資源の問題は「紙」じゃなく「データ」の話になっているのだ。

 でも、ちゃんと世界中の研究者たちはこの「データどうすんのよ問題」に本気で取り組んでおり、データ圧縮技術やストレージの高密度化、省エネ化といった研究開発が進行中だ。そのうち有望な技術のストレージ技術のひとつが「ホログラフィックメモリー」だ。日本では東京理科大発のスタートアップ、株式会社HDASなどが研究開発に取り組んでいる。

 「ホログラフィックメモリー」は、ざっくり言うと「光を使って立体的にデータを保存する」技術。通常のハードディスクやSSDと比べても圧倒的な高密度・高スピードを誇る10Gbps超の転送性能があり、バックアップ専用の“書いたら消せない”ライトワンス型だ。

レーザー光をビームスプリッター(Beam Splitter)で「物体ビーム(Object Beam)」と「参照ビーム(Reference Beam)」に分割→物体ビームは空間光変調器(Spatial Light Modulator)を通過してデジタル情報を持つ光パターンに変換→この物体ビームと参照ビームがホログラフィック記録媒体(Holographic Storage Medium)内で干渉し、その干渉パターンがホログラムとして3次元的に記録される【図は編集部】

 DVDやBlue-rayなど従来の光ディスクは表面をなぞるように記録していたのに対し、ホログラフィックメモリーは3次元で記録するため、Blu-rayが50GB程度なのに対して、1TB以上の記録が可能とされている。さらに、Blu-rayは湿度や温度変化に弱く、長期保存に向かなかったが、ホログラフィックメモリーは物理的な劣化に強く、地震や水害などにも耐えられるという。当然、保管中はエネルギーを使わないので、長期保存にもってこいだ。

 とはいえ、データを永遠に保存し続けるわけにはいかない。いつかは「情報の断捨離」が必要になる。最近は「このデータは何年間保持して削除するか?」というルールを法律で決める国も増えてきており、近いうちにAIが自動でいらないデータを見極めてくれるようになるだろう。さらに、量子コンピューターの時代になれば、そもそもの保存の仕組み自体もガラッと変わるかもしれない。と未来に期待しつつ、とりあえず今日は、クラウドのゴミ箱を空にすることから始めようかな、と思った。

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