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「生きて免疫細胞まで届く」ビフィズス菌の飲むがんワクチン

特集
未来を変える科学技術を追え!大学発の地味推しテック

なぜワクチンは注射一択だったのか

 「生きて腸に届く」といったコマーシャルでおなじみのビフィズス菌。実際に、ビフィズス菌の中には酸に強く、胃酸や胆汁でも分解されずに腸まで届く種類がある。そもそも人間の体はよくできていて、口から入る普通のばい菌(細菌やウイルスなど)のほとんどは、唾液や胃液、胆汁で分解されてしまう。

 だからこそ、薬やワクチンも同じ問題にぶつかる。成分をそのまま飲んでも、免疫細胞に届く前に壊れてしまうため、ワクチンは注射一択だった。

 その前提をひっくり返すのが、神戸大学発の株式会社イムノロックだ。ビフィズス菌そのものを「運び屋」として使い、口から摂取するだけで免疫を動かすワクチンプラットフォームを開発している。

ビフィズス菌が「運び屋」になる

 イムノロックのワクチンプラットフォームは、ビフィズス菌の表面に、がんの目印となるタンパク質(抗原)をくっつけて、「がんの特徴を運ぶ存在」にする技術だ。

 腸は単なる消化器官ではなく、体の中でも最大級の“免疫の拠点”でもある。ここに運び屋のビフィズス菌が届くと、まず免疫の司令役の細胞がそれを取り込む。すると、「この目印のやつが敵だ」と情報が共有され、がん細胞を破壊するキラーT細胞が増え始める。

 いわば、腸の中で“指名手配書”が配られるようなものだ。そして、このキラーT細胞は血液に乗って全身を巡り、同じ目印を持つがん細胞をピンポイントで攻撃する。

ビフィズス菌の細胞壁に独自技術(GLBP)で抗原タンパクを貼り付ける

注射より飲むお薬のほうがいい

 この仕組みのメリットは、とにかく「飲める」ことだ。注射ではないので、通院の負担や痛みが減る。継続的に投与しやすく、患者の心理的なハードルも下がる。

 また、菌を培養して作るため、従来のバイオ医薬品に比べてコストを抑えられる可能性もある。さらに、ビフィズス菌の表面につける目印(抗原)を変えれば、別のがんや感染症にも展開できるので汎用性も高い。

すでに人間での試験が進んでいる

 いまイムノロックが開発しているのは、「B440」と呼ばれる“飲む”がん治療ワクチンだ。ワクチンというと、病気を防ぐものというイメージが強いが、B440は、免疫の力でがんを攻撃させる“治療用”のワクチンなので、すでにがんを発症した患者に使われる。

 現在は、転移したがんなど、治療が難しいケースを対象に開発が進められている。すでに人間での試験も始まっており、初期のテストでは、安全性が確認されただけでなく、一部の患者では免疫が反応している兆しや、「がんが進まない期間(無増悪生存期間)」が延びる結果も報告されている。うまくいけば、世界で初めての「飲めるがん免疫療法薬」になる可能性もある。

 「自己治癒力を高める」というと抽象的だが、免疫を鍛えて、がんを探して攻撃させると考えると、ビフィズス菌のイメージがちょっと変わりそうだ。

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