似て非なる2台の違いを検証する
この春、日産と三菱自動車から2台の軽自動車EVが登場しました。日産「サクラ」と、三菱自動車「eKクロスEV」です。5月20日に発表され、6月16日より販売開始されています。
ご存知の方も多いように、日産と三菱自動車はアライアンスを組む、いわばグループ企業です。そのため軽自動車は、両社の子会社であるNMKVが開発します。現在、発売中のガソリン・エンジン車である日産「デイズ」や三菱自動車「eKクロス」は、NMKVの手によるもの。そして、新しい「サクラ」と「eKクロスEV」も同じくNMKVの開発。2台の新型モデルはEVですが、プラットフォームは「デイズ」「eKクロス」と同じものを使っています。
つまり、日産「サクラ」と三菱自動車「eKクロスEV」の中身は変わりません。ただし、別会社から発売するということで、価格や装備は別。ちなみに、公正な販売のため、発売前まで日産と三菱自動車は、互いの価格などを知らされずに開発が進行したといいます。
特殊な作りのため派生モデルは期待薄
では、内容的に同じ部分となるのは、何でしょうか。
まず、パッケージングやパワートレインなどのクルマの基本となる部分は、2台とも同じです。背の高いワゴン・タイプの4ドア・ボディーに、最高出力47kW(63馬力)・最大トルク195Nmのモーターを前輪に配置。駆動用に20kWhのリチウムイオン電池を床下に搭載します。エンジン車と同じプラットフォームに電池を載せましたが、室内空間を減らてはいません。EV化による使い勝手の低下がないのは、大きなメリットです。1回の充電での最高航続距離は180km(WLTCモード)となります。
ただし、室内空間を削らずに搭載できる電池の量は、現在の20kWhがマックスだとか。つまり、後輪にモーターを積んだ4WDや、電池容量を増やした高性能版は難しいそうです。さらに両側スライドドアのハイトワゴンも、「重すぎて難しい」とか。派生モデルの登場は期待できそうにありませんね。
なお、リチウム電池は、日産「リーフ」と同じものが採用されました。これは朗報です。この「リーフ」に使われた電池は、レトルトカレーのようなパウチ型をしています。過去に世界市場で50万台以上も「リーフ」を発売しながら、電池火災を一件も起こしていないという、素晴らしい安全性能を誇ります。リチウムイオン電池は燃え出すと、ちょっとやそっとでは消えませんから、「過去、一度も燃えてない」という実績は、なによりも大きな価値と言えます。
2台は走りも同等に良かった
基本部分が同じというだけでなく、2台は「走り味」という点でも同じでした。別々の日程で開催された日産と三菱自動車の試乗会に参加してみましたが、走った印象は変わりませんでした。結論から先に言えば、「走りはとても良かった」のです。
まず良かったのは、パワフルだったこと。モーターのトルクが、エンジン車の2倍ほどもありますから、端的に速く走ることができます。そこで感心したのは、パワーの出し方です。非常にスムーズで上品。力任せに車体が暴れるような、乱暴さがありません。アクセルひとつの操作で、街中の加減速をほぼカバーできる「eペダル」も、ギクシャクしないように巧みに調整されていました。ただし、操作に対して微妙にタイムラグがあったり、最後の最後にクルマを停止できないなどの特徴があります。最初はとまどう人もいるはず。慣れが必要でしょう。
次に良いのは静かなこと。エンジンがないのだから静かなのは当然ですが、タイヤなどのロードノイズも上手に隠してあります。
そして、最後に良かったのはハンドリングです。車体の背は高いのですが、重い電池が床下にあるので重心が低く、安定感があります。キビキビというよりも、素直で穏やかな動きを見せて、安心感や信頼感を得られます。ファミリーカーとして正しい特性だと思いました。
「走り」という面だけ言えば、確実にエンジン車を上回ります。日産は「サクラ」を“軽自動車のフラッグシップ”として売り出したいと言います。それも納得できる実力が「サクラ」と「eKクロスEV」には備わっていると思います。
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります
この連載の記事
- 第677回
自動車
「ついに911、お前もか…」伝統の変化を嘆く前に乗るべき、約2000万円の超ピュアな「カレラT」 - 第676回
自動車
メーカーチューンの理想形! 2L化した特別ロードスター「12R」が魅せる至高の人馬一体 - 第675回
自動車
街乗りは不便でも悪路走破性は最強! ファミリーカー目線で斬る「ジムニー ノマド」のリアルな実力 - 第674回
自動車
軽自動車なのにフラッグシップ級の充実度! 三菱・新型デリカミニの最新コネクテッド機能を徹底検証 - 第673回
自動車
【予算30万円台】車中泊もこなす神コスパ! 日産「ウイングロード」の中古を推したい3つの理由 - 第672回
自動車
さらばA110。プロが自腹買いする名車。最後の過激な限定車「アルピーヌ A110 R 70」の魔力 - 第671回
自動車
15年前のクルマと侮るなかれ! 燃費22.5km/Lの実力派、2代目ソリオを再評価する - 第670回
自動車
e-4ORCEでついに完成形へ! 35周年の日産のミニバン「セレナ」が選ばれ続ける理由 - 第669回
自動車
椅子が外れて広大な荷室に!? ルノー「グランカングー」は国産ミニバンとココが違う - 第668回
自動車
「NSXでキャンプ」は実在した!? テールゲートに荷物を詰め込むスーパーカー・アウトドアの衝撃
この記事の編集者は以下の記事もオススメしています
自動車
日産「サクラ」がなぜ日本で最も売れているEVかがわかる5つの良いところビジネス
世界の普通の人はチャットGPTをどう使ってる?/EV電池火災への対処法自動車
日産の軽自動車「DAYZ」に2週間乗ってわかった中古がオススメな5つの理由自動車
日産のEV3兄弟「サクラ」と「リーフ」と「アリア」を乗り比べてみたビジネス
グーグルはなぜAIの「数学」能力を競うのか?/BYDが海運に進出する理由自動車
三菱「eKクロスEV」と日産「サクラ」の違いを2週間乗ってじっくり検証自動車
EV購入は車両だけにあらず! 日産サクラが欲しいアイドルが購入時の疑問を解決トピックス
DMM、EV充電サービス参入。事業者向けに「0円プラン」「売電シェアプラン」を提供自動車
やったぜ、日産! サッカーとSUPER GTを制した記念に本社で3王者が勢揃い自動車
都内の狭い道も上り坂も快適に走れる日産「SAKURA」は軽とEVのいいとこ取り!自動車
「日産サクラ」と「ブルーボトルコーヒー」が、東京ドイツ村でサステナブルな移動型店舗を期間限定オープン自動車
実質189万円の軽EV「eKクロスEV」は電気自動車デビューに最適の1台自動車
自動車の未来を読み取れる「人とくるまのテクノロジー展」レポート自動車
あのクルマに乗りたい! 話題のクルマ試乗レポ










