あのクルマに乗りたい! 話題のクルマ試乗レポ第46回

日産の新型SUV「キックス」に乗って見えた、良いとこ・悪いとこ

文●鈴木ケンイチ 編集●ASCII

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絶不調の日産が日本市場に10年ぶりに投入した新型車

 日産の新型コンパクトSUVである「キックス」。2020年6月24日より発売開始となった「キックス」は、日産にとって10年ぶりとなる、まったくの新型車だ。逆に言えば、過去10年間は、新規モデルなし、過去のモデルだけで商売を維持していたのだ。それはそれですごいと言えるだろう。ところが、2018年11月に当時CEOであったカルロス・ゴーン氏が逮捕された後、日産は坂を転げ落ちるように経営を悪化させ、2020年春に発表された決算では6700億円もの赤字を報告。そんな絶不調の中で日本に導入されたのが新型「キックス」であった。

日産「キックス」

 日産にとっては、まさに背水の陣。ぜひとも「キックス」にはヒットしてほしいものだろう。ちなみに、日産のコンパクトSUVといえば、これまで「ジューク」がその役割をはたしてきた。しかし、必勝を期するために日産は「すでに世界各国でヒットの実勢があった」「ジュークよりも荷室が広くて実用性が高い」という理由で「ジューク」の代わりに「キックス」を導入したという。

 実績があるというのはどういうことか。「キックス」の世界デビューは2016年のブラジル。その後、「キックス」は中南米や中国でも発売され、それぞれの国でヒットモデルとなった。満を持して日本への導入となったのだ。ちなみに日本で発売する「キックス」はタイ生産のもの。内容は日本向けの特別なものとなっている。

【良いとこ】見栄えが良く、最新技術を満載していること

 2016年にデビューしたとはいえ、日産は日本市場に導入するということで「キックス」に入念な化粧を施した。それが日産の誇る最先端技術の惜しみない投入だ。パワートレインは最高出力95kW(129馬力)を誇るシリーズ・ハイブリッドの「e-POWER」を採用する。普通のエンジン車はなく、すべて「e-POWER」だ。このシステムの特徴は、駆動をすべてモーターに任せ、1.2リッターのガソリン・エンジンは発電に専念すること。発進の力強さから、速度上昇のスムーズさはEVとまったく同じ。

 しかも回生ブレーキを存分に使うことで、いわゆる「ワンペダル」走行が可能となる。アクセルをオフするだけで、強いブレーキがかかり、うまく使えば走行のほとんどをアクセルペダルのみで操作できる。慣れてしまえば、本当に運転がラクになるのだ。最大トルクは260Nmもあるから、1クラス上の動力性能を備えている。さらに日産は「キックス」に搭載するためにシステムを進化させており、発電のためのエンジン始動を極力減らしている。街中や高速走行では、エンジンの存在をほとんど忘れてしまうほど静かだ。最新のパワートレインなだけに、快適で、しかも気持ち良い。高速中心の試乗では19㎞/lほどとなった。

 また、先進運転支援システムである「プロパイロット」の搭載も「キックス」の魅力のひとつ。自動ブレーキだけでなく、先行車を追従する機能やステアリングをアシストする機能など、安全と疲労軽減を実現する便利な機能となるが、過去に数多くの車種にプロパイロットを採用してきた日産だけに、その機能の熟成も十分。使いやすく、しかも安心感が高いのには感心させられた。

 良いとこの最後は、見栄えと質感が良いこと。実際のサイズはコンパクトなのだが、見た目的には大きく感じるし、室内の質感も高い。そしてシートヒーターなど、細かな装備も非常に充実している。275万9000円~というコンパクトSUVとしては強気の価格設定も納得できる。

【悪いとこ】ラインナップがFFのみ、シャシーの古さ

 では、「キックス」は100点満点の最高のクルマなのか? といえば、そうでもない。やはり弱点はある。最大の弱点はFFのみというラインナップの少なさだ。冬になると雪が降る地域では、やはり4WDが欲しいもの。また、「e-POWER」のみというパワートレインの割り切りも良いけれど、その分、200万円以下という廉価なエントリーモデルも存在しない。これもライバルと比較されると辛いところだろう。

 そして最大の弱点はプラットフォームの古さだ。「キックス」のワールドデビューは、すでに4年も前。また、最近の日本のメーカーは相次いでプラットフォームを新世代のモノに世代交代させている。そうした意味で、「キックス」はライバルに対して不利といえる。そのため乗り心地やステアリングのセンター付近の反応などに不満を感じる。

 ミラー根元周辺の視界の悪さも一つ世代前という印象を強めてしまう。パワートレインや運転支援などは感心するほどの高いクオリティがあるだけ、よけいにシャシー系が気になるのだ。

【まとめ】悪いとこを補ってあまりある良いとこ
崖っぷちの日産を救うSUVとなるか!?

 とはいえ、クルマ全体としての仕立ては非常に気合の入ったものと言えるだろう。日産の最新技術の粋を集めて、「小さいけれど、ちょっと良いSUV」に仕立てあげられているのだ。受注は上々らしいので、今年の後半の販売ランキングは、どれだけ「キックス」が売れるのかに注目したい。

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筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 

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