往年の名車シリーズ
ロータリーは死なず! マツダ「RX-8 SPIRIT R」は今でも心トキメクスポーツカーだった!
2020年09月12日 15時00分更新
マツダのプライドの象徴
新世代ロータリー「RENESIS」搭載
フロントボンネットを開けると、RENESIS(レネシス)と名付けられた新世代(当時)のロータリーエンジンが姿を現す。従来のそれとは大きく異なるのは、ローターハウジングにあった排気ポートをサイドハウジングに移し、サイド排気/サイド吸気のレイアウトへと変更されたこと。これにより従来のロータリーエンジンと比べ、高出力化と低燃費化を実現し、自然吸気ながら最高出力173kW(235ps)/8200rpm、最大トルク216Nm(22kgf・m)/5500rpmを達成した。税制区分でいえばRX-8は2000ccに属するので、NAでリッター100馬力を達成している。
これをフロントアクスルよりエンジンルーム後方に縦位置でマウント。重心が限りなく車体中心に近い、いわゆるフロントミッドシップレイアウトを採り、さらにロータリーゆえに低重心。後輪駆動と相まって「誰もが楽しめるスポーツカー」という性格を強めた。
カバーを外さずとも、エンジンオイル量の確認ができる小窓が用意されている。なお外気温によって0W20、5W30、10W30の粘度のものを1万キロもしくは1年ごとの交換が推奨している。必要な油量はオイル交換のみで3.3リットル、エレメント交換含めると3.5リットルである
最後の特別仕様車として2011年11月に発売された「SPIRIT R」は、レカロ社製セミバケットシートやビルシュタイン製ダンパー、19インチ鍛造アルミ&タイヤや大径ブレーキ、本革巻きシフトノブ(赤ステッチ入り)などを装備した。当初1000台の販売が予定されたが、予定以上の受注を受け、更に1000台が追加生産された。当時の価格は325万円。バーゲンプライスに感じるのは、マツダからロータリーファンへの感謝の想いが込められていたのだろう。
絶対に楽しいヤツだとすぐにわかる気持ちよさ
エンジンを回せば、サイドポート特有の吸気音に胸がときめく。ストレスなく9000回転まで吹き上がるエンジンは最高の一言であり、天使の歌声だ。ターボではないから、リニアな感じがなおさら気持ちよい。よくRX-8は低速トルクが細いと言われるが、街乗りで不足と感じることはない。よほどの急坂でない限り、坂道発進だって苦ではないだろう。
ただ、試乗車のクラッチが思いのほかストロークが長く、それでいて奥でつながるため、慣れるまで何度かエンストしたことを正直に告白する。もちろん最近のMT車にありがちな「オートブリッピング」をはじめとするアシスト機能は一切ない。
貴重な車種ということと時間的制約により、ワインディングはおろか、街乗りでさえもわずかしか走行しなかったが、それでもクルマの素性の良さ、重心の低さはすぐに理解できた。ビルシュタインの脚は思いのほかしなやかで、このクルマとのマッチングの良さを感じさせるもの。ワインディングをかっ飛ばさなくても、街乗りでもロータリーの良さと、車両そのものの素性の良さが五感に伝わってくる。一言で言えば「これは絶対に楽しいヤツ」で、ありていに言えば、RX-8は他のクルマにはない魅力に溢れている。もし手元にこのクルマがあったら、生涯手放すことはないだろう。
この乗り味に近しいクルマを言うなら、ND型ロードスターなのだろうか? 断じて否なのだが、同じ血が流れているように思った。この気持ちよさがマツダスポーツなのだろう。ND型は実に完成度の高い1台だが、4人乗れるという実用面や、何より心情的にRX-8、ロータリーエンジンに惹かれるところはある。取材後、中古車サイトを巡回したことは言うまでもない。
【まとめ】今のマツダだからできる
オトナのスポーツカーを出してほしい
心情的に惹かれ中古車サイトを見ていながら言うのも何だが、一方で余程の覚悟がない限り、今からRX-8を買い求めるのはオススメできないとも思った。それはメンテナンスの問題。マツダは今でもパーツがあるというが、誕生してから17年、最終型でも製造完了して8年が経過したクルマだ。状態のよい中古車を買ったとしても、これから発生するメンテナンス費、そして新車購入から13年目で自動車重量税が上がるといったランニングコストを考えてしまうと、素直にND型ロードスターにして、あちらこちら走り回る方が現実的だ。
また、「マツダから生活に密着できるスポーツカーがあってもよいのでは?」とも思った。現在、マツダのウェブページを見ると、スポーツを打ち出しているのはオープンカーのロードスターと、Cセグメントのスポーツハッチであるマツダ3の2車種のみ。今のマツダはSUVを主力とする自動車メーカーだ。それは経営的には間違いないこと。だがメーカーのイメージを背負うスポーツカーはあってほしい。クルマ好きの誰もが「RX-VISION」(コンセプトカー)のようなピュアスポーツ車種を望むだろうが、それは2015年の東京モーターショー以来、音沙汰がないことから難しいことなのだろう。ならばRX-8のような、オトナ4人がしっかり乗れるパッケージのスポーツカーを出してほしいと願う。むしろそれが今のマツダらしいようにすら思える。
もちろん、搭載するユニットはロータリーエンジンを熱望したい。ロータリーエンジンは、レンジエクステンダーとして活用するという話はあるけれど、折角の「レネシス」が1代で終わるのはもったいない。モーターを組み合わせたシリーズハイブリッドのスポーツユニットが出たら、きっと誰もが心から涙を流し、喝采で迎え入れることだろう。
スポーツカーは売れ筋の車種ではないことはわかっているが、スポーツカー不遇ともいえる時代にRX-8を送り出したマツダのこと。今ならもっと素敵な、オトナのスポーツカーができるハズ。NDロードスターは確かに素晴らしい1台だが、家族がいると選ぶことができない。誰でもマツダスポーツが楽しめる1台を。これから始まるマツダの100年史に、そのような1台が刻まれることを願わずにはいられない。
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