このページの本文へ

夢の技術! 自動運転の世界 第12回

自動運転の基礎 その10

トヨタの自動運転技術は「ショーファー」と「ガーディアン」

2019年09月10日 09時00分更新

文● 鈴木ケンイチ 編集●ASCII編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

トヨタが目指す自動運転の未来

 日本の自動車メーカーの中でも、特に自動運転技術の開発に熱心なのがトヨタだ。2018年1月に、モビリティサービス(MaaS)専用次世代電気自動車(EV)となる「e-Palette Concept(eパレット・コンセプト)」を発表。東京オリンピックが開催される東京で、2020年には街を走らせると喧伝した。また、ソフトバンクと共同で、モビリティサービス(MaaS)を司る「モネ・テクノロジーズ(通称:MONET)」を立ち上げるなど、単に自動でクルマを走らせるだけでなく、ビジネスとして成立させる動きも熱心だ。

 そんなトヨタの自動運転技術のコンセプトの特徴は「ショーファー(自動運転)」と「ガーディアン(高度安全運転支援)」という2つのモードを用意すること。

 「ショーファー(自動運転)」とは、文字通り、一般的なイメージの「自動運転」技術そのもので、ドライバーに代わって運転操作をするモード。ただし、あくまでもドライバーの運転タスクを代行することを目指す技術で、完成した自動運転を意味するわけではない。「ショーファー(自動運転)」の能力が低ければ、ドライバーによる監視が必要になる。レベル2やレベル3の「ショーファー(自動運転)」もあり得るということ。逆に能力が高まれば、レベル4や5の自動運転も可能となる。

 一方の「ガーディアン(高度安全運転支援)」は、“支援”が主眼だ。そのため運転操作の主体はドライバーとなる。ドライバーの運転をシステムが見守り、支援が必要なときだけ働く。「ガーディアン(高度安全運転支援)」の能力が高まるほど、さまざまなトラブルから、クルマと人を守ることができる。衝突被害軽減自動ブレーキやレーンディパーチャーアラート(車線はみ出し警告)など、すでに実用化されている機能も、それらに該当する。さらに能力が高めれば、後方からの追突の危険を検知して、自動で避けるような動きも可能になるかもしれないという。

 この「ショーファー(自動運転)」と「ガーディアン(高度安全運転支援)」は、どちらもハードウェアとソフトウェアを共有することがあるのもポイントだ。働きかけ方は異なるが、どちらも同じ自動運転技術を基礎としている。

 そして、トヨタの自動運転技術のユニークな点は、「ガーディアン(高度安全運転支援)」を他のシステムと一緒に使うことを考えているところ。たとえば、Uber社との案件だ。昨年となる2018年8月にトヨタはUber社との協業を発表した。そこで、Uber社の自動運転キットとトヨタの「ガーディアン(高度安全運転支援)」システムを組み合わせることを発表したのだ。基本となる車両は、トヨタ車で、そこに「ガーディアン(高度安全運転支援)」を標準装備とする。これにより、万一、Uber社の自動運転システムがトラブルを起こしたときに、「ガーディアン(高度安全運転支援)」がセーフティーネットとして働き、より安全性を高めることになる。この方式は、「e-Palette(eパレット)」にも採用され、ユーザーはトヨタ以外の自動運転システムを利用することが可能だという。

 さらにトヨタは、レベル2~3の量産車に自動運転システムを追加することで、レベル4のモビリティサービス(MaaS)車が開発されるケースも想定しており、そこにも車両側に「ガーディアン(高度安全運転支援)」を搭載するという。ここで使われる自動運転システムは、トヨタ製とは限らない。そして、自動運転システムと「ガーディアン(高度安全運転支援)」で二重に安全を確保する。

 すべてを自前のシステムだけで賄うのではなく、他社のシステムをも受け入れる余地を残しているのが、トヨタの自動運転技術の特徴だ。自動運転の技術は、今まさに世界中で開発競争が繰り広げられている。将来的に、自動運転システムがどのように普及するのかは、まだ不明だ。どこか一つのサプライヤーが独占するかもしれないし、逆にさまざまなシステムが使われるようになるか、現在のところは、誰にもわからない。そんな中で、他社のシステムを受け入れる余地を残しつつ、安全を確保しようというトヨタの姿勢は、柔軟でクレバーなものと言えるだろう。

筆者紹介:鈴木ケンイチ


 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。



カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

ASCII.jpメール アキバマガジン

クルマ情報byASCII

ピックアップ