世界最高峰のスポーツカーを目指した意欲的な内容
5月17日、トヨタは新型GRスープラの発売を開始した。なんと、日本での発売は17年ぶり。旧来のスープラのファンだけでなく、スポーツカー・ファン全体としても注目のモデルだ。その新型の特徴をざっと挙げると、次のようになる。
- トヨタの「GR」ブランドの最初のグローバル戦略車
- BMWとトヨタの共同開発車
- 直列6気筒エンジンを搭載している
- ホイールベースが非常に短い
新型モデルは、名称に“GR”とあるように、トヨタのスポーツカーブランド「GR」のクルマとして世界で発売されている。トヨタは、これまでGRの名前を使って、さまざまなモータースポーツ・カテゴリーに参戦してきた。そのイメージを商品に落とし込むのが、GRブランドの量産車であり、その先鞭となるのがGRスープラと言える。
そして、トヨタは「GRスープラは、GRブランドの最初のモデル」という。つまりは、GRスープラに続く、2台目、3台目のモデルが登場することを示唆する。これからも、トヨタの量産スポーツカーが定期的にデビューするというのは、スポーツカー・ファンとしてはうれしい予告だ。
BMWとの提携は、非常に驚くべきニュースであった。ただし、地球環境を守るために燃費規制の強化はまったなし。スポーツカーは、どんどんと作りづらく、売りにくくなる。そうした中、トヨタ一社でスポーツカーを作るのは、トヨタという企業文化では難しかったのだろう。トヨタ86/スバルBRZのような体制で、GRスープラが生まれることになった。それが、トヨタGRスープラとBMW Z4だ。
ただし、ほとんどの部品を共有化した86/BRZと違い、GRスープラとZ4は、内外装の部品の9割が異なっているという。エンジンやプラットフォームという中身は共有するが、デザインや走り味のチューニングは干渉なく、それぞれ独自に開発したという。ちなみに生産は、オーストリアのマグナ・シュタイヤー社が受け持つ。これまでメルセデス・ベンツのGクラスなど、数多くのメーカーの生産委託をこなしてきた会社だ。そのためGRスープラは輸入車となる。
BMWとトヨタの直列6気筒エンジンへのこだわり
新型スポーツカーの開発にBMWと組んだということで、エンジンには当然のように直列6気筒が採用された。BMWは他と違って、直列6気筒エンジンを作り続けてきたほとんど唯一のメーカーだ。また、「スープラと言えば、直列6気筒エンジン!」というファンの声も根強かったという。とはいえ、GRスープラには4気筒エンジンモデルも用意されている。わざわざ、用意したということは、4気筒にも存在意義があるということだ。
そして、最後の特徴が“超ショートホイールベース”であること。なんと、GRスープラのホイールベースは、トヨタ86より10cmも短い。トレッドは、グレードによって5~9㎝の違いはあるものの、当然、GRスープラの方が大きい。そして、ホイールベースとトレッドの比率が、GRスープラほどワイド&ショートになっているクルマは、ほとんど存在しない。ホイールベースを短くすれば、俊敏に動けるようになるが、一方で高速走行時の安定性が悪化するし、コーナリングもナーバスになる。そのため、極端なショートホイールベースは避けられていたのだ。
しかし、GRスープラではあえて超ショートホイールベースが採用された。その最大の理由は“ライバルに勝るため”であった。そのライバルとは、ポルシェのボクスター/ケイマン。ミッドサイズのスポーツカーとしては世界最高峰の評価と、セールスという確かな実績を積んだモデルだ。その巨人に立ち向かうために、超ショートホイールベースで戦おうというわけだ。
ただ、トヨタもBMWもバカではない。安定性を放棄したのではなく、最新の技術で克服したのだ。それがアクティブディファレンシャルの採用だ。後輪のデフに仕込んだ多板クラッチを電子制御することで、後輪左右のロック率を0~100の範囲で連続的、かつ瞬時に変化させる。もちろん、横滑り防止のVSCとも連携する。これにより、高速走行時やブレーキング時の安定性、加速時のトラクション性の良さ、きついコーナーでの回頭性の良さといった、本来は相反する特性を両立させる。
基本特性を俊敏に設定し、電子制御で安定させるという手法だ。実際に机上の空論ではないことを確かめるため、旧型BMWのボディーを切った貼ったして、実際にGRスープラと同様のサイズ/重心の開発車を製作し、サーキットなどを走らせたという。
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