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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第37回

超マニアックなCD屋「メカノ」はなぜ潰れないのか

2010年10月16日 12時00分更新

文● 四本淑三

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実は開店以来1枚も売れていないCDがある

―― そういえば、このお店は若いお客さんが多いですよね? しかも女の子が。

中野 場所柄多いですね。たとえばFloppyを好きなお客さんは、フリフリの可愛い格好で来るんだけど、メンバーがP-MODELを好きだったりするんで、こっちの方に流れてくるんです。もちろん逆のケースもあります。でも、いまいち混じらないのが邦楽と洋楽ですね。

―― 洋楽は人気がないですよね、最近。

中野 うちには面白い時期の洋楽を置いているはずなんですけど、情報が行き届いていないんですよね。そこのイアン・ノースなんて、いいテクノバンドで、30年越しの初CD化なんですけど、どこにもニュースになってないんですよ。

―― じゃ、宣伝しときましょうか。

「ちょいニヒルなヴォーカルとメロディ、シンプルなシンセ・リフ、宅録っぽいギター&リズムマシンの80年のB級エレポップ」らしい

中野 たとえば曲なんて誰がかけても一緒なんですけど、上手いDJは、雰囲気を読んで一番盛り上がるようにかけるじゃないですか。僕は、このお店全体でDJをやっているつもりなんですよ。何か知っているバンドがあれば、そこを起点にナビゲートしたいなと。

―― でも、店長になかなか話しかけられないような人も多いんじゃありません?

中野 だからここに、こんなフキダシを。話しかけられたくない人もいるでしょうし。あるいは僕より音楽に詳しい人に、どうですか? なんて言ってもうるさがられるだろうしね。でも、ここにあるものは、聞いてもらえたら何でも答えてあげられますから。どんな音楽が好きかを教えてもらえれば、おすすめのCDも教えてあげられるし。

中野店長が座っている位置の、ちょうど頭の上あたりに「ご質問はお気軽にどうぞ」というフキダシが

―― 昔はそんな風に、レコード店が音楽情報の発信基地の役割を負っていたわけですよね。

中野 POSに流されてしまった大型店は、それを忘れてしまったんですね。売れるものだけ売って、売れないものを切ったわけで、それじゃナビゲートできないですよね。売れてないけど、これはいいよ、と言えなくなった。

―― 最近の商売には皆言えることかもしれないですね。

中野 だからAmazonにやられちゃったんですよ。あそこは、ドマイナーなものまで揃えているから。実店舗で売れないものを揃えるのはつらいですから。この店だって、開店以来一枚も売れていないCDがあるんですよ。そういう読み外れはあります。

―― えー、どれどれ?

中野 サーボトロンって言うんだけど。音はDEVOみたいだけど、DEVOほどキレは良くないんです。

店長のコメントによれば「ロボットのコスプレをしたDEVOかポリシックスのようなギターとシンセのNWバンド」らしい

―― あら、そのぼんやりした感じは面白そう。

中野 YouTubeで探すと出てくるんだけど、全世界で500再生くらいしかない。マイナー過ぎてAmazonにもないけど。でも、これが1枚売れたら、また仕入れますよ。

―― ただ、知らない、マイナーな音楽を敬遠する傾向は、若いリスナーにありますよね。

中野 自分がそうだったんですけど、音楽を聴いて驚いていたいんですよ。初めから分かっていて買うのはつまんないですよね。でも知らなければ、こんなに沢山楽しい思いを出来るじゃないですか、ってそう思います。僕の時代はナビゲート役なんかいなくて、無駄なレコード山ほど買いましたけど、そこはお手伝いできますから。ぜひお店にいらしてください。



著者紹介――四本淑三

 1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。

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