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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第386回

デジタル庁がAI基盤を無償公開 行政ITの“常識”は変わるか

2026年05月05日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 デジタル庁が、行政機関向けのAI基盤「源内(GENNAI)」をオープンソースのソフトウェア(OSS)として無償で公開した。

 中央省庁が、自分たちで新しいソフトウェアを開発し、オープンソースとしてソフトを広く一般に利用できるように公開するのは、けっこうレアな出来事だ。しかも、ソースコードが公開されているので、だれでも自由にソフトを書き換えることができて、商用利用もOKという条件だ。

 つまりデジタル庁がつくったソフトを、一般企業や個人が機能を追加したり、改良したりして、県庁や市役所に売り込んでもよいということになる。これまでは、ごく一部の例外を除き、国内のIT企業を公募して、ソフトを開発してもらい、省庁だけが使うという仕組みが長く固定化されてきた。

 デジタル庁はなぜ、こうした思い切った施策に出たのだろうか。

行政の仕事の進め方が変わりそう

 このニュースは、デジタル庁が源内という新しいAIをつくったということではない。つくったのは、あくまでもAIの基盤だ。

 日本で最も普及しているChatGPTで考えてみたい。通常、スマホやPCのブラウザでChatGPTにアクセスするが、この場合、チャットを通じてAIを動かす基盤を使うことになる。たとえば、PDFファイルをアップロードして、テキストを翻訳してもらったり、スライドをつくってもらったりすることができる。これとは別に、GPT-4oやGPT-5といったAIのモデルを選択する。最新のモデルは、出力の精度も高いが、うまく使わないと使用量と料金が跳ね上がるため、ちょっと前のモデルを選ぶこともできる。Claudeの場合、現在はOpusやSonnet、HaikuなどのAIのモデルから選ぶことになる。

 行政機関の仕事では、法令や規則、ガイドラインなど大量の文書を扱っている。たとえば、厚生労働省なら、医療や介護、労働などの分野の文書を大量に扱うことになる。中には、外部には公開できない内部文書も含まれるため、気軽にChatGPTは使えない。AIに文書を読み込ませて、チャットでをすると、行政機関の情報が米国の企業に渡るリスクがある。

 このため、多くの場合、省庁や自治体では、業務ではAIは使わないという運用が続いてきたようだ。源内はまず、こうした状況の改善を目指すものだ。特定の省や市役所、町役場から情報を外部に送信せずに運用することができ、AIとのチャットを通じた情報漏えいのリスクは回避できる。政府はまず、2026年5月から2027年3月の間、国の機関である府省庁で働く職員約18万人を対象に、源内を業務に導入する大規模な実証実験を進める。

 デジタル庁によれば、法令調査や、国会答弁の検索を支援するAIなどがすでに実装されている。どの省庁にどんな補助金があるかについても、AIが調べて回答してくれる。

 実証実験を通じて、デジタル庁は今後、国会での政府の答弁書の作成を支援するAIや、エージェントAIの導入についても準備を進めていくという。エージェントAIは、ユーザーに代わって、AIがPCを操作する。たとえば、AIに対して、「経済産業省の課長補佐と会議をしたいので、日程調整のメールを送って」といった指示をすると、AIがメールのアプリケーションを開いて、メールを下書きしてくれる。エージェントAIまで使うとすれば、行政機関の仕事のあり方は大きく変わるはずだ。

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