
iPhone/iPodのヒットによって生まれた高級イヤホン・ヘッドホン市場。マニアックなユーザー向けの高額商品もリリースされ続け、ついに実売価格にして13万円台という「AKG K3003」のようなイヤホンまで登場した。
もちろんK3003はAKGのハイエンドにふさわしい素晴らしい製品だが、既製品に10万円を出す余裕があるなら、他に考えてみたいものもある。それが須山補聴器のカスタムイヤーモニター「FitEar」(7万8750円~)だ。
イヤーモニターというのは、ステージ用モニターに使うイヤホンのこと。略してイヤモニと言ったりする。放送の現場でも使われているが、我々が普段目にする機会はアリーナクラスのライブステージかも知れない。ヴォーカルやドラマーなどのミュージシャンが、フロアに置いて使うモニタースピーカーの代わりに使っている。
ステージでイヤモニを使うメリットは、まずワイヤレスレシーバーとの組み合わせでステージ上を自由に動けること、そして他の楽器とモニターの音がかぶらないこと。特にカスタム成形のイヤモニは、一般のカナル型イヤホンを圧倒的に超える遮音性能を持っている。そのためステージ上の音を遮断でき、ボリュームを上げなくても適切なバランスで自分の音だけをモニターできるのだ。
須山補聴器は補聴器用レシーバーの製作経験からカスタムイヤーモニターを製作する会社で、国内のミュージシャンにも愛用者は多い※。その中には、以前に我々が取材した女子中学生ドラマー・川口千里さんもいる。また最近ではニコニコ動画ナンバーワンギタリストの[TEST]さんもオーダーしたらしい。
※ FitEar使用者には、ももいろクローバーZのメンバーから、小沢健二、Gackt、柴咲コウ、中川翔子、五木ひろしと様々なタイプのミュージシャンが。(FitEar使用者一覧)
ただそれ以前に、私にはFitEarの成り立ちやイヤモニの開発プロセスに興味があった。国内では先例のない業態で、間違いなく試行錯誤の連続だったはず。その様子は以前から須山補聴器のWebページで公開されていて、実は何年も前から取材のチャンスを狙っていたのである。
銀座にある須山補聴器を訪ねると、まず巨大なアルテックが出迎えてくれた。当日は須山補聴器の須山慶太さんのほか、FitEarの開発アドバイザーでもある、マスタリングエンジニアの原田光晴さんにも同席していただいた。

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