グレー領域に踏み込むということ
── GSVの話から、ほかのIT企業は何を学ぶべきでしょうか?
津田 法律のグレー領域に踏み込むサービスを始めるときには、十分な注意と配慮が必要ということでしょうか。
GSVで問題になっているプライバシーや肖像権などは、ある程度の判例はありますが、明確には決まっていない部分も多い。だからこそグーグルはβサービスとして踏み込んでいったのでしょう。しかし、事前に何のコンセンサスもないまま、ある種の「あと出しじゃんけん」として始めてしまったため、ユーザーを中心に非ネットユーザーまで含めた形で社会的混乱が起きてしまった。
ただ、今回の騒動は一概に悪いことではないとも思うんですよ。この手のサービスが今後、伸びていくのは間違いない話で、ことが大きくなる前にきちんと話し合うためのいいきっかけになったんじゃないでしょうか。
グーグルに批判が集中してGSVが日本で終了しても、ロケーションビューなど同種のサービスは残るわけです。現状でもCGM的にそこかしこの風景がネットに公開されるようなサービスがたくさんあるわけですし、車にこうしたサービスが搭載されるかもしれない。ウィルコムも次世代PHSで基地局にライブカメラを付けて何か社会的インフラにできないか考えています。
そうしたまだ見ぬ新しいサービスを考える上での礎として、多様な視点で議論をしなければならないでしょう。
筆者紹介──津田大介
インターネットやビジネス誌を中心に、幅広いジャンルの記事を執筆するジャーナリスト。音楽配信、ファイル交換ソフト、 CCCDなどのデジタル著作権問題などに造詣が深い。「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」や「インターネット先進ユーザーの会」(MiAU)といった団体の発起人としても知られる。近著に、小寺信良氏との共著 で「CONTENT'S FUTURE」。自身のウェブサイトは「音楽配信メモ」。
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