「問題があったら削除」では済まされない?
── グーグルはGSVにおいて「ユーザーから問題を指摘されたら消す」という対応を取っています。動画共有サービスなどではよくある対応方法ですが、これについてはどう評価されますか?
津田 CGM型のウェブサービスについて言えば、直接「悪いこと」をするのはたいていユーザー側です。少なくとも米国の著作権法上は、「問題があったら削除します」という対応でも、企業は基本的に責任を問われなかった。しかし、今回、GSVの画像を撮影した主体はグーグルですので、同じ文脈では語れないと思います。
単純な削除だけでは対応しきれないことも出てくるでしょう。今後、防犯対策のためにうちの町内会は丸ごと非表示にしてくれないかという要請が来るかもしれない。そうしたケースではどうするのか。
シンポジウムで河村さん(主婦連合会常任委員の河村真紀子さん)も触れていましたが、日本のGSVでは住宅地の細い路地にまで入らなくてもよかったのではないかとも思います。フランスのGSVでは大通りしか映していないのだから、日本でもできないわけではない。細かな部分は、国ごとに変えていかなければならないはずです。
加えて、現状、グーグルは削除依頼の窓口を表向きネットにしか用意していないという問題もあります。GSV専用の電話窓口を作って、周知広報を十分行なうなど、一定の社会的責任は果たすべきでしょう。
── 今回、GSVについてシンポジウムを開催されて、どういった感想を持ちましたか?
津田 まだまだ考えて行かなければならないことが多いですね。最初にも言ったように、3タイプのうちどれが優勢というわけではありません。僕自身は「賛成派に近い容認派」ぐらいのスタンスですが、個別の問題を放置しておけばいいとも思いません。
シンポジウムでは、河村さんの住所録の話が興味深かったです。個人情報保護法の登場によって、昔だったら普通に配っていたクラスの連絡網が作れなくなってしまった。今は親同士がこっそり調べて作っているけど、GSVのようなサービスが出てきてしまうと住所から一発で家の外観まで調べられてしまうので、ますます連絡網が作りにくくなってしまう。
確かに住所情報と家の外観が結びつくと、個人情報的にも別の意味が出てきます。それが一般生活そのものの不便につながっていく可能性もあるわけで、こういうところは今後も十分な議論が必要でしょう。
この連載の記事
-
第36回
トピックス
津田大介が語る、「コルシカ騒動」の論点 -
第35回
トピックス
津田大介が語る、日本版「フェアユース」とは? -
第34回
トピックス
これはひどい? 「薬のネット通販禁止」騒動の顛末 -
第33回
トピックス
どうなる出版? Google ブック検索がもたらす禍福 -
第32回
トピックス
津田大介に聞く「改正著作権法で何が変わる?」 -
第32回
トピックス
なくならないネットの誹謗中傷、どうすればいい? -
第31回
トピックス
テレビ局はなぜ負けた? 津田氏に聞くロクラク事件 -
第30回
トピックス
DRMフリー化は必然──津田氏が語る「iTunes Plus」 -
第29回
トピックス
法律が現実に追いつかない──津田氏、私的録音録画小委を総括 -
第28回
トピックス
「小室哲哉」逮捕で露呈した、著作権の難しさ -
第27回
トピックス
ダウンロード違法化が「延期」していたワケ - この連載の一覧へ