1月27日、知的財産高等裁判所(知材高裁)にて開かれた裁判にて、著作権関連の話題で注目すべき判決が出た。
訴えていたのはNHKと民放9社のテレビ局で、訴えられたのは家電メーカーの日本デジタル家電。日本デジタル家電は、日本のテレビ番組をインターネット経由で海外に配信して見られるHDDレコーダー「ロクラクII」のレンタルサービスを提供していた。このサービスが著作権を侵害しているとして、テレビ局10社は裁判を起こしたのだ。
いわゆる「ロクラク事件」というこの裁判は、一審ではテレビ局側の勝訴だった(判決文PDF)。しかし、今回の知材高裁では逆転して、著作権は侵害していないという判決が出た(判決文PDF)。この裁判は著作権業界にどんな影響を与えるだろうか? ジャーナリストの津田大介氏に話を聞いた。
ロクラク事件
ロクラクIIでは、親機/子機の2台を用意することで、国内のテレビ番組を海外で見られるようになる。親機を国内、子機を海外にそれぞれ設置して、親機で録画した番組をインターネット経由で子機に配信するという仕組みだ。日本デジタル家電は、このロクラクIIの親機/子機をまとめてユーザーにレンタルするというサービスを提供していた。
著作権法では、ユーザーが番組を個人的に使う(私的使用)場合、例外的に録画や録音という「複製」を認めている。テレビ局側は、いくらユーザーがロクラクIIを自分のために使っていたとしても、大本の機器を管理しているのは日本デジタル家電だし、このレンタルで日本デジタル家電は利益を得ている。だから複製権の侵害だ──と主張して裁判に踏み切った。
大きな一歩だ
── まずは率直な感想をお聞かせください。
津田 「サービスの利用態様が明らかに個人の私的複製と変わらないような機器やサービスであれば著作権侵害にはならない」と明確に認めたという意味で大きな判決だと思います。
業者や機器が個人に代わって録画したテレビ番組をネット経由で配信し、ユーザーがどこでも見られるようにするというサービスは、過去に何例も著作権侵害で訴えられてきました。
「録画ネット」などが代表例ですが、そうしたサービスはほとんど運営業者が利用者の私的複製を「必要以上に手伝っている」という理由で、業者が複製をしている主体と認められ、著作権侵害という認定を受けてきたんです。
類似のサービスはほとんどテレビ局から著作権侵害訴訟を起こされ潰されてきたのですが、こうしたサービスに対して初めて「シロ」という判断が下されたのが「まねきTV」事件ですね。
今回の判決も、まねきTVに続く適法認定ということになります。知財問題を専門に扱う知材高裁が続けて適法と認めたことは、ユーザー以上にテレビ局や権利者団体に対して与えたインパクトが大きかったんじゃないでしょうか。
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