ネット時代の著作権法はどうあるべきか──。
ここ2、3年、もめにもめていた著作権法の改正が実施に向かって進んでいる。3月10日、政府は「ダウンロード違法化」などを盛り込んだ著作権法の改正案を閣議決定した(関連記事)。今後、国会を通れば、来年の1月1日から施行される予定だ。
改正された内容で、一般ユーザーがネットを使うにあたって不利益を被ることはあるのだろうか? 文化庁・著作権分科会で、改正著作権法案の話し合いに参加していたジャーナリストの津田大介氏に評価をいただいた。
「やることはやった」という感じ
──「ダウンロード違法化」の話は、ネットで何度か話題になっていました。今度こそ、本当に違法になってしまうのでしょうか?
津田:著作権法改正案は、閣議決定して国会にも改正案が提出されました。自民党も民主党も大枠では認めていますから、不測の事態で政治が混乱するような状況が来ない限り、この改正案は通るでしょうね。
──改正の内容についてはどう評価されますか?
津田:今回、かなり多方面の改正が含まれているので、いい面もあれば懸念を感じるところもあるという感じです。
個人的には「ダウンロード違法化」に反対していたので、それが通ってしまうことには残念な思いがありますが、とはいえ、現段階ではユーザーへの配慮が多く盛り込まれているので、それらが変わらない限り、数年は大きな混乱はないとも思います。
──津田さんは「ダウンロード違法化」について強力に反対していたので、かなり不満を感じているのではと思い込んでいましたが、そうでもないんですか?
津田:元々、僕はネット上の著作権侵害については著作権法を変えることで対処するのではなく、侵害が発見されたときにすぐ落とせるような手続きを簡素化する……つまり、「プロバイダー責任法」周りで実効性のある対処をすべきだという主張をしていました。その点で言えば、今でも反対ですよ。
現時点のダウンロード違法化の改正内容は、あくまで規範的なものでしかありません。数年後、その規範的な基準を見直すということになったときに、その見直し範囲がどれだけネットに影響を与えるのか、ということは慎重に議論しなければいけないと思います。
ダウンロード違法化以外の部分の改正については、基本的に時代に合わせたものになっていると思います。
例えば、国会図書館で書籍を電子アーカイブ化する際、著作者に許諾をとらなくても複製が可能になりました。また、今まで視覚障害者の方でも読めるように書籍を音声化することは認められていましたが、ネットを通すとダメでした。これも合法化された形です。
ECサイトやオークションで美術品を売るために写真を載せる、という行為も著作権的に問題視されていましたが、こちらも写真を付けても適法と判断されます。
あとは、ウェブサービスで使うキャッシュも著作権者の許可なしでできるようになっています。検索エンジンを始め、これまで情報表示の部分で、著作権的にグレーな領域でサービスを提供しなければならなかった幅広いIT系ネットサービスが、合法的にサービスを提供しやすくなるでしょう。ただ、この辺りは条文がかなり複雑なので、実際にいくつか訴訟が起こってみないと分からない部分もあるのですが、それでも一歩前進したことは間違いありません。
●主に改正されたところ
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
不正にアップロードされた音楽やビデオをダウンロードする行為 | 合法 | 「情を知って」などの条件付きで違法に(関連記事) |
国会図書館で書籍を電子アーカイブ化する行為 | 著作者に許諾を取る必要がある | 許諾なしでOK |
ウェブサービスで他人のウェブサイトの一部をコピーしてキャッシュする | 著作者に許諾を取る必要がある | 基本的に許諾なしでOK |
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