昨年、文化庁で決められた「ダウンロード違法化」が、インターネットで再び話題になっている。
「Winny」や「BitTorrent」といったピア・ツー・ピア(P2P)ソフト、違法着うたサイトなど、インターネットの一部では著作者の了解を得ずに不正にコンテンツが流通している。現行の著作権法では、このうち勝手にアップロードした側を訴える手段はあるが、ダウンロードする側は罪に問えない(詳しくはこちらの記事を参照)。
著作権者は、そうしたコンテンツの不正流通を抑えるために、ダウンロードする側も違法とする法改正を求めていた。そして昨年、文化庁の会合(文化審議会 著作権分科会 私的録音録画小委員会)において、「不正にアップロードされた音楽やビデオをダウンロードする行為も違法」という方針が決まった(関連記事)。
そこから時間がずいぶんと空き、20日、同じ私的録音録画小委員会にて、ダウンロード違法化の方針が了承された。なぜダウンロード違法化は先延ばしされていたのか。私的録音録画小委員会に委員として参加しているジャーナリストの津田大介氏に話を聞いた。
ダウンロード違法化が議論できなかった
── ダウンロード違法化は去年も決定していませんでしたか?
津田 ええ。昨年、私的録音録画小委員会の中間整理案が提出された時点で、ダウンロード違法化の方針が決まっていました。
ただ一応、これは「中間整理」という名目だったんです。今年2月に開かれた文化審議会の総会にて、「ダウンロード違法化」に相当する著作権法30条(ダウンロード違法化)の問題も、必要があれば適宜話し合うということが報告されています(文化審議会の議事録)。
しかし、その後の私的録音録画小委員会では、この問題について全然話し合われていなかったんです。原因は今年の春から、著作権者とJEITA(社団法人電子情報技術産業協会)の「全面対決」が始まってしまったからです(関連記事その1、その2)。
そもそも私的録音録画小委員会は、その名の通り私的録音録画補償金のあり方を話し合うために作られたものです。この小委員会に求められていたのは、補償金制度の廃止も含めた抜本的見直しであって、その延長上に「iPod課金」に代表される補償金の対象機器や、集めた補償金をどう分配するのか、管理協会のあり方はどうするのかといった議題がありました。
ですが、結果的に補償金廃止という方向は早々に捨てられて、補償金の対象範囲やダビング10の実施について、JEITAを巻き込んだ政治問題になってしまった。今年の私的録音録画小委員会でも、補償金の話題ばかりが上がって、著作権法30条の改正についてはほとんど話し合われなかったんです。
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