日本はカメラセンサーに強いのに、なぜ宇宙用は米国製なのか
ロケットが運ぶ「宇宙の眼」
ロケットの打ち上げのライブ中継を見るのが好きだ。轟音とともに機体が空へ伸びていき、やがて人工衛星が無事に放出される瞬間を見ると、不思議な安心感とじんわりとした感動を覚える。
ただし、JAXAのH3にせよ、SpaceXにせよ、ロケットはあくまで宇宙まで荷物を運ぶ手段だ。運ばれた荷物、つまり人工衛星の中には、通信機器や制御装置、そして地球や宇宙を観測するための「センサー」が搭載されている。
ついロケットや衛星本体に目が行きがちだが、衛星の価値は、「宇宙で何を見るのか」と「どんなデータを取るのか」にかかっている。 地表の変化や災害の状況、農地、森林、海洋、都市の状態を読み取る入り口にあるのが、宇宙空間で働く「眼」、つまりイメージセンサーだ。
日本が強いはずのセンサー、なぜ宇宙では米国製なのか
ところが、この宇宙の眼は一筋縄ではいかない。スマホのカメラなどで「日本はイメージセンサーに強い国」という印象を持つ人も多いだろう。実際、地上向けのデジタルカメラやスマートフォンの分野では、日本企業のセンサー技術は大きな存在感を持っている。
しかし、その技術をそのまま宇宙へ持っていくことはできない。宇宙空間では、放射線や大きな温度差、打ち上げ時の振動といった厳しい条件にさらされる。地上向けの電子部品では、ノイズや故障の原因になりうる。
そのため、宇宙用センサーはこれまで、高額な特注品に近いものになりがちだった。現在は米国製が市場の中心で、価格は1億円以上にのぼることもあり、納期も1年以上かかるという。地上のカメラでは日本勢が強くても、宇宙の「眼」では別の産業構造ができているのだ。この「高価で、調達に時間がかかる」という問題が、小型衛星をたくさん飛ばしたい世界中の国々や企業にとって、ひとつのボトルネックになっている。
静岡発、“宇宙の眼”を安く小さくする挑戦
この壁に挑むのが、静岡大学発スタートアップのSUiCTE(スイクト)株式会社だ。同社は、静岡大学で長年培われてきたイメージセンサー研究を基盤に、宇宙衛星向けの半導体センサーやカメラの開発を進めている。
同社が目指すのは、これまで特注品に近かった宇宙の眼を、独自の半導体技術によって「小さく、安く、短納期で」提供すること。米国企業が中心となってきた市場に対し、サイズは半分、費用も半額程度、納期は半年を想定している。
こうしたセンサーが実用化されれば、小型衛星に観測機能を載せるハードルは一気に下がる。複数の衛星を連携させた観測網も組みやすくなり、災害監視や環境保全など、私たちの暮らしに関わるデータ活用にも広がりそうだ。
次にロケットの打ち上げニュースを見るときは、機体の先端だけでなく、その中に載っているセンサーにも注目してみたい。宇宙ビジネスを支える重要な技術は、案外、小さな半導体の中にあるのかもしれない。
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