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研究力はあるが、世界企業になれない。StartX創業者が狙う、日本ディープテックの再設計

NEXUS ORCA創設メンバーに聞く、世界を狙う起業家コミュニティ構想

特集
エコシステムの潮流

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「日本には優秀な研究者も技術もある。しかし、“世界を狙う起業家コミュニティ”が欠けている」。スタンフォード大学発の起業家コミュニティ・StartX創業者でNEXUS ORCAを立ち上げたCameron Teitelman氏は、そう語る。NEXUS ORCAは、国内外の起業家や投資家、研究者、メンターをつなぎ、日本のディープテックエコシステムそのものを押し上げる取り組みだ。 なぜ日本では、世界規模のディープテック企業が生まれにくいのか。NEXUS ORCAは、その構造をどう変えようとしているのか。プロジェクトを進めるCameron Teitelman氏と長坂英樹氏に話を聞いた。

StartXが見つけた「成功する起業家コミュニティ」の共通点

Cameron Teitelman氏

Cameron Teitelman氏
NEXUS ORCA創業者。スタンフォード大学発の非営利アクセラレーター「StartX」創業者として、これまで3000社以上のスタンフォード関連スタートアップを支援。支援企業の累計調達額は45億ドルを超える。10年以上にわたり、起業初期の創業者へ資金調達やメンターネットワークを提供するプログラム構築に取り組んできた。現在は、日本の研究者・技術者とグローバルなスタートアップエコシステムを接続する「NEXUS ORCA」を推進している。

ネクサスジャパン合同会社 代表長坂 英樹氏

ネクサスジャパン合同会社 代表 長坂 英樹氏
東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(東大IPC)で、大学発スタートアップ支援や起業家コミュニティ形成に携わる。東京大学関連の起業家支援プログラム「1stRound」などを通じ、研究者・学生・スタートアップと国内外の投資家や支援者をつなぐエコシステム構築を推進。現在は、StartX創業者のCameron Teitelman氏とともに、「ネクサスジャパン合同会社」の代表として、日本の研究コミュニティとグローバルな起業家ネットワークの接続に取り組んでいる。
 

 NEXUS ORCAは、Teitelman氏らが、日本で立ち上げを進める起業家支援コミュニティだ。大学研究者やスタートアップ、投資家、メンターを国内外で接続し、世界規模のディープテック企業を生み出すエコシステム形成を目指している。

 Teitelman氏は、スタンフォード大学発の非営利アクセラレーター「StartX」創業者として、20社超のユニコーン企業の誕生を支援してきた。大型スタートアップを築いた起業家たちを分析する中で、ある共通点を見いだしたという。

 「数十億ドル規模の企業価値を築いた起業家たちを研究すると、共通するパターンがありました。彼らには、自分たちと似た起業家同士が助け合う緊密なグループがあったのです。私たちはそれをコミュニティ、特に“ピアサポートグループ”と呼んでいます」(Teitelman氏)

 そこでは、起業家が課題に直面した際、経験者にすぐ相談できる環境が作られていた。内容は、日常的な実務から資金調達・組織運営まで幅広い。こうした連帯を持つことで、起業家は「より速く、かつ正しい方向へ進めるようになる」とTeitelman氏は説明する。

 さらに、コミュニティは単に課題解決を助けるだけではなく、「どの規模を目指すか」という感覚そのものにも影響を与えるという。

 「非常に野心的な創業者たちのコミュニティに入ると、もっと大きく考えられるようになります。世界規模の会社を目指す感覚が自然に共有されるのです。まるで、SNSでのエコーチェンバーのように」(Teitelman氏)

 StartXでは、こうしたコミュニティを軸に、DoorDashやSnapchatなど多数の大型スタートアップに関わる起業家ネットワークが形成されてきた。Teitelman氏は、日本でも単なる起業支援ではなく、創業者同士が互いに刺激し合いながら「世界を前提に考える状態」をコミュニティとして作る必要があると語る。

「日本には才能がある」。それでも世界規模の企業が少ない理由

 Teitelman氏は、日本のスタートアップエコシステムの課題は、研究者や起業家の才能が不足していることではなく、事業の成長を測る基準が国内市場に最適化されていることだと見ている。その背景にあるのが、日本特有のスタートアップ成功モデルだ。国内市場を中心に事業を拡大し、比較的早い段階でIPOを目指す流れが、日本のスタートアップエコシステムではこれまで前提とされてきた。

 「日本のエコシステムには、スタートアップが小さな成果や早期IPOを目指すインセンティブがあります。ご存知のように、それは祝福であり呪いです。もし、それが周囲の友人たちやメンター、投資家にとっても当たり前であれば、創業者自身も自然とそう考えるようになるでしょう」(Teitelman氏)

 一方で、Teitelman氏は研究者や若い起業家の能力自体については高く評価している。

「日本は世界有数の経済規模を持ち、研究開発にも多額の資金を投入しています。それなのに、他地域と比較すると、その商業化は進んでいない。実際に若い研究者や起業家に会うと、優秀な人材が非常に多いと感じました。だからこそ、大きな可能性があると思ったのです」(Teitelman氏)

 日本国内では、世界規模のスタートアップを生み出したロールモデルがまだ少ない。特にディープテック領域では、「どこを目指せばいいのか」というイメージ、いわば「成功の定義」が共有されていない状況があるという。

 国内で多くの大学発のスタートアップを支援してきた長坂氏は、「これまで日本では、国内市場での成功体験ばかりが共有され、世界規模での成長を前提としたコミュニティは十分に形成されてこなかった」と話す。

 NEXUS ORCAでは、スタンフォードやシリコンバレーの創業者コミュニティと接続することで、世界規模を狙うことを当然の前提として考えられる環境を作ろうとしている。

【成功の理由にある「脆弱な空間」とは?(次ページ)】

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