メルマガはこちらから

PAGE
TOP

生成AIを支えるのはGPUだけじゃない。電力ロスを減らす「半導体材料」の話

特集
未来を変える科学技術を追え!大学発の地味推しテック

AIで増えるのは、計算量だけではない

 AIブームで半導体株への注目が続いている。生成AIを動かすには大量の計算が必要で、その計算を担う半導体の需要が伸びる。だからNVIDIAなどの半導体関連株に資金が集まる。

 ただ、AIが増やしているのは計算量だけではない。データセンターで大量のサーバーを動かし、冷却し、安定稼働させるには、膨大な電気が必要になる。AI時代の半導体を考えるうえでは、「どれだけ速く計算できるか」に加えて、「電気をどれだけムダなく使えるか」も大事になる。

 そこで出てくるのが「パワー半導体」だ。パワー半導体は、電圧や電流を変換したり制御する半導体で、エアコンやテレビ、EV、産業機器、再生可能エネルギー設備、データセンターなど、電気を使うあらゆる場所で使われている。電気を変換するときには必ずロスが出る。そのロスを減らせれば、機器の省エネ化や小型化につながる。

半導体は、材料の競争でもある

 半導体というと、回路をどれだけ細かくつくるか、どれだけ高性能なチップを設計するかに目が行きがちだが、パワー半導体の世界では「何の材料でつくるか」も大きなテーマになっている。 従来の中心はシリコン(Si)だったが、より高い電圧に耐え、より少ない損失で動作する材料として、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)が使われ始めている。半導体は、設計だけでなく、材料の競争でもあるのだ。

 立命館大学発スタートアップのPatentix株式会社が開発しているのは、ルチル型二酸化ゲルマニウム(r-GeO₂)と呼ばれる半導体材料だ。二酸化ゲルマニウムには複数の結晶構造があり、なかでもルチル構造のr-GeO₂は、約4.6eVというバンドギャップを持つ。一般的なSiが約1.1eV、次世代パワー半導体で使われるSiCが約3.3eVであることを考えると、かなり大きい値だ。 要するに、高い電圧に耐え、電気のロスを抑えるパワーデバイスをつくるための、次世代材料の候補として期待されている。

二酸化チタン(TiO₂)でよく知られるルチル構造のイメージ図

 Patentixは、r-GeO₂を使った半導体基板やデバイスの研究開発を進めており、民生機器、車載、産業機器などへの展開を見込む。2026年には、株式会社ジェイテクトサーモシステムと共同で6インチ対応の成膜装置を開発し、Siウエハ上へのr-GeO₂薄膜の実行に成功した(参照)。これまでは小さな基板への成膜にとどまっていたが、今回の成果は、量産に必要な大きな基板へ近づく一歩となる。

GPUだけではない半導体のおもしろさ

 NVIDIAのような巨大AIチップ企業を、日本からすぐに生み出すのは簡単ではない。が、半導体の勝負は「GPUを誰が設計するか」だけではない。材料があり、基板があり、薄膜をつくる技術があり、製造装置や評価技術がある。半導体は、いくつもの技術の積み重ねでできている。Patentixのような素材系スタートアップを見ると、日本が半導体で勝負できる場所は、まだいろいろありそうだと思えてくる。

 ちなみに、社名のPatentixは「Patent(特許)」と「X(未知の可能性)」に由来するという。AIブームで半導体関連株に注目が集まるなか、新材料を開発し、その技術を守り、事業につなげる。Patentixという名前には、GPUだけではない半導体のおもしろさが詰まっている。

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

合わせて読みたい編集者オススメ記事

バックナンバー