メルマガはこちらから

PAGE
TOP

自然は放っておけばいい感じになるわけじゃない。生物多様性をAIで見える化するシンク・ネイチャー

特集
未来を変える科学技術を追え!大学発の地味推しテック

自然は、放っておけば勝手に整うわけじゃない

 最近、クマやサル、イノシシが人里に出てくるニュースが珍しくなくなった。人が減ったぶん野生動物が戻ってきているなら、それはそれで自然なことなのではないか。そう思ってGeminiに「自然に戻っているのだから、いいことなのでは?」と聞いてみると、「そう単純ではありません。放置された場所は『豊かな土地』ではなく『荒れた土地』になるのが問題です」と返ってきた。自然は、放っておけば勝手に“いい感じ”になるわけではないようだ。

 野生動物の出没には、餌の変動や個体数の変化など、さまざまな要因がある。だが、人口減少や高齢化によって森や里山に人の手が入りにくくなり、人と野生動物の境界があいまいになっていることも背景のひとつとされる。大雨のときの土砂災害も、地形や地質、降雨量だけでなく、森林や斜面の状態、土地利用などが複雑にからむ。

 つまり、「自然を守る」といっても、ただ人間が手を引けばいいわけではない。どこを残し、どこに手を入れ、どの開発は避けるべきなのか。その判断には、自然をきちんと把握するためのデータが必要になる。

世界中の生き物データを集めて、自然の地図をつくる

 そこで登場するのが、琉球大学発ベンチャーの株式会社シンク・ネイチャーだ。同社は、世界の陸と海を対象に、野生生物や生態系の分布をビッグデータ化し、AIなどを用いて自然の状態を可視化・予測する技術を持つ。

 扱うデータは幅広い。自然史の研究論文や標本情報、人工衛星・ドローンによるリモートセンシング、環境DNA調査、野生生物の行動を記録するバイオロギング、さらに植物・動物愛好者による観察記録など。生物の地理分布、遺伝子、機能特性、生態特性といった情報を統合し、「どこに、どんな生き物や生態系があるのか」を見える化する。いわば、世界中の生き物と自然環境を、巨大な地図にしていく会社だ。

日本全土の生物多様性情報を1kmメッシュで可視化する「J-BMP:日本の生物多様性地図化プロジェクト」(利用には会員登録が必要)

 その技術を実際に体験できるサービスのひとつが、「J-BMP:日本の生物多様性地図化プロジェクト」だ。日本全土の生物多様性情報を、1kmメッシュの空間解像度で可視化したウェブシステムで、地図上から地域ごとの生き物や自然環境の情報を確認できる。

 自然の豊かさは、見た目だけではわからない。同じ森に見えても、希少な生き物が多い場所もあれば、生態系サービスの観点で重要な場所もある。J-BMPのような地図は、「どこに、どんな自然があるのか」を直感的に見るための入口になる。

企業活動の自然に与える影響を可視化する

 企業や金融機関にとっても、自然は無関係な存在ではなくなっている。工場の立地、原材料の調達、農林水産物の利用、開発事業など、企業活動はどこかで自然に依存し、同時に自然へ影響を与えている。

 その影響を把握し、投資家などに開示するための国際的な枠組みのひとつがTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)だ。とはいえ、自社の事業がどの地域のどんな生態系と関わり、どの程度のリスクを生んでいるのかを調べるのは簡単ではない。

 シンク・ネイチャーは、自然資本ビッグデータを活用し、企業や金融機関の生物多様性対応を支援する分析・評価ソリューション「TN LEAD」を提供している。企業はTN LEADを使うことで、事業活動と自然との関係を可視化し、TNFD対応や投資家向けの説明に必要な情報を整理しやすくなる。

その環境活動、本当に自然にプラスなの?

 さらに同社は、「生物多様性ネットゲイン」を可視化するサービス「TN GAIN」も展開する。生物多様性ネットゲインとは、開発や事業活動によって自然に与えるマイナスの影響を抑えつつ、保全や再生活動によって全体として自然をプラスにしていく考え方だ。

 再エネやリサイクル、森林保全のように、環境によさそうに見える取り組みでも、それが本当に自然にプラスなのかは簡単にはわからない。どこかで別の負荷を生んでいるかもしれないし、守っているつもりの場所が、生物多様性の観点では最適とは限らない。シンク・ネイチャーが進める自然資本の可視化は、そうしたあいまいさを減らすための技術でもある。

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

合わせて読みたい編集者オススメ記事

バックナンバー