宇宙は「打ち上げる」から「使う」へ。現場に入り始めたデータ活用
「SuSHi Tech Tokyo 2026」展示レポート①
SuSHi Tech Tokyo 2026の宇宙領域展示では、月面開発を目指す株式会社ispaceや、成層圏からの遊覧飛行を手がける株式会社岩谷技研など、人や物を宇宙・成層圏に送り出す取り組みが来場者の目を引いていた。また、株式会社ソラマテリアルの軽量素材「SORAMATEX」のように、宇宙用途を見据えた技術開発も進んでいる。
その一方で、宇宙で取得したデータを地上で活用する動きも、現実的なフェーズに入りつつある。本記事では、衛星による観測から、それが実際の判断にどう使われているのか、その流れを見ていく。
雲や夜を超えて地表を捉える、SAR衛星
小型SAR(合成開口レーダー)衛星「StriX」シリーズを展開する株式会社Synspectiveは、これまでに8基を打ち上げ、 継続的な観測体制を構築している。SARは電波を使うため、可視光で撮影する光学衛星と異なり、 夜間や雲に覆われた状況でも地表を観測できるのが特徴だ。
この特性を生かし、防災やインフラ監視といった用途で活用が進んでいる。例えば、地盤の隆起や沈降の変化を長期的に捉え、災害の予兆を把握するほか、洪水や地震の発生時には被害状況の把握にも使われている。森林分野では、インドネシアなどでバイオマス量の推計にも活用されている。
技術的には、レーダーの波長の違いによって見えるものが変わる点も重要だ。Synspectiveが扱うXバンドは波長が短く、細かい地表の変化を捉えられる。一方、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「だいち」などで使われるLバンドは、樹木の葉や枝をある程度透過して地面まで届く。これらのデータを組み合わせれば、地表の状態と植生の状況を分けて把握できる。
また、海洋分野では波の形状を解析することで風速や波高を算出する研究も進んでおり、エネルギー分野への応用も検討されている。ただし日本では、衛星データを風力発電の正式な実証データとして活用するには制度面の課題が残っている。
現時点での主な利用者は、防衛や行政などの公的機関が中心。特に安全保障用途では、艦船や航空機の識別といった形での活用が進んでいる。
散在する情報を整理し、 災害状況を可視化する
一方で、取得したデータを現場で使える形にする取り組みも進んでいる。株式会社Specteeは、SNSや気象情報、衛星データなど複数の情報を統合し、災害時の状況を可視化するサービスを提供している。
多様な情報を統合し、現場の判断に使える形に変換できる点が特徴だ。投稿された画像や動画の解析に加え、それが1次情報か2次情報かといった信頼度のランク付けを行い、災害や事故によるリスクを地図上に可視化する。こうして拠点周辺に迫る危機情報をリアルタイムで把握できるようにし、サプライチェーンを含めたリスクマネジメントにつなげている。
大手メディアやグローバル企業、物流事業者など幅広い業種で導入が進んでいる。海外拠点の従業員の安全確認や、地震・大雨時の初動対応、交通障害の把握など、日常業務の中で活用されている。
SNSの投稿は「どこで何が起きたか」という点の情報となる。これに衛星データを組み合わせることで、浸水や被害がどの範囲に広がっているかといった”面での状況把握”が可能になる。 その一環として、上述したSynspectiveとも連携し、衛星データを取り込むことで、どの範囲まで浸水しているかを地図上で可視化するなど、より広域での状況認識につなげている。
現場に通信と機動力を持ち込む
現場での対応力を高める取り組みも進んでいる。一般社団法人MIKATAプロフェッショナルズのブースでは、防災用途の3輪トライクが展示されていた。
地震発生時には路面のひび割れなどで、被災現場に乗用車が進入できないケースも多い。こうした状況でも、小回りの利くトライクであれば現場に入りやすい。
車両の荷台には、衛星通信サービスStarlinkと接続するアンテナと電源を搭載し、周囲およそ1kmの通信エリアを構築できる。被災状況に応じてポンプなどの機材も積載可能で、山間部の火災など大型車両が入りにくい場所での消火活動にも活用されている。
すでに国土交通省の道路管理用途でも導入されており、災害時の初動対応だけでなく、道路の緊急点検などにも使われているという。さらに、ダム建設現場など通信環境が不十分な場所に持ち込み、工事期間中の通信インフラとして運用することも想定されている。
平時の業務で活用しつつ、災害時にはそのまま現場対応に転用できる設計が特徴だ。情報を取得し判断する仕組みに加え、それを現場で機能させるためのインフラも、現実的な形で整備が進み始めている。
宇宙から日常の現場へ活用が広がる
宇宙ビジネスは「打ち上げる」から「どう使うか」へと軸足を移し、その変化はすでに現場レベルで具体化し始めている。 衛星観測の高度化と、それを現場の判断につなぐ仕組みの整備が進んだことで、日常的な意思決定の一部として使われる段階に入ったようだ。
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