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原子サイズに迫る半導体。その裏で進化する「見る技術」

特集
未来を変える科学技術を追え!大学発の地味推しテック

「もう限界」と言いつつ、半導体はまだ小さくなる

 スマートフォンは毎年のように高性能になり、AI向け半導体も次々と新世代へ進化している。半導体業界では、かなり前から「シリコンの微細化はそろそろ限界だ」と言われ続けてきた。実際、現在の最先端プロセスは原子数個レベルの世界に迫っている。

 普通に考えれば、「もうこれ以上小さくするのは無理では?」と思うが、半導体メーカーは、まだ小さくしようとしている。この先の限界突破で重要になるのは、製造技術だけではない。ナノメートル単位の欠陥を見つける「見る技術」だ。

半導体を「見る」ための電子ビーム

 そんな「見る技術」のひとつが電子ビームだ。名古屋大学発スタートアップの株式会社Photo electron Soulは、この電子ビームの作り方そのものを変えようとしている。同社の中核技術は「半導体フォトカソード技術」。少し難しい名前だが、要するに「光で電子を取り出す技術」である。

 電子顕微鏡や半導体検査装置で使われる電子ビームは、従来、金属を高温で熱して電子を取り出す方式が主流だった。一方、同社の技術は半導体材料にレーザー光を照射し、そのエネルギーで電子を飛び出させる。この方式によって、従来よりも細く、高速な電子ビームを作り出せるという。

Photo electron Soulの半導体ウェハー検査装置「PES-2020 e-Beam System」

電子の出し方を変えると何が変わるのか

 半導体検査は、超高性能な顕微鏡で極小の回路を観察しながら、不良箇所を探す作業に近い。Photo electron Soulが開発する技術は、その“目”にあたる電子ビームの性能を高めるものだ。

 同社は実機評価において、従来比10倍以上の高いプローブ電流(観察に使う電子ビームの「明るさ」を示す値)を実現したと公表している。より細かい部分を見やすくなるだけでなく、一度に取得できる情報量も増えるため、検査時間の短縮にもつながるという。

半導体は平面から立体へ

 では、なぜそこまで高性能な電子ビームが必要なのだろうか。理由のひとつは、半導体そのものがどんどん立体的になっているためだ。

 かつての半導体は、平面上に回路を並べることで性能を高めてきた。しかし微細化が限界に近づくなか、複雑な立体構造を取り入れることで性能向上を図るようになっている。

 すると当然、中を見るのも難しくなる。Photo electron Soulの技術には、こうした複雑な立体構造の内部観察や、非接触での電気的検査といった従来は難しかった用途への応用が期待されている。

半導体の未来を支えるのは「見る技術」かもしれない

 半導体の進化というと、「どれだけ小さく作れるか」に注目が集まりがちだ。しかし、原子サイズに近づきつつある現在、小さいけど壊れやすいのでは意味がない。だからこそ、ちゃんと見えることが重要になる。

 より小さな欠陥を見つける。より複雑な構造を観察する。より速く検査する。「微細化は限界」と言われながらも半導体は進化を続けている。その理由は、案外こうした地味な技術の進歩にあるのかもしれない。

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