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ウェアラブルで早期発見、無線給電で治療。負担を減らす医療機器の新提案

HVC KYOTO 2026 Demo Day メドテック部門ピッチレポート

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 日本貿易振興機構(JETRO)、京都府、京都市、京都リサーチパーク(KRP)が主催する、ヘルスケア分野の海外展開を支援するイノベーションプラットフォーム「HVC KYOTO」。2026年7月14日に開催された「HVC KYOTO 2026 Demo Day」では、採択されたファイナリスト12社によるピッチと基調講演が行われた。

 本記事ではメドテック部門のピッチから、電池交換のいらない神経刺激装置、リンパ浮腫を早期発見する画像診断技術、更年期症状の兆候を捉えるウェアラブルパッチなど、医療現場や患者が抱える課題にデバイスと診断技術で取り組む5件の発表を紹介する。

電池交換のいらない刺激装置で、睡眠時無呼吸を治療する

 東京大学バイオデザイン発の医療機器スタートアップ、株式会社HICKYは、心不全患者に多くみられる中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)の治療装置を開発している。CSAを併発すると心不全の予後が悪化することがある。酸素吸入やCPAPでは十分な効果が得られない例もあり、横隔膜の運動を司る横隔神経を刺激して呼吸を促す治療も使われている。ただし、既存の刺激装置には、複雑な埋め込み手術やリードによる合併症、定期的な電池交換といった課題がある。

 同社が開発を進める装置はリードと内蔵電池を使わない小型デバイスで、カテーテルで血管内に留置し、呼吸を担う横隔神経を刺激する。体外から無線で給電するため、電池交換のための手術も不要だ。手術時間や合併症のリスクを抑え、長期的な医療費の軽減も見込める。試作機を用いた前臨床試験は完了しているとのこと。

 今後はヒトを対象とした臨床試験に進み、まず無呼吸指数の改善を検証する。その後、心不全患者の再入院率や生存率への効果も評価し、米国を含むグローバル展開や大手医療機器企業との提携、M&Aを目指す。

株式会社HICKY CEO 林健太郎氏。IT-Farm賞、HVC-LINK-J賞を受賞

目に見えないリンパ浮腫を、水分分布から早期発見する

 千葉大学発の株式会社TOMOCLOUDは、がん手術後などに起こるリンパ浮腫を早期発見する非侵襲型デバイスを開発している。リンパ浮腫は、重症化すると組織の線維化が進み、治療が難しくなる。既存の検査には大型装置や薬剤の注射が必要なものもあり、目に見える腫れが現れる前の変化を簡便に捉える方法が求められている。

 同社は、体内の水分分布を画像化する電気インピーダンス・トモグラフィー(EIT)を、この早期発見に活用する。ウェアラブルセンサーから微弱な電流を流し、皮下組織の水分の偏りや蓄積を可視化することで、リンパ浮腫の初期変化を捉える。30人の患者を対象とした臨床研究も進めている。

 まずは病院や乳腺・婦人科クリニック向けに、デバイス本体と使い捨てセンサー、解析ソフトを提供する。日本で医療機器としての承認と臨床実績を得た後、米国展開や在宅モニタリングへ広げる。将来は、心不全などによる浮腫の判別にも応用する計画だ。

株式会社TOMOCLOUD 共同創業者 木内悠太氏。O-Nexus賞、東急不動産賞を受賞

ホットフラッシュの兆候をウェアラブルパッチで予測する

 京都大学の河野文子氏は、更年期に伴うホットフラッシュや動悸、気分の変動などの兆候を捉えるウェアラブルパッチデバイスを発表した。更年期症状は突発的に現れやすく、仕事の生産性低下や病欠、離職につながることもある。症状が起きるタイミングをあらかじめ把握できれば、休息を取るなど早めの対処がしやすくなる。

 同デバイスは、心拍変動、皮膚電位、皮膚温、脈波などをパッチで計測し、AIで解析する。症状が起こりやすい状態や自律神経の変化をわかりやすく示し、休息や深呼吸などのセルフケアを促す仕組み。センサー部分は繰り返し使用し、肌に貼る部分は交換式とする想定だ。

 現在はプロトタイプを開発しており、2028年に企業の福利厚生などで利用するウェルネスサービスとして提供を始める計画だ。

京都大学 特定講師 河野文子氏。イノベーションデザイン賞を受賞

炭酸アパタイトで、膝の軟骨と骨を同時に再生する

 九州大学発のCA Technology, Inc.は、変形性膝関節症によって損傷した軟骨と骨を同時に再生する医療材料を開発している。変形性膝関節症は徐々に進行し、重症化すると歩行が難しくなり、人工膝関節置換術が必要になることもある。既存の自家軟骨移植は治療できる範囲が限られ、患者への負担も大きい。膝の機能を長期的に回復させるには、表面の軟骨だけでなく、その下にある骨も一体として再生する必要がある。

 そこで同社が用いるのは、天然骨に近い組成を持つ炭酸アパタイト(CA)だ。3D多孔質構造に成形したCAを欠損部へ埋め込むと、体内で吸収されながら自家骨へ置換され、表面では硝子軟骨の再生を促す。動物実験では、12週間後に骨と軟骨への置換と一体化を確認したという。

 今後は、高位脛骨骨切り術などとの併用を想定し、九州大学病院で臨床データを集める。2028年ごろの国内承認と上市を目指し、日本で得た臨床実績を活用して、米国FDAの承認取得とグローバル展開につなげる計画だ。

CA Technology, Inc. CEO 佐野亨氏

PCR設備のない地域で、C型肝炎をその場で確定診断

 SPHinx株式会社は、PCR検査を受けにくい低中所得国で、C型肝炎の活動性感染を簡便に判定する診断キット「Smart ∞ HCV」を開発している。抗体検査で陽性となっても、確定診断に必要なPCR設備がない地域では、治療薬が利用できても治療開始につながらないケースが多い。

 Smart ∞ HCVは、PCR装置を使わずに活動性感染を判定するため、温度変化によって性質が変わる感温性ポリマーを活用する。ウイルス抗原を選択的に濃縮することで、高額な装置や安定した電源を使わずに、高感度な検査を可能にする。ナイジェリアやパキスタンなどでの実証では、95%を超える診断精度を確認したという。

 まずは現地の民間病院や検査施設へ導入し、臨床実績を積んだうえで、保健省や国際機関による公的調達へ広げる。将来はC型肝炎に加え、結核やマラリア、がんなどの検査にも技術を展開する計画だ。

SPHinx株式会社 COO 佐々木信氏

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