Viva Technology 2026開催、ジェフ・ベゾス氏が宇宙インフラで次世代を拓く
Viva Technology 2026オープニングセッションレポート
過去最大規模となった10周年大会と、改めてスタートアップの集合体へ
2026年6月17日から20日にかけて、フランス・パリのポルト・ド・ヴェルサイユにて、イノベーションとテクノロジーの祭典「Viva Technology 2026」が開催された。10周年を迎えた本大会は、従来のホールから3階建てのホールへと規模を大幅に拡大し、世界165カ国から20万人以上が来場、1万5000社以上のスタートアップ、1155人以上のスピーカーが参加する、世界最大のイノベーションイベントとして、過去最大の規模を記録した。今年の主要テーマには、AI、サイバーセキュリティ、グリーンテックなどに並び、「宇宙(Space)」が大きく取り上げられた。また新たな試みとして6月14日にはシャンゼリゼ通りでの特別イベントも開催された。
初日のオープニングセッション「10 Years of Tomorrow」では、Publicis Groupe名誉会長のMaurice Lévy(モーリス・レヴィ)氏とLVMH会長兼CEOのBernard Arnault(ベルナール・アルノー)氏が登壇し、10年間の軌跡を振り返った。レヴィ氏が10年前に掲げた「パリにイノベーションを集結させる」という野心的な構想は、今や世界的なプラットフォームへと成長を遂げた。アルノー氏は、巨大なコングロマリットであるLVMHの各ブランドも、元を正せばクリスチャン・ディオールのようなひとりの起業家から始まっていると語り、自社を「スタートアップの集合体」と位置づけた。 たとえばLVMH傘下のヴーヴ・クリコを世界的ブランドに育て上げ、近代初の女性起業家とも称されるマダム・クリコの存在は、まさにこの起業家精神のDNAを体現する事例といえる。アルノー氏は、企業が巨大化しても欧州に蔓延しがちな官僚主義を徹底して排除すること、そしてスタートアップの成功において優れたアイデア以上に、それを形にする「実行力」を重んじる姿勢が重要であると強調した。
仏独連携で目指す欧州デジタル主権と、ディープテックへの愛
今年の「Country of the Year」にはドイツが選出され、オープニングセッションでは、フランスとの強固な連携による「真の欧州デジタル主権」の確立が議論の中心となった。セッションで講演したドイツ連邦デジタル・国家近代化大臣のKarsten Wildberger氏は、欧州は過去数十年にわたり、米国など他国が構築したソフトウェア、プラットフォーム、クラウド技術を単に消費する側に甘んじてきた。たとえば開催直前にはAnthropicが提供する最上位の最新AIモデル「Claude Fable 5」が提供停止されたように、最先端AIモデルへのアクセスが突如制限される事態が現実となる中、自ら技術を構築し提供する能力を持たなければ、深刻な地政学的リスクを抱えることになると説明した。
米国に対抗する道筋として、フランスの強力なAI・スタートアップエコシステムと、自動車産業などで培われた「実際に手を動かして物理的なハードウェアを構築する」ドイツのディープテックのDNAを統合することが不可欠となる。
続いてのパネルセッションには、モデレーターのMeike Neitz氏のもと、投資家Sebastian Borek氏(HTGF & DTCF)、SAPのDeepa Gautam-Nigge氏、The Exploration CompanyのHélène Huby氏、eleQtronのJan Leisse氏が登壇した。
Borek氏が「資金よりも野心的なマインドセットが重要」と語ったように、欧州最大の課題は資金不足ではなく、巨大な単一市場を持たないことによるスケール志向の欠如である。量子コンピュータ開発を手掛けるJan Leisse氏は、「資金調達や政治の話にはもううんざり。大企業は安全な選択肢ばかり買うのをやめて、ディープテックを愛してほしい」と熱弁した。真の主権を確立するには、各国政府や大企業が「戦略的顧客」として自国の最先端スタートアップの技術を初期段階から購入し、成長を育成するエコシステムの構築が強く求められていると説明した。
次なるフロンティア「宇宙」、インフラ構築とガレージ起業家精神
欧州の防衛や通信インフラの自律性、そしてサステナビリティの観点からも「宇宙」は不可欠な領域として大きくフォーカスされた。「Building the Road to Space」セッションには、AmazonおよびBlue Originの創業者であるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏らが登壇した。
ベゾス氏は、インターネット黎明期に通信インフラが存在したことで無数のIT企業が生まれた歴史を引き合いに出し、Blue Originの使命を「寮の部屋にいる若者でも宇宙企業を立ち上げられるような、起業家精神にあふれるダイナミックな宇宙経済のインフラを構築すること」だと語った。まさにベゾス氏自身やシリコンバレーの多くのIT企業がガレージから巨大なネット産業を興したように、宇宙空間へのアクセスという「重厚なインフラ」さえ安価に整えば、次世代の起業家たちが宇宙を舞台に新たなイノベーションを起こすことができるというのだ。
そのコスト削減の鍵となるのが、ロケットの再利用性と「機械を作る機械」である迅速な量産体制の確立である。このインフラ整備の先には、地球環境を汚染する重工業をすべて宇宙へと移転させ、地球を本来の美しい状態に保護するという壮大なサステナビリティのビジョンがある。さらにベゾス氏は、ハードウェアの構想から製造までのサイクルを劇的に短縮する製造業向けAIツール「Prometheus」を開発するスタートアップを新たに共同CEOとして立ち上げている。
「いかなる問題も解決可能である」というベゾス氏の精神は、次世代の起業家たちに向けて、新たな道を託し、自身も切り拓いていくように見られた。またオープニングで流れたViva Technologyの過去10年間を振り返る映像が終わった直後に、国際宇宙ステーション(ISS)からのビデオメッセージが流れた。宇宙飛行士たちからも「進歩は決してひとりでは成し遂げられない。前進するためのすべての一歩は、共に築き上げられるものだ」、「イノベーションを続け、コラボレーションを続け、前進し続けてほしい。その先には宇宙が待っている」とメッセージが送られた。
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