フランス・パリの世界最大級テックイベント「VivaTech 2026」が10回目の開幕 シャンゼリゼまで巻き込み成長続けるスタートアップエコシステム
2026年6月17日~20日、フランス・パリのポルト・ド・ヴェルサイユにて、世界最大級のスタートアップとイノベーションのカンファレンス「Viva Technology 2026」が開催される。今回で10回目の記念すべきイベントとなる本イベントは、展示スペースを前年比で30%拡大し、過去最大規模となる1万5000社のスタートアップと4000人の投資家が集結する。10周年を記念し、ビジネスデーに先立つ6月14日にはシャンゼリゼ通りでの特別イベントが、最終日の6月20日にはこれまでも実施されていた一般向けパブリックデーが「VivaTech Festival」としてバージョンアップして開催され、次世代の人材育成を含む社会全体を巻き込んだエコシステム醸成の取り組みも行なわれる。
新たな潮流「フルーガル・イノベーション」とAIがもたらす社会変
デジタル、DX化の動きが落ち着きを見せ、「AIとディープテックの時代」へと本格的に移行する節目となるVivaTech 2026では、技術の社会実装と現実的な価値の創出に重きが置かれている。今回特に注目すべきは、ディープテック分野における「フルーガル・イノベーション(Frugal Innovation)」という新たな潮流だ。これは「20%のコストで80%の恩恵(効果)」を生み出すことを目指すものという意味となる。同様にグリーンテック・エネルギー分野では急速に普及する再生可能エネルギーと、AI普及に伴う世界全体のデータセンターの膨大な電力需要との「競争」が、大きなテーマとして議論される。
米国との「投資格差」を埋める戦略とエコシステム
欧州だけなく世界が直面する課題と、それを乗り越えるための「エコシステムの実装」は引き続きテーマとなる。2025年、世界のAIベンチャー投資の79%を米国が獲得しているというデータもあり、巨大な資本格差が米国以外の競争力を脅かしている。この課題に対抗するため、会期中には起業家と主要投資家を直接結びつけるマッチングが実施され、4000回以上のネットワーキングを通じて欧州圏への資本誘致を図ろうとしている。さらに、最大規模のブースを構えるドイツが14の州や12の政府機関を挙げて「技術主権の確保」をアピールする姿勢や、大企業が自社の巨大ブース内にスタートアップを招き入れ、事業領域をまたいで共創するオープンイノベーションの仕組みも、欧州エコシステムの成長を牽引する重要な原動力となっている。
欧州のエコシステムから日本は何を学び、どう還元していくべきか
VivaTechは、フランスが国を挙げて推進する「La French Tech」を象徴する場でもある。過去の取材からは、年間50社以上のディープテックスタートアップを生み出すパリ・サクレー大学のような「基礎研究の市場実装」の強力な仕組みや、La French Techの特徴でもある地域ごとに特有の分野がクローズアップされる、リヨンの地域産業と最新技術を融合させたサーキュラーエコノミー、さらには仏独が国境を越えてディープテックを共同支援する枠組みなど、産学官連携の分厚いエコシステムが見えてきた。日本でも大学発スタートアップの支援や地域イノベーションの進展が課題となる中、欧州が実践する「低コストで大きなインパクトを生むフルーガル・イノベーションの思想」や「スムーズな社会実装」、「国家レベルでの技術主権の確保」といったエコシステムのあり方を、いかにして日本の政策やビジネス環境にローカライズし、還元していくか。それが次なる日本の成長の鍵となる。ASCII STARTUPは今年も現地パリの会場で、最新のエコシステム動向をレポートする。
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