「体だけ20歳」なら強くてニューゲーム? 老化の原因“細胞の老害”に迫る
長寿って、老いの期間が伸びただけ?
「高齢化社会」という言葉を聞かない日はない。日本だけでなく、世界的にもその流れは広がっている。長生きは悪いことではない。ただ、寿命だけが延びて体は順当に老いていくのは、どこかしっくりこない。どうせ長く生きるなら、20代のように元気で回復も早い身体のままでいたい。
世界も老いに目を向け始めた「エイジテック」
そんなわけで、老化をどうにかしようと今注目されているのが「エイジテック(AgeTech)」だ。アプローチは介護や生活支援などさまざまで、イーロン・マスク氏が手掛けるNeuralink(ニューラリンク)のように、脳にデバイスを埋め込んで機能を補完する技術もそのひとつだ。
老いの正体は「老化細胞」だった
そもそも「老い」とは何なのか。近年の研究で重要視されているのが「老化細胞」の存在だ。本来、役目を終えた細胞は自然に死んでいく(アポトーシス)が、中には分裂を止めたまま体内に居座り続けるものがある。これらは周囲に炎症を引き起こす物質を放出し、組織の機能を低下させる。いわば、稼働しないまま組織に留まり、周囲のパフォーマンスを下げていく「細胞レベルの老害」だ。
「老化細胞を取り除く」という発想
この厄介な細胞を取り除くことができれば、体の機能を“巻き戻せる”のではないか。この発想から生まれたのが、老化細胞除去を目的とした「セノリティクス(Senolytics)」という研究領域だ。動物実験では筋力や持久力の改善が報告されており、老化を「不可避な現象」ではなく「積極的に介入・治療できる対象」へと見方そのものが変わりつつある。
老化細胞に効く成分を見つける、東大発スタートアップ
こうした流れの中で登場してきたのが、東大発バイオスタートアップの株式会社たづだ。同社が取り組むのは、老化細胞だけに作用する成分を特定するための「アッセイ(評価系)」技術の開発。膨大な化合物のリストから、正常な細胞を傷つけず、老化細胞だけを狙い撃ちにする“目利き”の技術を創薬の起点にしていく。
現時点で「若返りの薬」が完成しているわけではない。しかし、このアッセイの精度が向上すれば、老化細胞をピンポイントで除去する医薬品の開発は一気に現実味を帯びる。
体だけ若い世界は、理想かディストピアか
これが実現すれば、これまでのアンチエイジングとは少し意味が違ってくるだろう。疲れにくく、代謝も落ちない。長年培った経験はそのままに、体は20代の状態にリセットできる、いわば「強くてニューゲーム」状態だ。
それはそれでバランスが崩れる可能性もある。老化細胞は取り除けても、人間の老害はどうするのか。技術が進むほど、そんな問いも現実味を帯びてきそうだ。
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