ワクチンだけじゃない 世界を救う医療技術を開発するスタートアップ4社
第43回NEDOピッチ「医療・ヘルステック ver.」レポート
経済産業省によるヘルスケア産業支援策を紹介
4社のスタートアップによるピッチに続いて、経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 企画官の飯村康夫氏から、政府のヘルスケア産業の創出に向けた取り組みについて紹介がなされた。
まずヘルスケア産業はメディカルケアとウェルネスの2つから構成されるが、全体を見ると疾病罹患前の健康管理から治療後の予後管理まで幅広く存在している。このうち公的医療保険の対象となる診断から治療までは厚労省が担当しており、経済産業省が担当するのはそれ以外の部分となる。
この公的保険外サービスへの投資拡大を誘引する施策として、健康経営の推進が挙げられた。以前から人間ドックの提供や病気からの復職支援などが行われてきたが、最近では健康コンサルやウェアラブルデバイスの提供を行う企業が増えてきた。これらの施策を実施している企業に対して、経済産業省では「健康経営銘柄」や「健康経営有料法人」として各種の顕彰制度を設けている。これらの企業の情報は経済産業省のHPにも公開されている。
市民が生まれてから学校や職場など生涯にわたる個人の健康データ(Personal Health Record:PHR)を病気の予防や健康づくり等に活用できる仕組みの構築を進めている。マイナポータルに蓄積した予防接種や薬剤の情報、乳幼児健診など様々な検診情報などの記録を、各個人のスマホを通じて閲覧する仕組みの構築が始まっている。本人の同意があれば民間のPHR事業者がマイナポータルを通じて本人に代わって検診の記録を入手することも可能になっている。
民間PHRサービスの利活用を後押しするため、PHRの管理・利活用に関わる要件をまとめた基本的指針を令和3年4月に、経産・厚労・総務の3省庁が連携して策定している。今後のPHRの利活用の推進に関しては政府主導ではなく、民間の事業者団体を設立して民間主導で検討すべきとしている。経済産業省もその支援を進めている。
ヘルスケア産業におけるイノベーションとエコシステムを強化するため、今年の6月1日にワクチン開発・生産体制強化戦略が閣議決定された。特に創薬ベンチャーエコシステム全体の底上げが注目されており、創薬ベンチャーにとって特にリスクの大きい第Ⅱ相試験までの実用化開発支援を行うべきだと閣議決定された。また、政府が認定するVCを通じて第Ⅰ相、第Ⅱ相期の創薬ベンチャーに対して開発資金の支援を行うことが検討されている。
経済産業省では、InnoHubと呼ばれるベンチャー支援事業を展開している。ヘルスケア分野で新規事業を検討しているベンチャー企業などに対して、同分野で既に事業を展開している事業会社の紹介や、関係省庁との連携など、様々な支援策をワンストップで受け付ける窓口となっている。
また、経済産業省の目玉施策としては2025年の大阪・関西万博が挙げられた。万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」となっており、まさに医療・ヘルスケア・創薬分野におけるベンチャーの活躍する未来を世界に訴えていく場となっている。令和2年12月21日に閣議決定された大阪・関西万博の基本方針には「世界最高水準の医療の提供に資する医療分野の研究開発を推進するとともに、その成果を積極的に発信する」と記載されている。飯村氏は様々な企業の参画を期待するとしており、関心ある企業は是非事務局に連絡を取って欲しいと話していた。
ピッチ終了後のラップアップでも各社が発言していたが、コロナワクチンで出遅れたと言われている日本の医療分野でも、非常に素晴らしい研究を行っているベンチャーが存在することが示されたピッチイベントとなった。今回のイベントに登壇したのは4社だが、日本にはまだまだ数多くの医療・創薬スタートアップがいるはずだ。今後もこのような場を通じて若い企業の活性化が進むことを期待する。