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温度制御でかゆみ解消、透明太陽光発電など 期待のベンチャー発先端素材

第50回NEDOピッチ「先端マテリアル ver.」レポート

特集
JOIC:オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会

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 ながらく日本の主要産業としての地位を占めており、さまざまな産業において国際競争力の源泉となっていた素材産業は、今大きな変革が求められている。2050年に設定されているカーボンニュートラルは鉄鋼や化学素材は、現行の製造過程において石炭などを使用しており、新たな製造技術の開発が必要である。

 また、国内外での需要の変化とグローバルな競争が激化しており、高い国際業総力を維持するためにも、新たな先端素材の開発は急務となっている。加えて、昨今のコロナ禍や地政学的リスクにより顕在化されたサプライチェーンの強靭化への要請にもスピード感を持って対応しなくてはならない。

 2022年10月21日にオープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)主催のもと、川崎のK-NICにて開催された「第50回のNEDOピッチ」では、先端マテリアルをテーマに、新たな視点から新たな素材の開発に取り組んでいる5つのスタートアップが登壇した。モノづくりは日本の産業の核であり、高機能素材はその魂ということができる。世界からも注目を集めている日本の新素材開発スタートアップによるピッチイベントの様子を紹介する。

スタートアップがリードする先端マテリアル業界動向

 5社のスタートアップによるピッチに先立ち、素材と科学分野特化型のベンチャーキャピタルであるユニバーサルマテリアルズインキュベーター株式会社(UMI)の取締役パートナー山本洋介氏から、先端マテリアル業界の最新動向が紹介された。

ユニバーサルマテリアルズインキュベーター株式会社 取締役パートナー 山本 洋介氏

 素材化学産業は世界で成長産業のひとつとして捉えられている。例えば世界の全産業の平均株主投資利回りは、2000年に対して2020年は約3倍になっているのに対して、素材化学産業は5倍を超えている。しかしながら日本の素材化学企業はグローバルトップ100企業に対してROEの点で見劣りがしている。その主たる要因は売上高利益率の低さにある。

 収益性が低い理由は事業ポートフォリオの転換、新陳代謝が進んでいないところにあると考えられる。特に中長期的なR&Dの効率が低く、新しい技術を生み出す力を向上させることが求められている。例えば国内企業の研究開発効率(営業利益÷R&D費)は数倍~10倍未満となっているのに対して、グローバル企業の中には40倍を超える効率を示している企業もある。

 この課題の解決法として、スタートアップとの連携や買収が挙げられる。日本政府も研究開発型スタートアップに対して充実した支援プログラムを提供しており、アカデミアが持つ高い技術力をベースにしたスタートアップを起業する機運が高まってきている。例えば代表的なアカデミア発スタートアップ創出のプログラムであるJST START(大学発新産業創出プログラム)からは、既に62社のスタートアップが設立されており、素材と化学分野のスタートアップも増加してきている。

 スタートアップの課題となるのがイグジットであったが、上場やM&Aによるイグジットの事例も増えてきている。例えば上場の例ではオキサイドやGreen Earth Instituteなどがあり、マテリアル・コンセプトはM&Aによるイグジットが実現している。海外でも素材系スタートアップの上場やM&Aの事例が増加傾向にある。

 このような環境下でUMIはサスティナビリティをテーマに第3号ファンドの組成を進めている。特に脱炭素、持続可能な食糧生産、健康長寿といった社会課題に対するソリューションとなる素材と化学関係の開発に対して投資を行っている。また、これらの課題はいずれもデジタル技術との掛け合わせに大きな価値を生じるところに注目をしている。

 具体的には、CCUS(Carbon dioxide Capture and Storage : 二酸化炭素回収・貯留技術)、バイオ素材、ケミカルリサイクルなどの新技術にフォーカスして投資を検討しており、社会課題解決のキープレーヤーとなりうるスタートアップに今後も期待をするとともに支援をしていくとのことだ。

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