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オプティム流・新規事業をアシストする知財戦略

「すごい知財サービスEXPO2021」レポート

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 アスタミューゼは2021年8月19・20日の2日間、オンライン知財サービスの展示会「すごい知財サービスEXPO2021」を完全オンラインにて開催した。20日のセミナー「オプティム流・新規事業をアシストする知財戦略 ~知財功労賞受賞の知財活動~」では、株式会社オプティム 社長室知的財産ユニットの村井 慶史氏が登壇し、同社の知財活動実績、IT企業特有の知財活動の課題や留意点を紹介した。

 オプティムは、「ネットを空気に変える」をコンセプトに、AI・IoTプラットフォーム事業を展開している2000年設立の企業。企業のあらゆるデバイスをクラウドで一元管理する「Optimal Biz」、IT機器の遠隔管理サービス「Optimal Remote」、個人向けにネットやデバイスの設定や診断をサポートする「Optimal Support」といったIoTプラットフォームに加えて、これらのクラウドに上がってきた膨大な情報を自動で解析・活用するAIサービスを積極的に展開。2021年に発刊されたデロイトトーマツミック経済研究所の調査レポート「AI(ディープラーニング)活用の画像認識ソリューション市場の現状と展望【2020年度版】」において、5部門で市場シェア1位を獲得している。特にコロナ禍では、テレワークやオンライン授業、遠隔医療、店頭での検温、混雑状況の可視化といったさまざまなシーンでの活用がますます広がってきている。

オプティムの知財戦略

 オプティムでは創業当初から技術成果を守るために積極的に特許出願を行なってきた。最初に出願したのは2002年にリリースしたダウンロードプロモーションサービス「iCM」に関連する特許。創業間もないスタートアップにとって出願費用の負担は大きいが、特許で優位性を担保し、模倣被害のリスクを低減することでパートナー企業や顧客からの信頼を得やすい、といったメリットがある。 知財には経営陣、事業部、知財担当者のスクラム体制で取り組んでおり、新規事業の検討には知財についてもあわせて検討される。特許化すべき部分/しなくてもいい部分、商標や意匠、著作権、限定提供データなどを策定していくそうだ。こうして生み出した知財は、特許法、著作権、不正競争防止といった「法律」、パートナーとの「契約」、コピーガードや暗号化などの「技術」の3つを組み合わせて守られる。

オプティムの権利化実績

 同社の特許出願数は2021年の7月2日時点で1023件、特許登録数は約491件。グローバル展開を視野に、米国や中国、PCT出願も積極的に行なっている。こうした知財活動が評価され、2014年には新興市場の特許資産ランキングで第1位を獲得、平成30年度の知財功労賞をITベンチャーとして初めて受賞。また同社の特許「ピンポイント農薬散布テクノロジー(特許第6326009号)」は令和元年度「九州地方発明表彰」の文部科学大臣賞を受賞、「土地用途判定システム(特許第6495561号)」は令和2年度の「九州地方発明表彰」の発明奨励賞を受賞している。

知財の権利化状況

農薬の使用量が減らせる「ピンポイント農薬散布テクノロジー(特許第6326009号)」と農地の作付け確認を効率化する「土地用途判定システム(特許第6495561号)」

オープンイノベーションへの取り組み

 オープンイノベーションへの取り組みとして、石川県農林操業研究センターと共同開発した「ドローン水稲直播栽培」を紹介。播種ドローンで一定深度に種もみを打ち込むことで、苗を育てて移植する手間が省けるだけでなく、苗立ちが良くなり、稲が倒れにくくなるといったメリットがある。用いられている技術は特許を出願中だ。

 佐賀に本店を持つオプティムは、九州最大のゼネコンである松尾建設と建設×ITの戦略的包括提携を締結している。その取り組みのひとつとして、作業員一人でもiPadで簡単に測量できるアプリ「OPTiM Geo Scan」を導入。この技術についても特許出願中とのこと。

オプティムにおける知財活動の課題や特徴

 IT企業共通の課題として、企画・開発・販売サイクルが早いことが挙げられる。企画立案からリリースまで半年~1年と短いので、何を権利化するかを見極めて素早く行動しないと間に合わない。

 オプティム特有の課題として、多くの企業との協業・連携をしているため、他社の知財との兼ね合いを常に意識する必要があること。その解決案として、経済産業省が策定した「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」や「限定提供データ」など、知財保護や活用に関する法令・指針をキャッチアップして、社外との契約・取引に反映させている。契約に関しては知財担当者だけでは限界があるので、法務担当者やセールス担当者と連携しながら進めているとのこと。また、×ITの事業ではさまざまな産業に関わってくるため、組む相手側企業の事業領域の技術動向についても企画、研究開発担当者と連携しながらウォッチしていく必要がある。

 さらに、AI/IoT関連ビジネス・発明に対する各国政府の動向についても注意が必要だ。今のところAIのアルゴリズムや学習データはブラックボックスでよいとされているが、欧州や中国では規制が始まっており、将来的には、個人情報保護やセキュリティーを理由に開示を求められる可能性がある。

 最後にまとめとして、1.新規検討時から知財化検討を始める、2.知財ポートフォリオは事業戦略に合わせて検討する、3.日進月歩のAI/IoT関連の技術・法律をウォッチすることを挙げた。これらすべてを知財担当のみで実施するのは難しいため、技術面では企画・開発担当、法律面では法務担当者と連携できる体制を作っていくことが大事だ。

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